ライヴ
読んで戴けたら、倖せでごさいます。
イベントライヴ、初ワンマンライヴ、ワンマンツアーとバートリーは良いスタッフにも恵まれ着実に力を付けて行った。
それに比例して隆一朗は弱って行った。
ライヴの後に倒れて病院に運ばれ点滴を射つと云うことも珍しくなかった。
魁威は隆一朗に内緒で、瑞基と頻繁に連絡を取り合っていた。
魁威は弱る隆一朗をただ見守ることしかできない事に困惑していた。
「瑞基、一度こっちに来れないか? 」
「どうしたの? 」
「ずっと黙っていたけど、隆一朗あんまり調子良く無いんだ」
「また、眠れなくなったの? 」
「よく解るなあ」
「前に居なくなった時もそうだったから
食欲も落ちて、終いに風邪こじらせて肺炎おこしたんだ」
「そうだったんだ
来れない? 」
「きっと隆一朗は死んでも逢ってくれないと思う」
「そこを何とかならないか?
あのままじゃマジで死ぬよ」
「今度、大きなライヴハウスでワンマンやるよね
チケット送って
客として行けば隆一朗も文句言えないだろ」
「なるほど、ナイスアイデア瑞基
瑞基の元気な姿見れば隆一朗も少しは安心するだろ」
魁威との通話を切った瑞基は、また参考書片手に勉強を始めた。
隆一朗が帰って来ると魁威はマンガを読んでいた。
隆一朗は着替えるとウィスキーをボトルごと煽った。
「隆一朗、最近飲み過ぎだって」
「そお? 」
「明らかに飲む量増えてるよ
今だって誰かと飲んで来たんだろ? 」
「ボクのエネルギー源」
隆一朗はボトルを揺らして笑って見せた。
「メシ、ちゃんと食べたか? 」
「最近、魁威
ボクの保護者みたいだよ」
「俺は昔から、隆一朗の保護者みたいなもんだろ?
だから、俺は隆一朗とシェアしたんだから」
「そうだね」
隆一朗は八畳ほどのリビングの床にボトルを置いて、胡座をかいて座るとギターを弾き始めた。
千人ほど入るハコは、ほぼ満員だった。
ステージに魁威、麗畏、隆一朗、樹良、の順に上がった。
隆一朗がピックを弦にこすりつけ、激しいストロークを入れると共に演奏が始まった。
オーディエンスたちは色とりどりの髪を揺らしヘドバンしている。
その中に一人だけ突っ立ったまま隆一朗を見詰める者が居るのに隆一朗は気が付いた。
瑞基だった。
隆一朗は一瞬、幻影をみているのかと自分の目を疑った。
だが、ステージを降りれば手の届く場所に瑞基は確かに居たのだ。
瑞基は満面の笑みで隆一朗に手を振った。
瑞基が今できる精一杯のメッセージだった。
『オレは元気にしているよ』
隆一朗は曲が終わると、次の曲が始まる合間に人差し指と中指に挟んだピックを瑞基目掛けて放った。
瑞基は上手くそれをキャッチした。
隆一朗の胸に瑞基の指輪が銀色に輝き揺れていた。
その日、隆一朗は心からライヴを楽しんだ。
次の日の夜、魁威から瑞基に電話があった。
「有り難うな、瑞基」
「うん、チケットほんとサンキュー
オレも隆一朗に逢えて嬉しかった」
「あの莫迦、ライヴで暴れ過ぎてあの後病院送りになったんだ」
「え、大丈夫だったの? 」
「いつもの事だよ
よほど嬉しかったんだろうね
あんなにライヴ楽しんでる隆一朗久々に見た
今日はまともに食事して、今飲みに行ってるよ
なんで、あんなに意地張ってるんだか」
「それ聞いて安心したよ」
「どうした、瑞基? 」
瑞基は泣いていた。
「うん、もっと隆一朗に逢いたくなって」
「済まない、辛くさせたか」
「大丈夫」
瑞基は手の甲で涙を拭った。
「手の掛かる奴だよな」
「ほんとにね」
「あ、帰って来たみたいだ、またな」
通話が切れると瑞基は参考書の上に伏した。
「隆一朗に逢いたい」
瑞基はピックを眺めながら指で弄んだ。
瑞基は奮起するように溜め息をつき、また参考書片手に勉強を始めた。
読んで戴き有り難うございます。
ライヴのシーンで隆一朗がピック投げしますが、娘たちに目一杯突っ込まれました。
隆一朗、コントロール良過ぎ、どんだけピック投げに命掛けてるの?
練習しまくったんだよ、と私。
このシーン、無理があるのはあるのですが、生暖かい目で見守ってやって下さい。笑
桜が満開です。
タンポポ、すみれ、チューリップetc…………。
花がいっぱい咲いていて、歩くのが楽しいです。
コロナ怖いのに何やっとんじゃ。
早く修まるといいですね。




