28.似たもの
翌日、ウィレムはリアとリエラ(隠れてユリ)と共にアツェールの商店街に訪れていた。
学園は基本5日授業の後2日休み。
イベントや記念日と言った祝日もあり元の世界と殆んど変わらない。
因みに今日は祝日で日本で言う秋分の日と同じような日である。
気温からしたらまだまだ夏真っ盛りの様に暑い日差しが差し込んでいるので秋って感じは皆無だけど店では衣替えの服や道具の入れ替えが行われ出しているから今の時期は品物が豊富に揃っている。
学園生活に二人が慣れて余裕が出来てきた。
そろそろ足りない物や必要な物を購入できるように商店街の案内をすることにしたのだ。
商店街は寮と学園の間に正規の申請を通った商店街と外壁の外にあるスラム街の申請の通らなかった商店街が存在する
スラム街は文字通り極貧層の住民が居住する街というのは変わらない。。
ただし商店街は極貧層以外の基本的普通の生活を送れる住民も多くいる。
それは学園都市と呼ばれるアツェールでは他の街で許可されている物でも禁止になる場合が多く申請が通らなかった商人がスラムで店を開いているからだ。
その為他の街にあるからと正規の商店街に行っても商品がなかったりするので知らないといざという時に困ることになる。
アツェールのスラムは余所よりもかなり豊かでスラム感はない。
しかし悪徳業者や盗人などがいないという事でもない。
城門内と外ではうちの方が安全だ。
この機にその辺の商品事情を教えようと思う。
学園都市であることもありアファネに負けず劣らずの賑わいだ。
休みだからか生徒も多い。
「という訳で商店街に来たけど僕もあんまり詳しい訳じゃないから一通り見ていくって流れでいいかな」
「はい」
「構いません」
商店街の広さは商人に制限があると言っても生徒数の多さに比例してとても広い。
一日ですべて回れる広さではないのでただブラブラするだけでも十分時間が掛かる。
今日は特に必要な物を買いに来たわけではないのでコースを決めずに回った方が楽しめると思えた。
「それでまず来たのが玩具屋ですか。ウィレム様も意外と子供ですね」
「別に遊びたいから入ったわけじゃないんだが」
「いいんですよ我慢しないでも。私達も興味ありますし」
なんか二人が意外と共感を示している。
身体も意識も7歳児だが前世の記憶が蘇ってからこういった娯楽にはあまり関心を示さなくなって遊ばなかったからたまにはいいかなと思ったのだ。
店に入るとリア達は楽しそうに玩具を物色し始めた。
流石女の子というべきかリアとリエラは人形やぬいぐるみ類のかわいい系が好きなようでその前に釘づけになっていた。
寧ろリアとリエラの方が僕に付き合って我慢していたのかもしれない。
二人とも時間が掛かりそうなので僕は二人から離れて別の玩具を見て回ることにした。
とは言ってもあるのはボールやパズル、積み木といった物しかないので僕としては余り目新しい物は無かった。
プラモやゲームが懐かしい。
「坊ちゃん、何か欲しい物でもありましたか?」
寄ってきたのはこの店の店主だろうか。
ちょっと小太りの男が手を揉みながら前屈みになって近づいてくる。
僕が上客と判断して売り込みにきたか。
正直あまりいい印象がしないな。
眼つきが子供だと馬鹿にしているように見ている。
さっさと追っ払ってリア達と店を出よう。
「いいえ。これといって欲しいのはないんで」
「これなんてどうです?騎士の操り人形でして騎士隊遊びとして男の子の間で大人気の品物ですよ」
「僕は騎士に憧れていませんので」
本心だ。
普通の男子なら喜ぶ品でも僕にとっての騎士と言われるとあの第三騎士を思い浮かべてしまう。
特にあの筋肉団長は思い出したくないので絶対に買わない。
「ではこちらのパズルなんかは」
「すでに持っていますので」
これも本当だ。
パズルはメジャーな遊具で幼い頃から買ってもらった物が王城の自室にいくつもある。
あの頃は新しいのがあると直ぐ買ってもらったが今になると何が楽しかったのか少々疑問だ。
そして速攻で却下したから店主は笑顔が引きつっている。
カモだとでも思ったか。
しかしたったこれだけで表情に不満が出るとはポーカーフェイスがまだまだだ。
優秀な商人ではなさそうだな。
もういいだろう。
こっちは切り上げてくれ。。
「そうですか。最近、新しい玩具が辺境で作られたというので近々仕入れる予定ですので」
「そうですね。新しい物が入った時にでもまた来ます」
店の人から離れてまだ人形の棚の前にいた二人を呼んで店を出る。
後ろでは話しかけてきた店主が舌打ちをしていたのが見えたのでもうこの店には来ない事にしようと決めた。
「何か欲しい物でもあったか?」
「私は姫ちゃん人形というシリーズ物の人形が可愛くて好きです。別売りの服で着せ替えもできるんですよ」
「私は動物や魔物のぬいぐるみが好きですね。特に兎シリーズのホーンラビットは愛くるしい瞳なのに凛々しさもあって抱き締めたくなります」
二人とも好みは違ってもやっぱり可愛い物が好きなんだな。
「それなら買えばよかったのに」
「ウィレム様、アレいくらするか分かって言ってますか?」
「その辺の安い防具一式と同等の値段ですよ。とても買える余裕なんてないですよ」
ちゃんと見た訳じゃないが安い防具と言ってもそれなりに値段が掛かるから予想より丸の桁が一つ多いという事になる。
それだと確かに今の給料では買えることは出来ないな。
今の二人の給料はリエラの冒険者の時の収入どころかリアの収入とさして変わらないぐらいしか渡せていないのが現状だからな。
……自分でも甲斐性無しだと思うよ。
でも嫌な大人にあったという気分は二人を見て癒された。
このまま休みを満喫しよう。
「ウィレム様奇遇ですわね」
……っ!?
僕の目の前に魔王が現れた。
さっきまでの和やかムードが一転、張り詰めた空気になる。
僕は一瞬で(心の中で)臨戦態勢に入った。
魔王またの名をマユキ。
今の僕が今一番合いたくなかった人物だった。
昨日のユリの話だと今マユキはご立腹らしいのだが僕はまだその理由が分かっていない。
非常に不味い状況だった。
もう相手が目の前に来ている。
逃げるを選択したが魔王の満面の笑みに止められた。
魔王からは逃げられない。
「や、やあ、マユキ。奇遇だね」
覚悟を決めて挨拶を返した。
一瞬詰まったがよく噛まなかったと褒めて欲しい。
「ウィレム様も今日は外に出られたのね」
「二人に商店街の案内をしておきたいと思ってね」
「ふーん、二人だけなんだ」
「ユリなら近くにいると思うけど」
「違うわ。アリッサ・エクスライズさんのことよ。あなた達随分仲が良さそうに話していたそうじゃない。今日も一緒ではないの?」
えっ、なんでそこでアリッサの名前が出て来るんだ?
質問の意味が分からない。
疑問に思ったが今はマユキにそんな事聞けない。
極力顔に出さないように気をつけながらマユキが隣につく。
話すマユキの喋り方がフレンドリーな喋り方ではなく他人行儀のお嬢様口調であるため初対面の時の緊張感が甦ってきた。
あの一瞬も気が抜けない感覚と冷や汗が流れる。
「なんでそこでエクスライズさんの名前が」
僕は自然に質問を返した。
マユキの態度は変わらないのにその視線が更に冷たくなった気がした。
マユキが隣から離れてリア達の方に行く。
「なるほど、リアとリエラ確認だけどウィレム様は……分かってないのね」
「は、はい」
「まったく理解してませんね」
「そう」
溜息を吐く三人。
こちらに会話が聞こえてこないがその雰囲気は昨日のユリを入れた三人の視線と同じもので呆れられているようだ。
物凄く不安になる視線である。
しかし何か言おうにもなんでそう思われているか理解していないので何も言えない。
マユキの雰囲気は溜息を吐いてからも相変わらず冷たい態度が収まっていない。
ここで見当外れなことを言って逆鱗に触れたくなかった。
「ウィレム様」
「はい!」
「私もこの買い物付き合ってもよろしくて?」
「は、はい。喜んで」
拒否を今の僕が言える訳がない。
マユキは僕の承諾を聞くと護衛で控えていた男達を下がらせ僕らの輪の中に入った。
「リエラ、これからどこに行く予定だったの?」
「決まってません。取り敢えず商店街を歩きながら気になった店を見て回ろうという事になってました」
「え、そうなの?」
「あの、珍しいんですか?」
「そうね。貴族が外に出るときは普通行く場所を決めていくものよ」
言われて見ればその通りだな。
というか元々僕はそっち側だった。
そして速攻で輪から外されてしまった。
マユキはその後「なら自分のオススメの店を紹介するわ」と二人を先導する様に進んでいき、彼女が僕らに付き合うのではなく僕らが彼女に付き合う形に変わっていた。
まだいくつか見てみたい店があったのに………。
「ウィレム様着きましたよ」
そんなこんなでマユキの目的地に到着。
着いた店は装飾品を扱う店であった。
女性向けの店でお客の大半が女性。
結構大きな店でお客さんの数も多い。
やたらとカップル連れが多い気がするな。
一人でいたら確実に嫉妬の火種が引火する空間だ。
今は女性三人を連れている身なので逆に嫉妬の視線を感じるが。
「アレ、リアに合わないかしら?」
「ふぇ!?私ですか」
「私も似合っていると思うよ。隣はマユキ様が似合うと思いますね」
「そう?私はもっとシンプルな方が好きね……」
「……私はもっと安いのがいいです」
もう完璧に置いてきぼり状態である。
僕の口を挟む余地がないぐらい三人は燥ぎだして奥へとどんどん行ってしまう。
たとえついて行けてたとしても話の方もついて行けないのでどうしようもないが。
………しょうがない一人で見て回るか。
装飾品を扱う店でこの状況、なんかデジャブを感じる。
「お客様何かお探しですか?」
戸惑っていたからだろうか、店の人にまたも話しかけられた。
前世では断れない人種とか言われていたがそれがにじみ出ているのか!?
まぁ、今度は見た感じ真面目に売り込みに来た感じが伝わってきて不快にはならないが。
「さっきの女性達の誰かへのプレゼントですか。それなら私が手伝っちゃいますよ」
まだ7歳の子供の身体、当然店員さんのが年上で背丈はあちらの方が高いので店員さんは腰を折って目線を下げて話してくれる。
けど今日は別に何か買う為にこの店に来たのではないのでここは丁重にお断りを入れよう。
「い、」
「まずは学生向けの物でオススメなのは筆記具ですね。実用性があり年中使えますし色違えを買ってお揃いにするのもいいです。当店では羽根つきの物や可愛く装飾された物と種類も豊富ですよ」
僕の返答など初めから聞く気がなかったようで彼女は商品の紹介を始めてしまった。
タイミングを逃した。
もう店員さんが言い終わるか、三人が帰って来るまで待つしかないか……。
「まだ友達以上恋人未満ならこっちのインテリア商品をプレゼントにするのもいいですよ。私のオススメはこちらの魔石が組み込まれているライトアップできる物ですね。もしこういった物に関心が薄い女性でもきっと喜んでくれますよ。……少々お高いですが」
最後にボソッと言ったの聞こえてますよ。
そして魔石入りのは本当にいい値段をしてる。
子供の買う値段じゃない。
「それならバックなんてどうです?バックは高貴な女性にとって必需品。どんなバックを使っているかで女性のステータスを測ると言ってもいいです。それにバックは場所によって使い分けますし不必要になる事はないと思います」
掴みが良くないと思ったのか商品を切り替えた。
今度はバックか。
この店は本当に商品が多く大小色々な物が置かれているな。
でもこの世界は荷物を持つのは執事に任せて自分は手ぶらとか上級貴族では普通なので必需品になるのは下級貴族あたりだろう。
「これもお気に召しませんか」
「すいません。なんかピンと来なくて」
「いえ、お客様が謝れることでは」
結局店員の勧めたものは買わなかったので店員さんはちょっとがっかり気味だ。
でも最初っから何か買う気でこの店に入ったわけではないので仕方がない。
これからも腐らずにいて欲しい。
まだ女性陣は見てそうだな。
もう少し見ているか。
一方の女子陣営は一見装飾品を見て楽しんでいるように見えるがその会話の端々でウィレムの愚痴を漏らしていた。
「ああもう、世間知らずだと分かっていても流石に今回のはないでしょ!そう思わない」
「でも冒険者の先輩が男は鈍いからはっきり言わないといけない生き物だと言ってました。ウィレム様に限った話じゃないのかも」
「けど普通なら気づくんじゃない?」
「私は逆に気付かないのがウィレム様らしく感じましたよ」
リアのその言葉は否定できなかった。
確かにウィレムらしい。
ウィレム様は他の王子や貴族達とはどこか違っている。
見ている物も価値観も違う。
そして固定観念がない。
最初に会って質問した時もそう。
貴族の令嬢というのは男を立てて花であることが望まれている。
戦闘という意味だけではなく政治や財政でも口出しすることは許されない。
男は花で女は花瓶。
女はどんなに輝いていても主役は男。
それがこの国の理想の令嬢であった。
女が戦う事をどう思うか。
この質問はウィレム様だけにしたものではなかった。
あんな真正面からの質問だけでなく回りくどくも言ったりした。
だがその答えは皆似たり寄ったり。
ある者は戦うのは男性の役目だと言い、またある者は女性は男の後ろに居ればいいと罵倒していた。
女性を戦わせるような事はさせませんと口説いてきたりする者もいたわね。
稀に女性が戦うのを了承する者もいたけど了承するだけで認めてはいなかった。
だから驚いた。
あの返答には女はお飾りだという思考が全く考慮した様子がない。
寧ろ女を主役にもっていってもいいと言う物言いだった。
本人は気づいているのか知らないがあの場で聞き耳たてていた者達は珍妙な物を見る目になっていた。
特に男子陣の目は理解できない。
ウィレム様には男としてのプライドがないと判断されただろう。
だが少なくとも私には好感に思えた。
世間の考えを否定した考えに共感した。
それと同時に直感した。
この人は常識外れの変人だが私の望む考えを持っていると。
だからこそ父に紹介した。
「でも許すかどうかはやっぱり別物よ」
「そうですよね」
「今回は私達、マユキ様に味方しますよ」
二人の共感者に会えたのはまさに僥倖で感謝してもいいわね。
「マユキ様」
声を掛けられた瞬間リエラが私を守れる位置に移動し、リアが避難経路とウィレムの居場所を確認していた。
「大丈夫よ二人ともその人は私の部下だから」
私の言葉に従い警戒心を解く二人。
いい動きだった。
ウィレム様の従者じゃなければスカウトしていたわね。
「それでどうだった?」
「残念ながら」
「……そう分かったわ。下がりなさい」
本当にあの男は~~~!自分が悪い事をしたって自覚がないの!!
今のはさっきまでウィレムに商品を進めていた店員でリア達に言ったように実家が雇っている関係者である。
あれだけ怒らせたと理解すればプレゼントの一つも考えてくれるかと思って様子を探らせてついでにプレゼント選びの手伝いまで根回ししたというのにまったくその気がないの!?。
「マユキ様、表情が厳しいですよ」
「何があったか知りませんが落ち着いて」
いけない、いけない。言われた通り落ち着こう。
スーハ― スーハ―
大丈夫。落ち着いた。
少し頭が痛いけど問題ないわね。
「またウィレム様が何かしましたか」
「いえ何もしてないわよ」
「それじゃあ」
「ウィレム様は な に も してないわ」
「あっ……ご愁傷さまです」
「ハァ……」
私達はまた三人で愚痴り出した。
本当に二人がいて良かったわ。
そうじゃなきゃあ大変な事になってたわね。
夕方。
店を出てからマユキの雰囲気が更に刺々しい物になっていた。
笑顔の裏に黒々としたオーラが見えるようだ。
しかも伝染したのかリアとリエラの視線もやたらと厳しい。
店では分かれていて何もしていないのに好感度が下がる一方である。
そして現在の僕はマユキに引っ張られて歩いている。
ただし恋人同士の手と手を繋ぐのではなくマユキの手と僕の耳だ。
「い、痛い、痛い……離してよ、マユキさん」
もっと優しくして!千切れる!千切れるから!!
「私の主君でしょ。痛い訳ないでしょ」
何その理論!?初めて聞いたよ。
「それでリア達は商店街の位置の把握は出来た?」
「はい」「大丈夫です」
「そう。それじゃあこのまま帰りましょうか」
「話してないで。離して!」
「……まだ反省が足りないね」
あ~―!!痛いってば――!
商店街を出るまでマユキが耳を引っ張るのは続いた。
その間周りから珍妙な目で見られていたよ。
「あぁ、まだひりひりする」
「自業自得よ」
顔を背けられた。
引っ張られている間リアとリエラが助けてくれなかったところを見るとやっぱり僕が悪いんだよな。
「ごめん」
「理由が分かっていないのに謝罪だけされても意味がないわ」
うぐっ、正論で何も返せない。
「……心当たりなら一つだけあるんだ」
「ほほぅ、言ってみて下さい」
「この前の三人への派閥の誘いで助けてもらったのに僕はマユキに何もしてあげてなかったなと」
「…………それだけ?」
「主従関係なのに貰いっ放しなのは問題だろ?」
「派閥の件は私のに利があったと言ったじゃない。まぁ、二人の事を心配して話を持って来たわけだから感謝してもらう分には構わないけど」
やっぱり女性同士の関係に異性の僕では注意しても対応できなかっただろうから今の二人の安定した学園生活ができているのはマユキが後ろにいてくれるからだろう。
「……だからこれ、さっきの店で買ったんだけど受け取ってくれないかな?」
「……これって髪留め?」
マユキの視線が僕の出したプレゼントに集中する。
プレゼントはマユキの言う通りクリップの髪留めでリアとリアらが髪関係だったから同じジャンルで選んだ。
「それとそれ以外にマユキを怒らせることが思い浮かばないんだ。ごめん」
「……あぁ、えっと、プレゼントは有り難くもらっておくわ。でも私が怒っているのはもう一つの1年の派閥のリーダーと親しくしてるからよ」
「拙かったのか?」
「貴方は私の主君なんだから貴方がアリッサの派閥を支援すると言い出したら私の派閥は混乱するか分解するもの」
「そういった話はしてないよ。僕としては人脈作りとしてアリッサとは関係を持っておきたいと思っているんだ」
僕の貴族との繋がりってフランク家を除くと全くないという残念すぎる状態だからな。
アリッサの家は人脈が広いらしいしアリッサ自身も悪く思ってないし悪い選択ではないと思う。
マユキはしばらく考え込んだ。
多分自身のデメリットと照らし合わせて損得勘定してくれているのだろう。
「……まぁ今の状況なら大丈夫かな?」
「よかった。これで問題解決でいいんだよね」
「そうね」
さっきまではなっていた刺々しい雰囲気も消えているし大丈夫そうだ。
でもそうなると一つだけ引っかかる事がある。
「でも配慮が足らなかったけど怒り過ぎじゃない?」
「え?……」
心配するだろうけど怒られる事ではないと思う。
いや、怒ってもいいけど流石に今回は怒り過ぎじゃないかな。
「………」
「………」
「……マユキ?」
「なんでだろ?」
「ええっ!?」
マユキが首を傾げて本気で悩みだした。
「言われてみるとそこまで怒るような事ではなかった気がする。……けどなんだか妙にイライラして」
「それじゃあ流石に気づけないよ」
「うむ、私自身が気づけるか不安なのに指摘するわけにもいかないか……。イライラはもう収まったし問題も解決したから良しにしましょう」
「……まぁ、いいか」
今日一日肩身が狭い思いをしたが我慢する。
流石にこんなことで文句を言ってまた険悪にする必要もない。
それにマユキになら八つ当たりされても構わない。
断っておくが僕はMでも変態でもましてやロリコンでもないぞ。
「うーん、ウィレム様はこのイライラの正体分かる?」
「本人が分からない感情を他人の僕が分かる訳ないだろ」
「そうよね」
マユキは何か引っかかっているみたいで沈黙したがしばらく考えても答えが分からなかったようで考えるのを止めた。
お互いに言いたいことを言ったのでスッキリしたのでその後は一変して他愛もない会話に花を咲かせながら帰宅するのだった。
「あー、ウィレム様も鈍感だけど」
「うん、マユキ様もだね」
「もうちょっと意識すれば気づきそうだけど」
「似た者同士なんだろうね」
ウィレムとマユキの後ろで二人の従者は聞こえないよう静かに、しかし深いため息を吐くのだった。
設定
アツェールの街は基本
城門→一般の家庭の住宅地→寮→商店街→学園という形で中心に向かっている構造です。




