【11】地産勇者は冒険者ギルドに行く
シュパン。
矢が空を裂き的に命中する。
「みんないい腕になって来たなぁ」
「ええ、先生」
師範代のリディアも笑顔で頷く。
「それにサナも……ゴム弓はどうだ?」
「な、何とか!」
先輩門下生に教えてもらいながらサナはまずゴム弓から練習を始めている。
「でもその、指の形とか、握り方とか、難しいことばかりで」
「慣れればコツも掴めてくる。この鍛錬だけでも経験値が入るしなぁ」
そんなこともあって道場の平均レベルは30前後。10代から30代までいるがみなレベル平均値が高いのだ。
「そういやサナはレベルどのくらいだ?」
「15です」
「年相応で何よりだな」
「でもその」
「ん?」
「みなさんのようにレベルを上げるにはどうしたら……」
まぁリディアのように20代でレベル30も珍しくないからな。
「そうだな……ここでの鍛錬もだが、同時に実戦を積むこともある。実戦は弓でもいいし後方支援なんかでもいい。どんなことも経験値になるし経験則になる」
「どんなことも……聖女の力もですか?」
「そうだ。その力だってどこで弓に活かされるか分からない。逆もしかり、だ」
「それなら……」
この子は成長したがっているんだ。
「ダンジョンにでも行くか?」
「わぁ、久々のダンジョン実習ですか?」
リディアが顔を輝かせる。
『行きたい!』
『私もー!』
他の門下生たちから声が上がる。
「分かった分かった。でも引率のバランスもみないとだからな、参加者は冒険者ランクと一緒に名簿に記入だ」
『はーい!』
元気がいいことで。
「でも先生」
サナがビッと道着をつまんてくる。
「私は冒険者ランク、なくて」
「大丈夫、大丈夫。ランク持ってない参加者は新たに登録するからな。お前らも!ランク未所持は……今はサナだけのはずだな」
確か他は前回の実習の時までに登録を済ませてるはずだ。
「昇進試験があるやつは実習3日前に一緒に冒険者ギルドに行くからな!」
『はーい!』
そうして名簿を集め、実習3日前にサナを含め数人を連れて冒険者ギルドを訪れることになった。
※※※
冒険者ギルドは道場と同じ南区にあるとあって行き来も自由である。
「わぁ……その、強そうなひとがいっぱい」
サナはキョロキョロとあたりを見回し緊張しているようだ。
「大丈夫大丈夫!私たちもついてるから!」
「そうそう!恐くないよー!」
昇進試験待ちは率先してサナを励ましてやっている。
「おいおい、何だあの女子だらけのパーティーは」
「ナメてんのか?」
「それともチャンスか?」
周りの冒険者たちが何やらガヤガヤと騒がしいが……何がチャンスなんだよ。
「おい嬢ちゃんたち、そんなおっさんじゃなくて俺たちとパーティー組まねえかい?」
「そうそう!そんな萎れたおっさんより俺たちの方がいいだろ?」
おいコラお前らな。確かに見た目年齢的な同世代はもっと熟練感の出たイケオジが多いが。
「ちょっと聞き捨てならないわね」
「その方は私たちの先生よ。萎れたおっさんですって?そんなの見た目だけよ!」
おお、冒険者活動するうちの門下生たち!確かマリーとエルナだったな。彼女らは門下生として修行を積み、普段は冒険者として活躍しながらたまに道場にも顔を見せてくれる。
しかし……見た目だけはって。その通りだけども!
「な、何だお前ら!」
ナンパ冒険者たちは戸惑うが。
「その通りだよ、君たち」
「ロシュくんは私たちの中でも伝説だよ?」
「冒険者ギルドから叩き出されたいかい?」
おおっ、現役ベテランイケオジ冒険者仲間ぁっ!その中にはより渋みのあるイケオジもいる。
「な、何だおっさんども」
ナンパ冒険者はたじろぐが。
「おっさんで何が悪いのかね?」
渋イケオジがパンパンと手を叩けば。冒険者ギルドの用心棒たちが集まってくる。
「おいコラ!ロシュさんに何て態度だ!」
「こっち来い!」
ナンパ冒険者たちが容赦なく引きずられていく。
「相変わらずすごいな、ロバート」
「いやいや、すごいのはロシュくんじゃないか」
ハッハッハと笑う渋イケオジ、ロバート。
「ま、同期の誼だよ」
「懐かしいな」
昔はクエストで一緒になることも多かった。同期のほとんどは引退してギルド職員や指導員になっちまったが、未だ現役がいてくれるのは心強い。
しかしその時。
「あれ、同期?」
「年齢離れてるけど……冒険者になったのが同じくらいってこと?」
連れてきた門下生たちが首を傾げる。
「違うわよ!先生は……」
マリーたちが後輩門下生たちに耳打ちしてる。
『ええぇ――――っ!?年齢詐欺だ――――っ!』
いやいや、もう萎れたおっさんに年齢詐欺も何もねぇって。
苦笑いしながらも受付カウンターに向かう。
「ようこそ、ロシュさん。本日はどのような手続きでしょうか」
基本指名依頼しかないからか、ギルド受付嬢も指名依頼のない時は分かってんな。
「新規登録と昇進試験」
「まぁ、それはちょうど良かった!溜まってたんです」
「いや、うちの門下生が優先だぞ」
「それなら我々が見よう!」
うおぉ……渋イケオジ軍団が請け負うのか?
「いやまぁ、ランク的には適任か?」
昇進試験もE〜Dランク帯で彼らはB〜Aでしかもベテラン。
「先生、昇進試験って?」
「ああ、サナは初めてか」
サナの書類を書きつつも解説する。
「冒険者のランクはSSからG。SSが一番上、Gが登録したての新人冒険者のランクだ。冒険者はクエストを通してこのランクを上げていくんだが、それには昇進試験が必要だ」
「他のみんなはそれを受けるんだね」
「ああ。この昇進試験を受けるには必要なランクのクエスト達成率と試験料がいる。この料金はギルドへの手数料でもあり、試験監督を務める冒険者への手数料だ。試験管はたいていAからBランク冒険者が請け負う」
「じゃぁ……Aランクは誰が昇進試験をするの?」
「Sかな。SならSS」
「ならSSはどうやって決まるの?」
「ド〜やって決まるんだろうなぁ?な、知ってる?」
目の前の受付嬢に問う。
「各国の代表ギルマスの推薦とSランク冒険者の多数決です」
「あーそうだったそうだった。忘れてた」
「忘れないでくださいよ、もう。それからロシュさん。教え子さんたちの昇進試験は試験官が決まりましたので」
うんうん、渋イケオジたちが早速張り切ってるもんな。
「Aランク昇進試験と召喚勇者の昇進試験をお願いします」
「いやおい!?Aはまぁ……他にSランクが捕まらなかったんならいいとして、召喚勇者って」
「チートのある召喚勇者の場合私たちも判断に迷うのです。後見人の先代剣聖コーデリアさまからも推薦をもらっているのです」
「コーデリア……いつの間に。はぁ……分かったけど……俺はGしかつけんぞ」
「ギルドとしては飛び級を希望してますが」
「バカ。この世界に来たばっかの右も左も分からん新米を突然飛び級させられるか!」
勝手も分からんやつをいきなり高ランク帯に行かせるわけにはいかない。
新人ならE〜Dランクも厳しい。
「あ、でしたら!」
「ん?」
「生徒さんたちを連れてこられたということはまた実習化何かで?なら召喚勇者さまも連れて行ってあげては?」
「……」
コーデリアは最初からそのつもりだったのではなかろうか。
「分かった分かった。知らん仲でもない」
「それでは」
完成した書類を手渡せば受付嬢が素早く登録を済ませサナにギルドカードを手渡す。
「ギルドカードは無くさないように気を付けてくださいね」
「ありがとうございます!」
初めてのギルドカードにサナは嬉しそうに頬を染める。
懐かしいな。俺も新米の頃は……。
「よし、初心に帰って今日の昇進試験は……厳しくいこう」
その言葉に反応したのは。
「ちょ……先生!?今日私たちのAランク昇進試験なんですけど!?」
マリーとエルナである。いやぁ、Aランク昇格かぁ。師範としては申し分ない!
「安心しろ、ちゃんと忖度なしで厳しくやってやるー」
「キーッ!後でリディアちゃんに言い付けてやるぅっ!」
いやいや、何でリディアにチクるのが代名詞になってんの。
※※※
「マリーお姉さんたち、昇格できて良かったです!」
門下生たちの試験を見届け、帰路につきながらサナが告げる。
「ああ、師範としてもアイツらの成長を見られて何よりだなぁ」
何かいつも以上に鬼気迫る気合だった。あれならAランク昇格に◯するしかあるまい。
「そう言えば、レンリさまも一緒に行くのですね」 「ああ、まぁな。後輩冒険者の育成も先輩冒険者にとって必要だから。サナは……レンリは」
「レンリさまは優しいです!だから平気ですよ」
かつての取り巻きたちのことを言っているのか。たしかにあの取り巻きたちさえいなければサナも怯えることはなかったろうからな。
「私、とっても楽しみにしてますから」
「そらぁ良かった」
俺もサナたちにしっかりと経験を積ませてやらにゃぁな。




