イナゴ軍団
「デキレースかよ~~」
「組織票じゃねぇの?」
「そいつらのカレー何の特徴もなかったじゃん」
イナゴどもはとにかくイチャモンを付けたいらしい。
タマ先輩がタチバナ先輩に手書きの集計表を渡した。アーモンドみたいな目でサッと見て、タチバナ先輩は再び口を開く。
「要望が上がったようなので、多少の群細を発表致します。№1カタコユリ カレー五人衆は、一位票は一つもありませんでした。獲得した四十三ポイントはすべて二位票によるものです。票数だけで見ると最も多くの方に支持されています」
ええっ? え――と?
一位票は二ポイント、二位票は一ポイント。
投票者は……見た感じで六~七十? その過半数……四十三人が二位に五人衆カレーを入れたって事?
組織票でこんな事出来ない、だって半分はポプラ寮の男子だ。
「ちなみに一位票は結構割れていて、四位の佐原手ルカさんのカレーも惜しい所に付けていました」
果々子の隣のテーブルの、赤い花柄ヒジャブの女子が、両手を頬に当てて大袈裟に身を振った。
「まぁ嬉しい。指示して下さった皆様ありがとう。でも私のはネパールのタルカリ式……いわゆる水分の少ないドライカレーだったから、普通のカレーと同じ感覚で掬われるとあっという間に無くなっちゃうのよね。本当はもっと多くの方に味わって頂きたかったわぁ」
残念だと口にしている割にニコニコしている。
果々子は大きな芝居の中に放り込まれているような気がして来た。
デキレースはデキレースかもしれない。でも票操作ではない。もっと巧妙な誘導だ。そして、
(どこからどこまでが毎年繰り返される『パターン』なのだろう……?)
「うん、うちはいつもの癖でちょっと多い目に作り過ぎちゃったかな。それで食べて貰えた人数が多かっただけかもねぇ」
ビタミンカステラ先輩が、寸胴糊カレーグループをディスった口で、白々しくそんな事を言った。
出ていた六個の鍋の中で一番大きな鍋がNo.1の札の付いた五人衆カレーだ。遅れて来た果々子の口にも入った。普通に美味しかったから二位に入れた。
そうだ、どんなに美味しく作ろうと、投票者は食べたカレーでないと票を入れられないのだ。
八人前でも、味を見る為に掬うだけなら十分皆に行き渡る。そこに『美味い物だけ腹いっぱい』って輩が侵入するとあっという間に破綻する。
イナゴ軍団の半分が複雑な顔になって口をつぐんだ。五人衆カレーを上位に押し上げたのは自分たちだとやっと気付いたのだ。
上位になるべき美味しいカレーを片端からガバガバさらって審査のテーブルから下ろしてしまった。
その口が『デキレース』などと言えるものか。




