再会
読んで戴けたら、倖せです。
隆一朗が瑞基のもとを去って一年以上の月日が経っていた。
受験真っ只中だった。
教室で面談があって、瑞基は担任と話していた。
「池旗、前にも訊いたけど、どうしてこんな偏差値の高い大学にしたんだ? 」
「どうしても行きたくて」
「二年の時から成績上げて来たが、どうかな
可能性は五分五分って処だな」
「そうですか」
瑞基は落胆の色を隠せなかった。
「滑り止めなら、多分大丈夫だろう
まあ、最後まで足掻くんだな」
もう、形振り構ってる余裕は無かった。
瑞基はバイトを辞め受験勉強に集中した。
三月になると、空気が緩み春の兆しがあたこちで見られた。
行き交う人の服の色が明るくなり、民家の庭に小さな花を見掛けるようになった。
隆一朗たちは久し振りに四人集まって小さなバーで飲んでいた。
魁威が頻りに入り口を気にしているのが隆一朗は気になった。
「魁威、どうしたの?
誰か待ち合わせ? 」
「ああ、ちょっとここ要り組んでるから、解るかなあって心配で
そろそろ来てもいい頃なんだけど」
入り口から長身の、茶髪に黒いメッシュを入れた、毛先を跳ねさせた若い男が入って来た。
「あ、来た来た」
魁威に、安心と期待が入り交じった表情が浮かんだ。
長身の男は、黒いパーカーにジーンズと云うラフな格好で、親指をジーンズのポケットに入れ、店内を見回していた。
魁威が手を振って呼んだ。
「こっちこっち! 」
振り返った男の顔を見て、隆一朗は全身が硬直するのを感じるほど驚いた。
瑞基だった。
瑞基は、魁威の姿を見つけると笑顔で近寄って来た。
隆一朗は無意識に立ち上がっていた。
「どうして、キミがここに居るの? 」
「隆一朗、久し振り」
瑞基はまるで、近所の知り合いにでも挨拶するような気軽さで手を上げた。
「どうして」
「こっちに引っ越して来たからに決まってるでしょ」
「引っ越しって………………」
「オレ、こっちの大学、受験したんだ
見事合格」
瑞基は両手の親指を腹の前で立てた。
「はい、おめでとうは? 」
隆一朗は言葉が出なかった。
「ちゃんと踏まえたよ
親も納得してるし
礼金、敷金がめちゃ高いって泣いてたけど」
瑞基は笑った。
「何か文句ある? 」
隆一朗は何か言おうとしたが、言葉が出なかった。
「無いよ」
隆一朗は座り込んだ。
「ほらほら、隆一朗席空けて」
瑞基は隆一朗の隣に陣取った。
「今日はオレのお祝いしてくれるんだよね」
狐に摘ままれたような顔をしていた樹良と麗畏が突かれた様に笑って言った。
「取り敢えず瑞基、おめでとう」
「すげえな、瑞基の行動力」
隆一朗は悪戯っぽく魁威を睨んだ。
「魁威のお膳立て? 」
「俺は、ここに瑞基を呼んだだけだよ」
魁威は満足そうに笑った。
瑞基は隆一朗を自分のアパートに招待した。
瑞基の部屋を見た隆一朗は驚いた。
「全部持って来たの? 」
「うん、隆一朗の部屋にあった物、一つ残らず持って来た。
あの大量のぬいぐるみもね」
瑞基は笑った。
「家賃は隆一朗と折半するって事で両親には納得して貰ってるから」
隆一朗は額に手を当て、首を振った。
「全くキミって人は……………」
隆一朗は改めて瑞基の強引さに呆れた。
入り口には本棚があった。
その向かいは壁になっていて壁の向こう側がキッチンになっていた。
食卓があって、その先にはソファーが置かれ、奥の窓の傍にグランドピアノが狭い部屋には不釣り合いに置かれていた。
「ほら、聖流さんのピアノ
オレは何も切り捨てるなんてできないから」
隆一朗は、近寄ってピアノに触れた。
「有り難う、瑞基」
瑞基はピアノを撫でる隆一朗を後ろから抱き締めた。
「ねえ、キスしていい? 」
「どうして訊くの? 」
「だって、ずっと離れてたから
なんだか隆一朗は前の隆一朗じゃ無い気がして」
「ボクは何も変わってないよ
むしろ変わったのはキミじゃない?
あんなに勉強、苦手だったのに」
「うん、オレ死ぬほど勉強した
隆一朗をこの手の中に取り戻す為に必死で頑張ったよ
隆一朗を納得させるのは、こうするしか方法は無いって思ったから」
隆一朗は瑞基のうなじに手を伸ばし瑞基に口付けた。
「何も変わって無いよ
キミを愛してることも、必要としていることも」
隆一朗は瑞基に向き直ると、瑞基の首に腕を回して口付けた。
「また、身長伸びたんじゃない? 」
「うん、とうとう隆一朗の身長越しちゃったね
でも、もう止まったんじゃないかなあ
食べる量、減ってきたもん」
瑞基は目を閉じ口付けて、隆一朗の背中に手を這わせた。
二人の呼吸は乱れ、瑞基は隆一朗のシャツのボタンを外して胸に口付けた。
ピアノの上に隆一朗の腕をおさえつけて、シャツから露になった隆一朗の白い肌に、まるで花びらにでも接吻するように口唇を這わせた。
隆一朗の呼吸は荒く乱れ、声が漏れた。
隆一朗と瑞基は離れていた時を取り戻すように、何度も求め合った。
二人は隆一朗の部屋と称された部屋のセミダブルのベッドで、隆一朗は仰向けに寝る瑞基の腕を枕に、頭を寄せあって話していた。
「受験はオレにとっては賭けだったよ
こっちの大学に受かれば隆一朗とまた一緒に暮らせる
で、滑り止めに受けた大学に通う事になっても、取り敢えずは逢いに行く事はできる様になるだろうけど、オレはどうしても隆一朗ともう一度暮らせる様になりたかった
だから、合格した時の達成感が半端無かったよ
オレ、隆一朗に逢わなかったらどんななってたろうな
きっとつまらない男になってたろうな
だから、隆一朗には感謝してる」
「なに?
改まって」
「だって、たった三年で自分でもすげえ変わったって思うもん」
「見た目もね
出逢った頃は凄くチビだった」
「二十センチ伸びたよ
って言うけど、隆一朗178センチあんじゃん
オレ、あの時162、3センチくらいしかなかったし」
「あの頃ボクは罪の意識だけで生きてた
キミがそこから救い出してくれた」
「オレは何もしてないよ
ただ傍に居たいって、それに従ってただけだもん」
「ボクも何もしてない
ただ、徒に泣かせてばかりだった」
「そう言う言い方すると、オレが凄い泣き虫みたいじゃん」
「違うの? 」
「違うよ
でも隆一朗が絡むとどうしようも無い事に泣くことしかできなかっただけだよ」
「じゃあ、そう云う事にしておくよ」
隆一朗は笑った。
「ねえ隆一朗、家を飛び出す前に夢とか無かったの? 」
「んんー、孤児院開きたかった」
「孤児院?
どうしてまた孤児院? 」
「何故かな?
愛に飢えた子たちに、愛してるって言いたかった」
「ふーん、いつか実現できるといいね」
「どうかなあ?
ああゆう事って難しいんじゃないかな」
「でも、夢って大事じゃない?
孤児院開く事できたら、オレ子供たちにバスケ教える」
「じゃあ、ボクはピアノとギターを教えるよ」
「オレの夢はずっと変わらない
いつまでも隆一朗の傍に居ること
その為だったら、オレはなんでもする」
「出逢った時から、瑞基はずっとそうだった」
「うん、それがオレの信念でもあるから」
瑞基は上半身を隆一朗に向けた。
「隆一朗がまたオレのもとから居なくなっても、オレ奈落の底まででも隆一朗追い駆ける」
瑞基は隆一朗に口付け、隆一朗の身体を撫でた。
「もうワンラウンド、行くつもり? 」
「一年以上も隆一朗不足で、オレ死にそうだったんだよ
まだまだ足りない」
読んで戴き有り難うございます。
先日完結した「I want your kiss」と言うタイトルはジョージ・マイケルの「I want your sex」から戴きました。
ユタ州で放送禁止になったんですよね、この曲。
ジョージ・マイケルと言えば、ゲイである事をカミングアウトして男性と結婚しましたが、昔「ケアレス ウィスパー」と云うヒット曲のプロモーションヴィデオで女性と絡むシーンで激しくやり過ぎてモデルさんが失神したと云うエピソードがありました。
その頃はまだWham!と云うユニットでアンドリュー・リッジリーと組んで活躍してましたが、カミングアウトしてなかったので、ジョージさん女性相手に、やけっぱちで激しくやり過ぎたんでしょうね。笑
「ケアレス ウィスパー」は日本でも郷ひろみや西城秀樹がカバーしてヒットしてました。
「抱きしめてジルバ」とか云うタイトルだったと思います。
Wham!と云うと馴染みが無いかもですが、「ラストクリスマス」と云う曲は皆様、ご存知ではないかと思います。
放送禁止と言えばフランキーゴーズトゥーハリウッドと云うバンドが思い出されます。
「リラックス」と云う曲と、「トゥートライブス」と云う曲でプロモーションヴィデオが放送禁止になってます。
「トゥートライブス」では、当時冷戦状態にあったソ連のゴルバチョフ書記長のそっくりさんとアメリカのロニー・レーガンのそっくりさんをリングの上で殴り逢いさせると言うプロモーションヴィデオ作りまして、BBCのひんしゅくをかったようです。
私は当時大好きでしたよ、あのプロモーションヴィデオ。
カントリーロードと云う有名な曲ありますが、ジョン・デンバーの他にオリビア・ニュートン・ジョンも大ヒットさせてました。
その彼女が、数年後「フィジカル」と云う曲で、やはりユタ州で放送禁止になってます。
話飛びますが、今ソフトバンクのCMでどらえもんやってる、仕事を選ばない男、ブルース・ウィリスはもとはロックシンガーになりたかったそうで、確かレコード会社と契約してシングル出した途端、契約したレコード会社が倒産したと云うエピソードは有名です。
彼は俳優になる運命だったのでしょうね。
俳優で有名になった´80年代にスティプルシンガーズの「リスペクトユアマイセルフ」をカバーしてヒットしたので満足したのか、俳優業に専念してますねえ。
ロック好きの俳優と言えばジョニー・デップもロック大好きで、自分の映画にアリス・クーパーを出演させたり、アリス・クーパーのツアーにベースかギターで参加していたのは記憶に新しいです。
以上、洋楽マメ知識と言えば少し格好付きますが
なんの役にもたちません。笑
ただ、言いたかっただけでした。




