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カタコユリ荘 春の選抜カレー大会  作者: しらら
ゴールデンウイーク最終日
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59/65

アナーキーなお茶会・Ⅰ(挿し絵あり)


 学生生協の裏手の小公園。

 ピクニックベンチの横の地面にマナスルを置き、果々子がお湯を沸かす。


 ビャラビャラビャラシュビビビビビビ


「うるさいわね、それ」

 ふて腐れてそっぽを向く白鳥梨華。


「いいじゃない、無理して会話しなくて済むでしょ」

 果々子は肩をぐるぐる回している。

 夢中で自覚がなかったが、裏山へ行った後、ディパックを背負いっぱなしだった。


「背負ってるのに気付かんのも相当やで」

 みかんは面白そうにマナスルを眺めている。


 まあお陰で、強引に「お茶を飲もう」と理由を付けて、梨華を座らせる事が出来た。結果オーライ。


「あんた、『助けて』って何だったのよ? でまかせ?」

「白鳥さんの『助け』は要ったよ。自分の『主張』を引っ込めて着いて来てくれて、ありがとう」

「……、うるさ過ぎて聞こえない!」


「マナスルうるさいな、思ってたのの百倍うるさい」

 頬杖を着いてシレッと楽しそうなみかん。


「専用の消音機(サイレンサー)を売ってるぐらいだからね」

「買わんの?」

「今はいらないかな、使う時はほぼ一人だし」


「近所迷惑でしょ」

 梨華が会話に入って来た。


「人がいる時は離れるよ」

「バッカみたい、静かなコンロを選べばいいのに」

「ホント、バカみたいだよね」

「果々子は頑固やからな」


 お湯が沸き上がって、コッヘルに茶葉を放り込んで蒸らす。みかんが居るから、カフェインレスのハーブティーだ。


「そのカップの底の花模様可愛い」

「ウペペサンケのお客さんがくれた。どこかの山の象徴花だって」

「私にも見せて。ふうん、可愛いじゃない」

「このお茶美味しいな」

「佐原手先輩に貰った」

「あのコスプレ先輩?」

「コスプレ言うな」

「偏見持ってる人もいるから、コスプレってあだ名はやめとこ。サ、ワ、ラ、デ、先輩」

「……サワディ先輩……」

「さわやかやな」


「ミルクケーキもあるよ」

「割れてる……」

「そりゃあれだけ暴れたら割れるよ」

「甘い……」

「みかんは?」

「半分くらいならいいかも」

「じゃあ半分こ」


「風輪……さんは、こういうの、食べられないの?」

「ゴールデンウィーク中はおやつ解禁やけれど、タイム落とされへん。何かヘマやったら寮住みのせいにされる」

「監督が?」

「総監はあんま言わない。主にコーチとかトレーナー。皆が皆、一般寮に肯定的な訳やないし…………

 あまっ! これ、果々子のチョイス?」

「マスターに貰った。甘すぎたらこっちで食べるよ」

「いんや、美味しいで、好きな味や。果々子の好みとちやうなって思っただけ」


「あんた……遠山さんって、貰ってばかりなのね」

「そういえばそうだね」

「乞食みたい」

「そうだね」

「どうしたらそんなに貰えるの?」

「さぁ……頼りなさげで放っとけないからじゃないかな」


「私も、そんな風にボケッとしてた方がいいのかな……」

「白鳥さんには白鳥さんのウリがあるんじゃないの?」

「……どんな所?」

「顔やな!」

「…………」

「白鳥さん可愛いもんね」

「……バイト先でも、ガッコでも、顔が理由でハブられる……」


 いや多分、顔だけが理由じゃなくて、顔は単なるスタートラインに過ぎなかったと思う。

 でも顔で優遇される人生経験がゼロな果々子には、上手い返事が出来なかった。


「マスターには、貰った分は返せばいいって言われたよ」

「へえ、こんな小さい駄菓子ごときにお返ししろって?」

「うぅん、貰った人に直接じゃなくて、他の人に返したらいいって」

「何それ、それ、返すって言わないよ」

「そうだね」

「最初にあげた人、損じゃないの」

「最初にくれた人も、別の誰かに貰ってるんだと思う」

「はあ? 哲学ですかぁ? ダルいんですけど」

「…………」


「それより、私がカタコユリ寮に入れる方法を考えてよ」


 みかんは、「まだ言うか」って感じで、黙ってしまっている。


「無理だよ、私にそんな責任を背負う力、無いもの」

「結局役立たずじゃない」

「そうだね」

「そうだねって言うの、やめなさいよ!」

 玲奈はカップをガンと置いた。


「…………」

「役に立ってくれないのなら、私、行く」

「白樺寮に帰る?」

「帰るしかないでしょ。部屋に入ったら舌打ちされて、一晩中引き出しをガシャガシャ開け閉めされて、朝起きたら戸と窓を全開にされていても、あそこしかないんだから」


 果々子は驚いて目を見開いた。





ミルクケーキ なんでか、山屋さんが持ってる率が高い


挿絵(By みてみん) 

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