喜び
読んで戴けたら倖せです。
瑞基が病室に戻ると森詩織が落として行った花束がもの哀しげに花びらを散らせて落ちていた。
瑞基はそれを拾い上げると胸が締め付けられ、何を思えばいいのかさえ解らなかった。
ベッドの方を見ると隆一朗が床に座り込んでいる。
「隆一朗! 」
瑞基は慌てて隆一朗に駆け寄った。
「花を拾おうと思ったんだけど上手く脚に力が入らなくて」
「当たり前だよ、一年近く殆んど歩いて無かったんだから」
「彼女は? 」
隆一朗が訊くと、瑞基は直ぐに答える事ができなかった。
「…………なんて言葉を掛けていいか解らなくて、何も言えなかったんだ」
「そう……………」
「立てる? 」
瑞基は隆一朗の二の腕を掴んで持ち上げた。
「瑞基、随分身長が伸びたんだね
力も強くなったみたいだ」
「そうだよ
もう少しで隆一朗を追い越せるよ」
瑞基はゆっくり隆一朗をベッドに座らせた。
自分を見詰める隆一朗を見て、瑞基は堪えきれなくて抱き締めた。
「ずっと不安だったんだ
このまま、帰って来なかったらどうしようって」
隆一朗は自分の胸に顔をうずめる瑞基の背中を、まるで小さな子供をあやすように撫でた。
無情にも面会時間終了のアナウンスが流れた。
「このまま帰ったら、隆一朗がまた何処かへ行ってしまいそうで怖いよ」
「それは無いんじゃないかな、多分」
瑞基は急に頭を上げた。
「オレ、このままここに朝まで居ちゃ駄目かな
付き添いですって言って」
瑞基は本気だった。
「それは病院が迷惑だよ」
「やっぱ、駄目? 」
「ダメ」
「あ、エリザベータに行って魁威さんに知らせなきゃ」
「みんなは元気? 」
「元気だよ
バンド活動はしてないけど
みんな、隆一朗が戻るのを心待ちにしてたんだ
凄く喜ぶよ」
隆一朗はぎこちなく微笑んだ。
「さあ、もう行って」
「行きたくないよ」
「駄々捏ねないの
もういつでも逢えるよ」
瑞基は仕方なく立ち上がった。
いつもよりもずっと遅い速度で後ろ向きに歩いて許される限り隆一朗を見詰めた。
「おやすみ、隆一朗」
「おやすみ」
瑞基が出て行った後、隆一朗は窓の外を眺めた。
暗闇の向こう側で、小さな明かりが車の往来を示していた。
隆一朗は俯いて毛布を握り締めた。
「聖流…………」
瑞基は病室を出た後、全速力で病院の中を走って、年配の看護婦に怒られた。
「ごめんなさい! 」
振り返りざまに謝ったが、走るのを止める事ができなかった。
その勢いのままエリザベータまで走ったが、いつもよりもエリザベータが遠く感じた。
エリザベータに入ると開口一番お客が居るのも構わず叫んだ。
「隆一朗が帰って来た! 」
魁威は瑞基の大声にカウンターの客に出すコーヒーを溢し、瑞基を怒ろうと睨んだが、言葉の意味を理解して一変した。
「瑞基、それは本当か?! 」
魁威も大声になった。
カウンターで雑誌を見ていた客が何事かとキョロキョロした。
魁威は慌ててカウンターから飛び出して来た。
瑞基は勢いに乗って、魁威に向かって思い切りダイブした。
勢いで二人は抱き合ったまま、床にひっくり返った。
「良かった、良かったな瑞基! 」
魁威は瑞基の背中をパンパン、力強く叩いた。
「痛い!
痛いよ、魁威さん! 」
瑞基は立ち上がって、魁威の手を引っ張り上げて立たせた。
「そうかあ、麗畏と樹良に召集かけて、明日はみんなで見舞いに行かないと」
魁威は空いているテーブルの椅子に腰掛けると拳を握って叫んだ。
「よっしゃー!! 」
瑞基が手を出すと魁威は思い切りその手にタッチした。
余りに強くタッチしたので、二人して痛そうに手を振った。
「いってーぇ」
お客達は何事かと、二人に注目していた。
読んで戴き有り難うございます。
やっと隆一朗が目覚めました。
私も嬉しいです。
森詩織ちゃん、可哀想だったけど。(TT)
書いてる奴が何を言うって感じですが。泣
最近、ちょこちょこと私の作品覗いて下さる方がいらして、嬉しいのですが。
読んで貰えません。涙
あらすじ読んで引いてしまうようで。笑
まあ、スナック菓子の様にお手軽に読める様な作品じゃないですもんね。
暗いし。
娘にも言われているので、解ってはいるのですが、 淋しいです。
この作品を読んで下さっている皆様、有り難うございます。m(_ _)m
紛れも無く少数派の皆様を私は、尊いと思っております。(*- -)(*_ _)ペコリ




