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60.人生をより良くする為の最適化(チヒロ視点)

 ーーチヒローー



 ゲームの世界はイージーモードだった。


 フルアム=ミゼットの妻も、その子供達もたいした事がない。私が平民出身なのをバカにして見下そうとする。だがゲームの中だからなのか、何でも出来てしまうし、メンタルも大人なので嫌がらせに対してもスルーor返り討ちにすると、思ったのと違ったのか簡単に引き下がっていった。


 そして待望の貴族学院への入学イベントも無事消化した。


(・・・いい加減にしてよ!私の体で好き勝手にしないで!)

 相変わらず頭の中に響く幽霊の声がする。

 まあ、少し煩わしくは感じているけど、最近は気にならないようになってきた。


「君がミゼット伯爵の?」

 はい、ついにやってきた!

 ここでこのイベントが発生するのは知っていたけど本当に発生するとテンションが上がってしまう。

 この物語のメインターゲット、王太子グランの登場だ!ウェーブのかかった金髪美男子で、誰もが恋した永遠の王子様だ!彼の新衣装を手に入れるために大量に課金した苦い記憶も今となっては懐かしい思い出だ。

「やあ、噂の優等生」

 学力が高くないとフラグが立たないミシェイル=デルタだ、クールなメガネキャラなんだよね。

「手伝ってくれてありがとな」

 YES!不器用な堅気キャラのサイス=ベルトンが登場した!彼は体力が高くない出会えないんだよね、背が高くてイケメン、サイスは私の中で一番の推しキャラなんだよね。

 登場人物みんなイケメンだからどれも捨てられない!


・・・やるならハーレムルートか?

 イケメンに囲まれるのも悪くはない。


 という事は4つのパラメーターを全部上げないといけないのか、[学力]と[体力]の他に[女子力]と[魅力]だったよな。

 女子力はお菓子とか作ってプレゼントするんだっけ?一番面倒臭いヤツだったな。

 魅力は化粧品というドーピングを使えば何とかなるけど、大量の金がいるんだよね。

 王子のグランは全パラメーターが一定値以上あればOKだから一番楽勝だ、ただ能力を上げながらイベントを5人分こなさないといけないから結構スケジュールがシビアだったはず。



 くそ!課金して手に入れた能力ポイント×2のアイテムが欲しい。


『ふふふ、面白そうだからあげようか?』


・・・どこかで聞き覚えのある声がする。


 ふと周囲を見渡すと私以外の時が止まっている、この感覚は以前にも体験した事がある。

「私の事を放り投げて放置したくせに、よくまた顔を出せたな」

 私の嫌味も意に介さないように笑みを浮かべている。最初に会った時と同様に黒目の部分が異様に大きく、血色の悪い顔色はそのままだ。ただ前のように弱ってはいないようだ。

「それで、何か貰えるの?こういう時って何かチートっぽいモノを渡すのが普通でしょ?」


『君は強欲だなぁ、今のままでも十分すぎる恩恵だと思うんだけど?』


 さっきはくれると言ったくせに、今度は私の事を馬鹿にするつもりか?

「しょうがないでしょ、攻略法が分かっているのに上手くいかないもどかしさはアンタには分からないでしょうけどね」

 本当にそれだ、攻略法もやり方も全部分かっているのに上手く事が運ばないとイライラする。

 本来のゲームなら能力パラメーターの数値が表記される、だけどゲームの時みたいにパラメーター表記が出てこないのにとても困っている。実は完全攻略する為には全能力をカンストさせなくて良い、それぞれが一定値以上あれば良いのだ、つまり必要以上に能力を上げるのはターンの無駄になってしまう、効率よく能力を上げて5人を攻略しないといけないのだ。


『いいだろう、じゃあ、君に選択肢をあげよう』


 自称神は仰々しく両手を広げて私に二択を迫ってくる。


『君の右手の指につけている指輪、実はそれには本来その体に入っていたフランシソアが入っているんだ』


 右手?珍しそうな緑色の真珠の指輪をはめている、そう言えば最初から付けていたな。

「そう言えば、何か声が聞こえていた。ずっと空耳かと思っていたけど・・・」


『ああ、彼女が一生懸命君に語りかけていたんだよ』


 な、何て悪趣味な。

 あれ?でもそれって私が体を乗っ取ったっていう事?


『そうだよ。フランシソアは体を取り戻そうと足掻いている』


「ちょっと待った!体を取り戻そうと?それじゃ私はどうなるの!?」

 男の含み笑いが私の背筋を凍らせる。


『彼女が元の体に戻り、君が指輪の中に入るんだ。そこで君に選択肢を与えようと思う』


『その指輪をどうする?そのまま指輪にはめたまま行く?それとも捨てちゃう?その指輪は重要アイテムだからね、その対価として能力ポイント×2の課金アイテムを渡そう』


 胸糞悪い笑顔が私に近づいてくる。

「・・・私に人殺しをしろと?とんだ悪神ね」


『ふふふ、これはゲームの世界なんだろ?なら必要のないモノは省いても問題ないかもね?いわゆる取捨選択の最適化さ、二つのうちどちらが重要で必要の無いモノを捨てて新たなモノを置くスペースを作る。仕分けするのは君達の得意分野だろ?』


・・・ゲームの世界?

 新たなモノを置くスペース?

・・・新しいモノって私の事か?私がいればフランシソアは必要の無い古いモノと言いたいの?

 でも指輪の中のフランシソアは生きているんだよね?私と一緒でこの世界で生きている()()なんじゃないの?


 捨てたら私は人殺しと一緒なんじゃないのか?


 でもこのまま指輪はめていれば、いつかは体を取り戻され、私が指輪の中に閉じ込められるかもしれない。


 そうなったらどうなるんだ?


 自称神という悪魔を見る、私を試すかのような笑みに気分が悪くなる。悪魔のような奴だ、絶対に信用してはいけないと思う。もし私がフランシソアの代わりに指輪の中に閉じ込められて犠牲になったとしてもそのまま放置されて終わりそうな気がする。


『ゆっくりと考えると良い。指輪を捨てたらアイテムを渡そう』


 そう言うと自称神は消え、そして再び時が動き始める。


 私は指輪から目を離す事が出来なかった。

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