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53.私の大切な

少しだけ暴力的な表現があります。

「これがお前達が(すが)っている物なのだろう?」

 勝ち誇った顔のグランが私にフランシソアが封じられた指輪を見せつける。


 嫌らしい笑いが私の視界にへばりつく。


「おっと、それ以上近づくな。この指輪を窓から遠くに投げ捨てるぞ」

 私から離れるように窓の方へ移動していく。

「・・・返して。その中には人がいるの、本物のフランシソアが入っているの」

「近づくな!!」

 私が取り返そうと近づくと強い口調で牽制する。

「そのような世迷い言を信じると思うか?こんな物にたいした価値はないだろう。別に返しても良いが全ての真実を吐いてもらう」

 全ての真実?何を言っているんだ?

「ローゼリア家の陰謀を全て白状しろ」

 ローゼリア家の陰謀?そんなモノはないし、王家を嵌めようと思ったことはない。

「ローゼリア家はずっと前王アイラス陛下へ忠誠を誓い、寄り添って」

「嘘をつけ!父上を(そそのか)し、こうして王室に介入しようとしているではないか!!」

 私の話を途中で遮る。そして激昂した様子で近づいてくる、さっきまでは近づくなと言っていたくせに。


 ドンッ!


「痛っ!」


 思いっ切り突き飛ばされる。

「臣下であるなら跪け!頭が高い!」

 高圧的に私の頭を押さえつける。

「昔から気に食わなかった!ローゼリア家が忠臣であるなら口ごたえするな!いちいち文句を言うな!自分が出来るからと言って偉そうにするな!俺を見下すな!!」

 頭ごなしに大声で畳み掛けてくる、まさか私の言動をそのように受け取っていたとは思わなかった。

「ひぎいっ!!」

 今度は折れている右腕を踏まれ、痛みで思わず悲鳴を上げてしまう。

 そして髪を掴まれて顔を無理矢理上げさせられる。

「その目だ!その反抗的な目が気に食わない!何で泣いて詫びない、何で許しを乞わない!!」

 唾がかかりそうなくらいの距離で喚き立てる。


「何も・・・貴方は分かっていない、全てを肯定するのが忠臣ではない」

 怖い・・・ここで反論をすれば暴力を振るわれるかもしれない、だけど何か言わないと自分の全てが否定されるみたいで嫌だった。

「私には間違っていれば窘めてくれる人がいる、成功すれば一緒に喜んでくれる人がいる、良いことをすれば褒めてくれる人がいる、ありがとうと言えばありがとうと返してくれる人がいる、謝れば許してくれる人がいる」

 私に関わった人を否定させるわけにはいかない。

「平民に落ちて、何も知らなくて騙された事もあった。死んでしまいたいと思った事もあった、明日なんて来ないで欲しいと思った事もあった。それでも寄り添って支えてくれる人が私にはいた、彼女達によって私は一歩踏み出すことが出来た。喧嘩もするし間違っていれば厳しく言われる、だけど絶対に嫌うことが出来ない、それは私の事を大切にしてくれているのを知っているからだ!」

 冷静に考えると滅茶苦茶恥ずかしくなる、ヨヒムとクララの顔を見れない。

「私が貴方に屈すれば、私の全てを否定する事になる、それだけは絶対に嫌!!」


 ガッ!


 反論をすると黙らせるために床に押し付ける。

「黙れ!黙れ!!貴様とは立場が違うのだ!!俺は間違えられないんだ!俺に必要なのは俺の意見を忠実にこなせる者だけだ、それ以外の意見は必要ない!反論する奴など消えろ!!」

 本心で言っているのか?これがグランの本心だったのか?こんな人間に誰がついて行こうと思う?

「いい加減にしろ!!」

 私を押さえつけるグランを誰かが押しのけてようやく解放される。顔を上げるとベベルが私を守るように立っている。


 と言うかついに手を出してしまった・・・


「これ以上、私の大切なキシリアナお嬢様を傷つけるな!何も知らないクセに語ろうとしないでくれ!」

 するとベベル以外にもロナやコリスまで私の前に立つ。そしてヨヒムやクララまで・・・


「貴様らあ、その行為の意味が分かっているのだろうな!王に対する侮辱、さらには暴行、即座に斬り捨ててやる」

 突き飛ばされたグランが立ち上がる。あの男が丸腰で本当に良かった。

「動くな、すぐに斬り殺してやる」

 倒れている兵士の側に落ちている剣を拾おうとする。

「・・・どういうつもりだ」

 今度は別の誰かがグランを行手を阻み、それに対して再び激昂して大声をあげる。顔を上げると王宮の従女をしているエリナが両手を広げてグランを止めようとする。

「もう、お止め下さい」


 バシッ!


 エリナの頬を思いっ切り引っ叩く音が響く。

「邪魔をするな、従女のくせに主に口ごたえするな」

 それでもエリナは動こうとしなかった。

「キア先生は私の大切な人です、私が生きる為の道標なんです。私がどんなに貧しくて苦しくも、未来を自分での手で掴む手段を教えてくれた恩人なんです」

 いけない、グランが拳を握っている。さっきは平手だったのに今度はグーで殴ろうとしている。

 私は咄嗟に走りだしてグランの腕にしがみつく。エリナを、私の自慢の生徒を殴らせてたまるか!

「くそ!離せ!俺に口ごたえする奴には制裁しなくてはならない!貴様もまとめて斬り捨ててやる!!」

 私を振り解こうとするが意地でも離さない、すると今度は私に標的を変えて反対の手で殴ろうとする、だがそれを阻止するためにエリナが咄嗟にしがみついて阻止する。

「くそ!離せ!!」

 振り解こうとする暴れるが、今度はロナやベベル、コリスらも参加してくる。さすがに5人を相手に拘束を解くことが出来ず、グランは身動きが取れなくてなる。すると遅れてやって来たヨヒムとクララが何かを拾う。


「へへへ、キア!」

 ニヤニヤしながら私に指輪を見せる。

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