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許されない感情

 読んで戴きましたら倖せでございます。

 隆一朗はその日を境にみるみる元気になって行った。


 筋力を戻す為にリハビリに精を出す日々を送り、時々病院の周りを走ったりする事もできる様になった。


 予(かね)ての念願であった外出許可が下りた。


 その日瑞基は、部活とバイトを休んで隆一朗と行動を共にできる様にした。


 アパートへ帰る途中、エリザベータに寄って魁威(かい)から車を借りた。


 車庫に行く途中。瑞基が意外そうに言った。


「隆一朗、免許持ってるんだ! 」


「持ってちゃ悪い?

 バンド始める前は、お金の使い道が無かったし、取り敢えず仕事に雇って貰える条件満たす為に、十八になった時取ったんだ

 バンド始めたら、そっちにお金が飛んで行って車買う処まで行かなかったけど 

 お陰でゴールド免許だけどね」


「へーえ

 大丈夫なの、病み上がりだよ」


「関係無いよ」


 アパートに着いて、中に入ると聖流のピアノを見た隆一朗は動揺を隠せなかった。


 ピアノに触れ俯(うつむ)いたまま、暫く動く事ができなかった。


「形見分けの時に、隆一朗の代わりに貰い受けたんだ

 樹良(じゅら)さんの顔でクレーン車会社から借りて貰って、裏の窓外して入れたんだよ」


 隆一朗は少しだけ顔を傾け言った。


「有り難う、瑞基」


 しかし、部屋の奥を見た隆一朗は唖然とした。


「瑞基、この状態は何」


 森詩織に片付けて貰ったが、きれいな状態は三日と持たなかった。


「オレ、掃除ってどうやっていいか解んなくてさ

 この状態」


 瑞基は苦笑いした。


 お菓子の袋やペットボトル、コンビニの弁当の入れ物などが散乱した部屋に隆一朗は首を振った。


「どうしたら、こんな酷い状態になるの」


「それよか、急がないと時間まで帰れなくなるよ

 ほら、途中買い物もあるって言ってたじゃん」


 隆一朗はもうひと文句言いたかったが、確かに時間に余裕が無かったので保留にした。


 隆一朗はゴミを避けながら奥へと進んだ。


 途中、隆一朗は面白い物を見付けた。


 それを拾い上げると、冷蔵庫の前でペットボトルの水をがぶ飲みしている瑞基に言った。


「瑞基、この点数じゃ進学は難しいんじゃない」


 瑞基が振り返ると、にっこり微笑む隆一朗が赤点のテスト用紙をひらつかせていた。


「わっ、何持ってるの?! 」


 瑞基はペットボトルを食卓に置くと隆一朗に飛び付いた。


 隆一朗はひらりとかわして、ベッドの上に飛び乗った。


 瑞基がベッドに飛び乗ると、隆一朗はベッドを降りて瑞基から距離をとった。


 瑞基は思い切りベッドを蹴って飛び降り、隆一朗との距離を縮める。


「隆一朗、いい加減返してってば」


「ダメだよ、返して欲しいなら奪い取ってごらん」


 二人はぐるぐるとピアノの周りを廻って追い駆けあった。


「その授業の時、前の日に麗畏(れい)さんが乱入して来たんだってば

 森さんにノート借りるの忘れて、テストの時に気付いたんだよ」


「そんな言い訳は入試の時には、何の効力も持たないよ」


 瑞基はいい加減じりじりして来た。


「オレ、一応バスケ部の選手に選ばれてるんだからね

 いつまでも逃げられると思ったら大間違いだから」


「ボクが喧嘩から逃げ回るタツジンだって事忘れてない? 」


 散々手こずらされて、やっと瑞基は本棚と壁の角に隆一朗を追い詰めた。


 後一歩と云う処で、転がっていたジュースの缶を踏んづけて瑞基は体勢を崩した。


 隆一朗は思わず瑞基に手を伸ばした。


 瑞基は隆一朗の腕を掴んで巻き込み、仰向けに倒れた。


 隆一朗の身体が瑞基の上に降った。


 瑞基はチャンスとばかりに隆一朗の腰に腕を回して捕まえた。


 瑞基は急に真顔になって言った。


「本当に良かった

 隆一朗がこんなに元気になって」


「瑞基………………」


「オレ、ずっとこの部屋守って待ってた

 隆一朗の言う事守って、学校も部活もバイトもサボらないでがんばったよ

 少しは褒めてよね」


 隆一朗は瑞基への愛おしさを抑える事ができず、瑞基の口唇に口付けた。


 瑞基は目を閉じて隆一朗の背中に手を伸ばした。


 隆一朗は求める様に瑞基の舌に舌を絡ませ、二人は互いの身体を両腕で抱き締め、背中に手を這(は)わせた。


 次第に呼吸が乱れ、お互いの身体に口唇を這わせて行った。


 何度も口唇を求め合い、抱擁し合い、愛撫し合った。


 瑞基は隆一朗の存在がこんなにも近くにある事に、この上無い倖福を感じていた。


 隆一朗も瑞基もお互いの温もりに埋もれ、満たされていた。


 隆一朗は突然、ハッとして我に返った。


 瑞基から身体を離すと立ち上がり、額に手を当て言った。


「ごめん」


「ごめんて、どうしたの? 」


 瑞基は起き上がって、背を向ける隆一朗を見詰めた。


『こんな事がゆるされちゃいけない

 許されない感情が芽生え始めてる』


 隆一朗は戦慄した。






 読んで戴き有り難うございます。

 本当に有り難うございます。(TT)

 今日何げにアクセス解析みたら、なんといつもの7倍のアクセス数。!Σ( ̄□ ̄;)

 どうやら、一気に読んで下さった方がいらした様で、とても嬉しかったです。

 「死神の精子」も一気に読んで下さった方がいらして、ホクホクでございました。(≧∇≦)b

 いつも、少しでも良い作品をと、娘に叩かれつつ苦労して書いているので、読んで戴けると本当に満たされます。

 小説書いてらっしゃる方は皆さんそうなのでしょうが、私の場合少数派の異端児なので、本当に嬉しいです。

 皆様に倖あれ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 隆一朗がそう考えるのはある意味当然ですよね。 「楽しい」「嬉しい」。でも、このままでいいのか。 それが普通の人でしょう。
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