58.鳴瀬 千尋(チヒロ視点)
ーーチヒローー
目が覚めると私の目に見慣れない天井が映る、そして体を起こすと豪華なベッドの上で寝ていた。
頭が割れるように痛い。
確か・・・大学行って、その後に友達からバイトに誘われて、終わって家に帰ってベッドで横になっていたはず。
『やあ、目が覚めたかい?鳴瀬 千尋』
不意に私の頭に直接話しかけられているような感覚がする。
「誰!?」
誰もいないのに声だけがする。辺りを見回しても誰もいない。
『ここにいるよ。君の目の前だ』
ギョッとする、さっきまでいなかったのに知らない男の人がベッドの上に立っている。
黒いローブを羽織っており、黒目が異様に大きいのか目のほぼ全面が真っ黒い。唇の血色が悪くて紫色で病的な男だ。
その不気味さに言葉を失う。
『喜ぶと良い。君は私が作った新たなる世界の被験者に選ばれた』
何を言っている?被験者?私は普通の大学生だったはず、普通にバイトの帰りに・・・
被験者?
そうだ、大学の友達に誘われて、一緒に何かの臨床実験の被験者のバイトをやったんだ!給料が日払いで高額だったから安易に引き受けてしまった。
くそ、何か怪しいと思ったんだ、やっぱり断れば良かった!
「アンタは誰?ここはどこ?」
なぜか体に力が入らない、私を見下ろす黒い男に対して睨む事しかできない。
『私か?私は新たにこの世界を作った創造主、いわゆる神様だな。まあ、世界を構成する為に力を使い果たして今はこんな姿になってしまったけどね』
新しい世界?何を言っているんだこの男は。頭がおかしいんじゃねえ?
『頭はおかしくないよ、私は神で君は私が選んだ実験世界の被験者だ』
私の考えている事が分かるのか?それに何なんだ実験世界?意味が分からない。
『この世界についてはおいおいと気づくだろう、おそらく君はよく知っているはずさ。そして君がどのような結末を選ぶか楽しみにしているよ』
そう言うと自らを神と名乗る胡散臭い男は消えていった。
「消えた?本当に何者?・・・って、体が動く」
重たい体を起こす、周囲を見渡して見る。見たこともない豪華な部屋で、私が住んでいたワンルームの学生アパートとは雲泥の差だ。
「あ、鏡」
部屋の隅にある姿鏡を見つけて自分の姿を確認する。
「・・・誰だ?これ?」
この顔は日本人ではない・・・間違いなく外国の美少女だ。そして明らかに幼い、10代前半くらいの年齢だろうか?
私の名前は鳴瀬 千尋・・・さっきまでは普通の大学生だったはず。なのに今は外国の美少女になっている。
「夢なら醒めて・・・」
ついボヤいてしまう、何の変哲もない大学生だったのに、何でこんな事になってしまったんだ。
ガチャ。
「・・・フランシソアお嬢様!?」
突然部屋のドアを開けられる、リアルなメイドの格好をした女性が私の姿を見て愕然としている。
そして私の事をフランシソアお嬢様と呼び、凝視したまま固まっている。
「だ、旦那様!!フランシソアお嬢様が目覚められました!!」
動き出したかと思ったら大慌てで部屋から出て行ってしまった。いったい何があったのだろうか?そしてフランシソア?どこかで聞いた事がある名前な気がする。
(・・・出して・・・ここは・・どこ!?)
どこからか声がする、周囲を見渡すけど誰もいない。助けを求めているがこの部屋にいるのは私だけ。
「怖っ」
ここに来ての心霊現象!?今まで生きてきてこんな体験は初めてだ。
「フランシソア!?」
突然誰かが部屋に入って来たと思ったら、今度は立派な口髭のおじさんが慌てた様子で入って来た。
「へ?あ?え!?だ、誰!?」
親しげに近寄って来る、目は潤んでおり今にも涙が溢れそうになっている。いい歳したオッサンのそんな姿を見てドン引きしてしまい、つい変な声が出てしまう。
「・・・そうか、そうだよな、アンヌが亡くなってショックで倒れてしまったくらいだからな。私が引き取った時も放心状態だった。分かった、もう一度自己紹介をしよう」
このおじさんの話から推測すると、本来のこの体の主は何かショックな事があって寝込んでしまった、この人はそれに対して物凄く心配をしていた。そして私として目覚めた事で大騒ぎになってしまったようだ。
「私の名はフルアム=ミゼット、このアメリア王国に属する伯爵位の領主だ。そして君の父親だ」
・・・フルアム=ミゼット?
ミゼット!?伯爵?父親?アメリア王国?
あれ?どこかで聞いた事があるぞ?
フランシソア・・・・ミゼット・・・
「あーーーーー!!!!」
「「!?!?」」
つい大声を上げてしまった、ここにいる全員が驚いて言葉を失う。
気がついてすぐに誤魔化し笑いで取り繕う。
「ま、まだ、混乱しているのだろう、目が覚めたばかりだからな」
父親のフルアムは口元を引き攣らせてながらも場を収拾しようとしている。
「ご、ごめんなさい。す、少しだけ気持ちを整理したいので・・時間をいただけませんか?」
出来る限り丁寧にお願いする、するとフルアムは少しだけ表情を明るくさせる。
「そうだな、今は目覚めたばかりだ、話がしたくなったらいつでも呼びなさい。ゆっくりで良いから、心の整理が出来るまでいつまででも待っているよ。何か用があればそこにいる従女達になんでも言いなさい」
肩を抱かれて額にキスされた!?ゾワワと背筋に寒気がするが我慢して笑顔で送り出す。
部屋に1人になると急いで額を拭く、私がいた世界と文化が全然違う、こういう愛情表現は私には無理だ!!
そして落ち着くとベッドに横たわり見慣れない天井を見上げる。
「私がフランシソア=ミゼット?何だこれ?」
読んでいただきありがとうございます。
この土日で投稿したいと思うので明日も投稿します。
良かったら読んで下さい。




