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パリ

 読んで戴きましたら倖せでございます。

 飛行機で十二時間掛けてパリに着いた。


 汽車でコンコルド駅に降り、コンコルド広場の近くにあるホテルにチェックインし、ベージュを基調としたアールデコ調の部屋に落ち着いた。


 車椅子の瑞基が言った。


「隆一朗、よくフランス語話せるよね」


「飛行機の中で、ひたすらフランス語聞き捲って、フランス語が嫌いになりそうになった」


 隆一朗は苦笑いした。


 瑞基は笑った。


「とにかく、発音の仕方さえ解れば、これで何とかなるかなって」


 隆一朗は「観光簡単フランス語会話」と云う本を振って見せた。


「でも、甘かったかもね」


 隆一朗は笑った。


「空港でも駅でも、さっきのチェックインの時もめちゃくちゃ苦労してたよね」


 瑞基は笑いながら窓の外を見た。


「屋根しか見えないね」


「もっとロケーションのいい部屋の方が良かったね

 予約する時、もっと良く話しておけば良かった」


「別にいいよ

 オレ、隆一朗と一緒なら何処でも楽園だから」


 瑞基は笑った。


 隆一朗は車椅子の背凭れ越しに瑞基の肩を抱いた。


「オレ等の街よか暖かいね」


「北に位置してるのにね」


 隆一朗は旅行鞄からモスグリーンのブランケットを取り出すと瑞基の膝に掛けた。


「これでも、寒いかも」


「有名な通りだから、毛布くらい売ってる店あるんじゃない? 」


「どうだろう?

 シャネルとかの本場だろ、ボクのポケットマネーじゃ買えないかも」


 隆一朗は笑った。


 隆一朗は瑞基の首にもふもふのグレイのマフラーを巻いた。


 隆一朗と瑞基は冬のシャンゼリゼ通りへと繰り出した。


 冬のパリらしい、どんよりと曇った空と歩道に枝を伸ばした街路樹の下を隆一朗は瑞基が乗る車椅子を押した。


「ねぇ、あれパン屋だよね

 隆一朗、あそこでクロワッサン買える? 」


「うーん、チャレンジあるのみだね」


 隆一朗と瑞基はパン屋に入った。


 パンのいい香りに包まれた。


 邪魔にならないスペースに瑞基を置くと、三十代くらいの店員に話し掛けた。


「パルドン、ジュヴードレアシュテ…………………」


 瑞基は四苦八苦しながらフランス語でクロワッサンを買おうとする隆一朗を、面白がって見ていた。


「メルスィ」


 隆一朗はクロワッサンの入った包みを胸のあたりに掲げ瑞基に微笑んだ。


「買えた! 」


 車椅子の傍まで来ると、隆一朗は瑞基の膝に包みを置いて車椅子の手摺に手をついて項垂れた。


「ご苦労さん

 会話する度に命削ってるよね」


 瑞基は笑った。


「発音も危ないけど、ヒアリングはもっと危ない

 外国人だと思って、ゆっくり話しては貰えるんだけどね」


 隆一朗は瑞基の車椅子を押してパン屋を出た。


 冷たい空気が独特の異国の香りで包んだ。


「この向こう側に凱旋門があるはずなんだけど」


 隆一朗は、はしゃいで瑞基の車椅子を押して走り出した。


 パリジャンたちが二人を振り返る。


 瑞基は隆一朗が苦労して買ったクロワッサンをぱくついた。


 瑞基がクロワッサンを頭上に掲げると隆一朗はそれに噛みついた。


 二人は異国の解放感にはしゃいだ。


 途中で凱旋門が四キロ先にある事に気付いた。


 はしゃぎ過ぎて、既に隆一朗は汗だくになってバテていた。


 車椅子に座っていた瑞基は寒さに震え、既にお尻も痛くなっていた。


 二人はげっそりしてタクシーを拾い、ホテルに引き返した。


 ホテルの部屋に戻ると疲れ切って、隆一朗と瑞基は死んだように眠り込んだ。


 次の日、タクシーに乗った瑞基と隆一朗は運転手にメモを見せた。


「アセットアドレス、スィルヴープレ」


 どうやら通じたようで、三十分ほどで一軒の民家の前に止まった。


 荷物を下ろして、瑞基を車椅子に乗せると呼び鈴を鳴らした。


 室内から軽快な足音が近付き、扉が開かれた。


「ようこそ、パリへ! 」


 ニコルは隆一朗に抱きついた。


 そして早口のフランス語で捲し立てた。


「ニコル!

 ニコル、フランス語は止めて

 トラウマになるくらい親しんだから」


「あらあ」


 ニコルは目を丸くした。


「隆一朗、フランス語でノイローゼ寸前なんだ」


 瑞基が言うとニコルはエントランスから降りて瑞基の手を取った。


 瑞基は少し驚いた。


「瑞基も来てくれたのね、嬉しい

 隆一朗は私と飲むと、いつもあなたの事惚気(のろけ)るのよ」


「へーえ」


 瑞基は隆一朗をからかうように見た。


 隆一朗は困った顔でニコルを見た。


 ニコルがフランス人の母と日本人の父を紹介すると、瑞基と隆一朗は二人と握手を交わした。


「久し振りに日本人に逢えて嬉しいよ」


 ニコルパパが言った。


「冬のパリも素敵よ、ゆっくり楽しんで行って下さいね」


 ニコルママがたどたどしい日本語で言った。


「ゆっくりして行けるんでしょう?

 なんなら、パリを案内するよ」


「できれば、早く落ち着きたいんだ

 長旅で疲れてるし」


「そう、残念ねえ

 パリのはずれに私が子供の頃住んでた旧家があるの

 車も用意した

 せめて、今夜だけでもご飯たべましょう

 私も腕を振るうから」


「有り難う、ニコル

 キミには感謝してる」


「あら、私をふったの今頃後悔しても遅いんだよ」


 ニコルは笑った。


 夕食はフランスの一般的家庭料理が振る舞われた。


 キャロットラぺ


 タルティフレット


 オニオングラタンスープ


 ブフブルギニヨン


 キッシュロレーヌ


 デザートにイルフロタンを楽しんだ。


 夕食の後、瑞基と隆一朗、ニコルの三人は暖炉の前に陣取り雑談を交わした。


「私、瑞基と隆一朗の馴れ初め聞きたい」


「馴れ初め?

 そんなの聞いても楽しくないと思うよ」


「いいの、聞きたい

 瑞基、話して」


「え、オレ? 」


 瑞基は上を向いて暫く考えてから隆一朗を見た。


 隆一朗はニコニコしながら、余計な事は言うなオーラを出している。


 瑞基は身震いした。


 ニコルは期待満々で瑞基を見詰めていた。


「オレが家出して隆一朗の家に転がり込んだんだ」


 沈黙が流れた。


「それだけ? 」


「うん」


 ニコルは拍子抜けした。


「つまんない」


「だから、楽しくないって言ったよ」


 隆一朗は笑った。


 隆一朗が暖炉の横に立て掛けてあったアコースティックギターを手に取り、チューニングを合わせると「マドモアゼルドゥパリ」を弾き出した。


 ニコルは笑顔で歌い始めた。


 エディット・ピアフの「ルシエルドゥパリ」


 ドアーズの「ピープルアーストレンジ」


 ヴェルヴェットアンダーグラウンドの「ホワイトライトホワイトヒート」


 ニコの「イットハズノットテイクンロング」


 ジャニス・ジョプリンの「チープスリル」


 ローリングストーンズの「ギミーシェルター」


 ニルバーナの「スメルスライクティーンスピリット」まで飛び出した。


 隆一朗は次々と曲をギターで弾き、ニコルは歌った。


 瑞基はそんな二人を尊敬の眼差しで見詰め、一曲終わる度に惜しみ無い拍手を送った。


 楽しい時は終わり、隆一朗と瑞基はニコルが用意した車に荷物を積み乗り込んだ。


「気を付けて」


「ニコル、本当に有り難う」


 隆一朗と瑞基はニコルと強く握手した。


 ニコルはいつまでも見送った。


 隆一朗はニコルの書いた地図を頼りに夜道を走らせた。





 

 読んで戴き有り難うございます。

 憧れのフランスです。

 行ってみたいのでフランスにしました。

 フランスに行って芸術家になりたかったです。

 真剣に油絵とフランス語勉強した事もあります。

 見事に全部キレイさっぱり忘れてしまいましたが。笑

 アールヌーボーだと高い様な気がしたので、アールデコってドイツっぽいかなとか思いましたがアールデコ調の部屋にしました。

 バウハウスって、確かアールデコの美術学校でドイツにあった様な…………。

 このシーンで出て来る曲は私のフェイバリット曲です。

 思い切り趣味だしました。笑

 行ったこと無いから、本当に想像で、ボロ出ないようにさっさと話進めました。笑

 行ってみたいです、フランス。

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― 新着の感想 ―
[一言] ニコルの所に遊びに行ったんですね(^▽^)/ いいなーフランス。 私も行ってみたい! いーな隆一郎と瑞基。
[良い点] フランスの情景が浮かびました。 海外都市を盛り込むのも、良いですね!! [一言] 後書きを見て驚きです。 実際に行かれたのかと思いました。 パリ、いいですね。
[一言] リアリティーがあるので、てっきりフランスに行ったことがあるのだと思って、読んでました。
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