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カタコユリ荘 春の選抜カレー大会  作者: しらら
ゴールデンウイーク最終日
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54/65

ジェネリックじゃなくて純正!

   

 カタコユリの花咲く土手の上。

 空色車椅子の田島のおばあちゃんとお孫さん、タチバナ先輩とタマ先輩、そして果々子。


「さ、おばあちゃん、冷えるからそろそろ帰りましょ」

「そうね……」

 田島さんはチラッとだけ、寮の建物を見た。

 この後施設に帰るのだろうか。

 また来られる事はあるのだろうか。


「あの、食堂、寮に入って中もゆっくりご覧になって下さい。お茶、暖かいお茶を淹れます」

 果々子は思わず口走った。


「でも……」

 田島さんと孫のパートさんは、寮の玄関を見やる。

 二段ばかりの石段があるのだ。


「待ってて下さい」

 果々子は最速で走って(みかん程ではないけれど)、自転車置き場から、荷物搬入に使っているコンパネと端材を抱えて来た。

 端材を階段の段差に埋めて補強し、コンパネを敷く。米などを台車で運ぶ時に使っている、仮のスロープだ。


「あっ、手伝う」

 食堂にいた他の先輩たちが来てくれた。福祉学科で実習経験の豊富な頼もしい先輩もいる。

 皆で車椅子を後ろ向きにゆっくり引っ張る。荷物用のスロープだから慎重に。果々子は車椅子の前側に陣取り、両側の手すりのフレームをガッシリ握って押し上げた。こうすると投げ出され防止になるのを知っている。


 玄関に上がると、今度は走って雑巾を持って来た。

「タイヤ拭きますね」


「遠山さん、慣れてるね」

 福祉学科の先輩方も手伝ってくれた。

 果々子はまた猪突猛進で周囲を見ていなかった事に気が付いて、不安になって見回した。が、皆一丸になって導線や場所を作ってくれている。

 田島さんも食堂を見回して、目をしばたいて笑顔になってくれた。



「女が大学なんてと田舎じゃまだ陰口を叩かれるような時代で、教室で差別されてもあの頃は訴える場所もなかったわ。

 そんなだからかここへ帰るとホッとして。カレーの匂いと友達の笑顔。あの頃はカレーって、ちょっと特別感のあるハイカラな御馳走だった。懐かしい、今でもまぶたの裏に見えて来る」


 お茶を淹れて落ち着くと、田島さんは目を閉じて本当に嬉しそうにポツポツ語ってくれた。


「ね、遠山さん、お願いがあるのだけれど」

 茶話会の場をしつらえながら、タチバナ先輩が申し訳なさそうに言って来た。

「部屋にいる寮生に知らせて来て欲しいの。『カタコユリ カレー五人衆』の田島さんが見えられているって」


 ――?!?

 果々子は口をあんぐりと開けて、目をパチパチと瞬いた。ジェネリックじゃなくて純正の、本物の、日曜カレーを始めた仲良し五人組の一人なんですか? 田島さん!

 慌てて食堂を飛び出す。

 そりゃそうだ、寮に居たのに後で「元祖五人衆の一人が来てたよ~」なんて言われたらガックリ来る。「何で教えてくれなかったの!」って絶対恨む、果々子なら。


「日曜カレー創始者の、五人衆の方が一階食堂にみえています」


 四階から廊下を歩きながら二、三回ずつ叫んだ。

 すぐに部屋を飛び出て「ありがとね――」と言いながら駆け下りて行く上級生もいる。やっぱりお知らせは正解だった。タチバナ先輩凄い。


 茶話会ならお菓子も必要だろう。

 果々子は自分の部屋に戻って、昨日マスターに貰った『ミルクケーキ』をポケットにねじ込んで階下へ降りた。

 早く自分も田島さんのお話を聞きたい。


 ――しかし


「なんで!??」


 田島さんを中心に集った輪の中に、本当に何でか? 


 白鳥梨華が、・・いた。





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