59. アメリアに花束を〜(チヒロ視点)
ーーチヒローー
フランシソア=ミゼット。
私がハマった恋愛ゲームの主人公の名前だ。
『アメリアに花束を〜』
恋愛シュミレーションゲームで、まるで古典的な恋愛小説のような骨太ストーリーと、それに見合った激ムズ難易度と複数あるマルチエンディングで多くの女性ゲーマーが思いっ切り熱を上げたゲームだ。
「・・・すいません、誰かいますか?」
「はい」
声をかけるとすぐに扉が開いてメイドさんが入ってくる、その素早さにちょっと引いてしまう。
「あ、あの、ペンと紙が欲しいのですけど?」
すると首を横に振る、無いのか?それとも何か不味ったのか?
「私どもに敬語はお止め下さい。貴方様はミゼット伯爵家の御令嬢なのです、私どもには命令して下さいませ」
そう言うとメイドさんは部屋にある机の引き出しからペンと便箋を取り出してくれる。よし、後でそこの机の中を物色しておこう。
「他に御用はありませんか?」
メイドさんが更なる要求をしてくる。
「え?えっと、もういいわ。下がってて」
少しだけ命令口調で言うとメイドさんは一礼して部屋から出て行った。
・・・なんかドッと疲れた。
さてと、机に向かって座りペンを握る、とりあえず色々と考えをまとめてみる。
まずはゲームの世界を思い出す事から始める。このゲームのストーリーは花に愛されし美しきアメリア王国を舞台に、平民から突如として貴族社会に放り込まれた主人公のフランシソアが、紆余曲折があって多くの人の助けを得て敵からこの国を守るというのが大筋のストーリーだ。
ゲームはマルチエンディングで5人の攻略対象がいて、どの人と結ばれるかによってエンディングが変わってくるというものだ。
5人以外に特殊エンディングとして5人全員と結ばれるパターンがあり、逆に誰とも結ばれないパターンもある。ただ誰とも結ばれないパターンだと、国を守るために命を落とす事になる、そして救国の女神として後世に祭られるというエンディングとなる。
「もしこれが本当にゲームの世界だとしたら、死ぬというこの選択肢はナシだな、死にたくないし」
あ・・・ゲームの世界?
「・・・あれ?そうか!もしかしてこれって異世界転生ってやつなの!?」
「どうかなさいました!?」
大声を出してしまったので外にいるメイドさんが驚いて入ってきた。
「あ、えっ、な、何でもない、何でもないわ!」
慌てて誤魔化し、再び1人にさせてもらう。
間違いない!私はゲームの中のキャラクターのフランシソア=ミゼットに生まれ変わったんだ。鏡で自分の姿を見た時、何となくゲームのビジュアルと似ていると感じたんだ。
確か神と名乗る男が私がよく知っている世界と言っていた、私がドハマりしたゲームだからよく知ってと言ったのかもしれない。
ノートに色々と書いていくまずはこれからのゲームの展開だ。『アメリアに花束を〜』を1、2、3と続編まで全てコンプリートした私に怖いものはない。
フランシソアと母ベリアンヌは父親のフルアムとお互いに惹か合っていた、だが身分の違いからその仲を引き裂かれてしまった。別れ時、ベリアンヌはフランシソアを身篭っており、それをフルアムに言わずに内緒にしたまま身を引いたんだったな。
その後、フランシソアはベリアンヌと共に平民として生きてきたけど、ベリアンヌが流行病で亡くなり天涯孤独になったところを父親であるフルアム伯爵が保護し、新たに貴族として生きる事となった。
確かフルアムには妻も子供もいて、フランシソアは虐められながら育つんだったな。つーか、今更ながらフランシソアって浮気相手との子供じゃないか、あのオッサン最悪だな。
まあ、私はすでに20歳の大人だからね、イジメなんかに負けるつもりはないし、これなら出てくるライバルの悪役令嬢なんかに負ける要素は微塵もない。
「つーか、ストーリーも全部知っているから楽勝じゃね?すっげえイージーモードじゃん」
(な、なに?この頭悪そうな人・・・)
またどこからか声がする?
私の独り言にどこからともなくツッコミしてくる、周囲を見渡すけどやはり誰もいない、オカルトは嫌だなぁ、部屋を変えてもらおうかな?
問題があるとすればその後の続編からだ。
確か『アメリアに花束を〜2』は1の10年後のストーリーだ、そこで王妃となったフランシソアは王宮に忍び込んだ悪賊から自分の子供を守るために殺されてしまう。それが冒頭部分で、フランシソアの死が引き金となってアメリア王国は内乱状態になる。その戦火の中で運命に翻弄された亡国の姫様が主人公なのが2だ。3はそこから更に先の未来の話で、国王の隠し子が平民として暮らしていたが、ある日その出生が判明して新たなるプリンセスとして国を守るという話だ。
今の私が10歳くらいか?私が殺されるまでに20年弱の猶予がある、そうなると以降フランシソアはお役御免となってしてしまうのか。
「自分が若くして死ぬのが分かっているなんて嫌だな」
ここで神と名乗る男が言っていた事を思い出す。私がどのような結末を選ぶか楽しみにしていると言っていた。つまり私なりに自分のストーリーを歩んで良いという事なのか?だけどそれだとストーリーが変化してしまうのではないのか?
『君は私が選んだ実験世界の被験者だ』
実験世界と言っていた・・・どういう意味なんだ?ここはゲームの世界なんじゃなくて、実験的にあの胡散臭い神が作った箱庭の世界という意味なのかな?
その辺りを踏まえて慎重に動いた方が良いかもしれない。
読んでいただきありがとうございました。
次話の投稿は土曜日になる予定です。




