熱
今回、ちょっと長いですが、読んで戴けたら、嬉しいです。
瑞基はタクシーを呼び止めて、隆一朗を押し込め、自分も乗り込むと、泊まっているホテルに向かった。
タクシーの中で隆一朗は苦しそうに呼吸を乱していた。
ホテルに着くとフロントに水枕と、医者を呼ぶ様に頼んだ。
部屋に入ると隆一朗をベッドに寝かせ、乾いたタオルで隆一朗の身体を丁寧に拭いた。
やがて女医が看護婦を一人連れて来た。
女医は隆一朗の下瞼を見たり、聴診器で胸の音を聞いたりして様子を診た。
「軽い肺炎を起こしてますね
注射を打っておきますから、後は時間を守って薬を飲ませてあげて下さい。
それと、少し身体が弱っています
充分な睡眠と食事、水分を摂らせてあげて下さい」
女医が帰ると、まだ濡れている隆一朗の髪を優しくタオルで拭いた。
『充分な睡眠は寝てるからいいとして、問題は食事と水分かあ』
瑞基はホテルを出るとコンビニを求めて歩き回った。
幸運にもコンビニは直ぐ見つかった。
ゼリーとヨーグルトと缶詰め、スポーツドリンクを大量に買い込んでホテルに戻った。
ベッドを見ると注射が効いているのか、隆一朗は穏やかな顔で眠っていた。
「あれ?
ジュースとか大量に買いまくったのはいいけど、どうやって飲ませればいいの? 」
瑞基は隆一朗とナイトテーブルに置いたスポーツドリンクを交互に見て悩んだ。
取り敢えず自分も喉が渇いたのでペットボトルを一本開けて飲んだ。
飲んでいる内に瑞基は閃いた。
瑞基はスポーツドリンクを口に含むと隆一朗に口移しで飲ませた。
隆一朗は素直にそれを飲み込んだ。
隆一朗がうっすらと目を開いた。
「そんな事したら、キミまで風邪をひいてしまうよ」
「大丈夫、オレ妙に丈夫だから
もっと要る? 」
隆一朗は静かに頷いた。
瑞基は何度も口に含んでは隆一朗に飲ませた。
瑞基は眠る隆一朗を見守った。
苦しいのか隆一朗が小さく呻くと、瑞基は隆一朗の手を両手で握った。
時折、隆一朗が眉間に皺を寄せると瑞基はそっと隆一朗の髪を撫でた。
水枕の氷が溶けるとフロントに行って取り替えて貰い、まめに口移しで水分を摂らせた。
そんな事の繰り返しを二日間続けると、隆一朗は果物の缶詰めを食べられるくらいには回復した。
三日目の朝、眠る隆一朗を置いて、瑞基は隆一朗の服や靴を買いに出掛けた。
ホテルの部屋に戻るとベッドに、隆一朗の姿が無かった。
瑞基は唖然として立ち尽くした。
買い物袋が手から滑り落ちた。
「隆一朗! 」
「なに? 」
瑞基の背後から声がした。
振り返るとバスローブを羽織った隆一朗が濡れた髪を拭きながらバスルームから出て来た。
瑞基は隆一朗に抱き付いた。
「また、居なくなったのかと思った!
オレ、もう嫌だよ
あんな辛い想いするの」
「瑞基………………」
隆一朗は瑞基の肩を掴むと、顔を背けて瑞基の身体を遠ざけた。
「隆一朗…………? 」
「ボクは怖いんだ
常識を歪めた感情で、また愛する人を失う事になってしまうのが」
「オレは隆一朗を置いて死んだりしないよ」
「解らない?
おかしいよね、同性なのにボクはキミに対して特別な感情をいだいてる」
「それはオレも同じだよ」
「そんな関係が上手く行くはず無いよ
きっと問題が起きて来る
世の中の人は、こんな異常な関係に容赦無い中傷をぶつけて来るよ
その時、ボクはどうやってキミを守ればいい
傷付いたキミをどうやって癒せばいい」
「隆一朗
どうして、オレの気持ち無視するんだよ!
オレの気持ち知ってる癖に!
どんなに隆一朗を求めているか、どんなに愛しているか知ってるのに
隆一朗が居ないだけで、オレは身体が半分もがれたみたいに苦しかった
何を失っても、オレは隆一朗の傍に居たいんだ!
中傷なんてどうでもいいよ!
傷付いてもいい!
隆一朗の傍に居られるなら何も怖く無い
隆一朗を失うより怖いものなんて、オレには無いよ! 」
瑞基の頬に涙が伝った。
瑞基の必死の訴えに隆一朗は暫く俯いて目を閉じた。
「ごめん
ボクはキミを泣かせてばかりだ」
「そうだよ
隆一朗がオレから離れようとするから…………
もう一度言うよ
隆一朗を失うより怖い事なんて、オレには無い」
瑞基は隆一朗を抱き寄せ隆一朗の頬に頬を寄せた。
「もう、離れたく無いよ
愛してる
愛してる
愛してる……………………」
隆一朗の中で激しい葛藤が押し寄せた。
ここで瑞基を受け入れたら、もう後には引き返せない事は解っていた。
恐れと不安が隆一朗を捕らえた。
このまま地獄に堕ちたとしても瑞基は追って来るだろう。
瑞基を愛している、求めている、必要としている。
それは動かし難い真実だった。
瑞基を最後まで拒絶できるのか?
自分をそこまで抑える事ができるのか。
できないから逃げたのではないのか。
自分を求めて涙を流す瑞基。
愛おしい
狂おしいほどに……………。
必死に寄り添って来る瑞基に何を与えられるだろう………。
何も与えられない………………………。
もう、愛することしかできない。
愛することしか………………………。
零れる瑞基の涙を隆一朗は指先で触れた。
それは温かく指先を濡らした。
指をずらせて髪を撫でると、瑞基はその指に頬擦りした。
隆一朗は恐れを感じながら、求める様に口唇を重ねた。
何度も口唇を重ね合い、抱き合い、次第に立っていられないぼど恍惚となって二人は座り込んだ。
隆一朗は瑞基に愛撫しながら押し倒し、瑞基の身体に身体を重ねた。
抑圧されていた感情が、破裂して床に飛び散った。
二人はお互いの衣服を剥ぎ取り愛撫し合った。
全裸の二人は激しく身体を絡ませ合い、ひりひりと過敏になった肌が、甘い欲情を全身に伝え広げる。
床に、愛と云う塊が転がって求め合った。
瑞基は隆一朗の首に腕を絡ませ、黒真珠のピアスに口付けた。
隆一朗の胸に口唇を這わせると隆一朗は目を閉じ、ゆっくりと仰け反る。
身体をくねらせ、床を転がり、肌を密着させ、離れていた時を埋める様に何度も口付けた。
瑞基は身体の奥から溢れる言葉を迸らせた。
「愛してる」
「瑞基………………」
隆一朗と瑞基は見詰め合った。
口付けると、隆一朗の愛撫は瑞基の胸を、腹を、そして瑞基の一番温度が高い場所へと下りて行く。
瑞基は仰け反った。
声を抑える事ができず、瑞基は身体を仰け反らせ、やがて隆一朗の口の中で瑞基の愛が、溢れ零れた。
隆一朗と瑞基は満たされ、床に抱き合ったまま眠っていた。
突然、隆一朗の目が大きく見開かれた。
透明な影が隆一朗の身体から離れゆっくりと立ち上がる。
透明な影は裸で抱き合い眠る隆一朗と瑞基に侮蔑をくれてやると静かに部屋を出て行った。
隆一朗は何事も無かった様に目を閉じた。
瑞基は満ち足りた気持ちのまま目が覚める。
眠る隆一朗は安らかな寝息を立てていた。
瑞基は隆一朗の髪に口付けた。
「隆一朗、起きて
こんな処で寝てたら、折角良くなったのに振り返しちゃうよ」
隆一朗はゆっくりと目を開けると首を伸ばして瑞基の口唇にそっと口付けた。
「もう、帰ろう
魁威さん達が待ってる」
「ボクはこうなるのを一番恐れていたはずなのに」
「隆一朗はどうして、そうまどろっこしいんだろ
オレはすぐ腹を括ったよ」
瑞基は起き上がって服を着始めた。
「ちょっと待って!
それ何? 」
隆一朗はパーカーを着ようとする瑞基の腕を掴んでパーカーを奪い取った。
「これ、どう見てもキスマークだよね
ボクのじゃ無い」
隆一朗は瑞基の首筋に触れた。
「キスマーク? 」
瑞基は備え付けの鏡を覗き込んだ。
「ああこれ、マルトのマスター、よっぽど強く吸い付いたんだな」
瑞基は言ってから、しまったと云う顔をした。
隆一朗はそれを見逃さなかった。
隆一朗の顔色が変わった。
「マルトのマスターって、どう云う事?
何があったの?
どうして、キミがマルトのマスターを知ってるの? 」
瑞基は苦笑いをした。
「だから、これはさ不可抗力って言うかさ
ちょっと、色々あって」
瑞基は何とかごまかそうとするが、隆一朗がそんな曖昧な答えで納得する筈も無かった。
「色々って、何があったの! 」
隆一朗は瑞基の手首を握って問い詰めた。
「痛いって、隆一朗」
「ちゃんと話すまで離さないよ」
「ああもう、だいたい隆一朗が居なくなるからだよ
マルトのマスターが隆一朗の居場所教える代わりにベッドのお供しろって言うからさ
でも、してないからね
やられ損は嫌だから、先に教えろっていったら、前菜にって思いっきり舌入れて来て、首に吸い付いて来たんだ
でも、オレめちゃくちゃ気持ち悪くなって吐いたら、ゲロ餓鬼って追い出された
それだけだよ」
「どうして、そんな事」
隆一朗は瑞基の目を見詰めた。
「どうしても、隆一朗の居場所が知りたかったんだよ
どうしても、隆一朗に逢いたかったから」
「そんな事してまで……………」
隆一朗は俯いて瞳を震わせた。
「何も無かったんだから、いいじゃん」
「何もじゃ無いよ
マスターは瑞基の何処に触れたの?
どんな風にキスしたの? 」
隆一朗は瑞基の手首を握ったまま、瑞基に口付けた。
そして、瑞基の首に口付けた。
「何してるの? 」
「他には何をされたの? 」
瑞基は隆一朗の顔をまじまじと見詰めた。
「もしかして、妬いてるの? 」
「そうだよ、ボク意外の誰にも瑞基に触れて欲しくない」
『もしかして、隆一朗って凄い焼きもちやき? 』
瑞基はそう思うと少し嬉しくなった。
「今すぐマスターの処へ行って殴ってやりたい
土下座して謝るまで」
そう言った隆一朗の顔は今まで瑞基が見たことの無い、恐ろしく冷たい目をしていた。
それは冗談では無く、今ここにマスターが居たら本当にやり兼ねない、隆一朗には珍しい、本気で怒りを露わにした顔だった。
瑞基はビビった。
『オレ、絶対隆一朗を本気で怒らせる事はしないようにしよう』
瑞基は震え上がり、胸の中で密かに誓った。
読んで戴き有り難うございます。
やっと隆一朗と瑞基が結ばれましたあ。
この二人、超甘甘カップルです。笑
今日、アマゾンで大好きなDIAURAのベストアルバム注文しました。
写真集付きなので、楽しみです。
いっぱい達也さん載ってないかなあ。❤❤
ヴォーカルのYo-kaさんは凄い人だなあと思います。
すっぴんの時は、本当気のいいロックバンドやってる兄ちゃんと云う感じなのですが、化粧すると、めちゃくちゃいい男オーラが出て、歌うと世界観に引き込むんですよ。
ただ者じゃ無いです。




