48.火蓋は切らせない
「これ以上、私の体で悪さをしないで、周りに迷惑をかけないで!」
フランシソアの心の叫びが私の声で発せられる。
「私だけならまだ良い、だけどキアを苦しめ、キアのご家族を苦しめ、前王様を苦しめ、多くの人を苦しめているのは分かっているの!?貴女の罪は私が命と人生をかけて償います、だからもう大人しく指輪の中に戻って!」
2人が対峙する、それでも王妃は表情を崩さずにフランシソアを見据えている。
「そのまま、その方の体を使えば良いのではないかしら?所詮はモブの脇役なんだから問題ないでしょ?」
王妃が冷たく言い放つ、だがフランシソアはそれを拒絶するように首を横に振る。
「貴女にとって自分以外は脇役なのかもしれない、だけど私にとってキアは大切な人、恩人で初めての友達で大好きな人よ。だから絶対にそんな事は出来ない、貴女の価値観を他者に強要しないで」
フランシソアの言い分に恥ずかしくなってくる、まさか私がそこまで好かれていたとは思わなかった。
「・・・たかがゲームのキャラクターでしょ?何を言っているの?」
よく分からない、どうしてここまで私達を見下すことが出来るのだろうか?私を脇役とこき下ろし、人に対して「たかが」と言い放つ事が出来るんだ?
「あの神と名乗った奴の言いなりになってやるもんか。私はここでは死なない、そのために2の最強キャラクターのディランド=シャフタールをこちら側に引き入れたんだから」
王妃がディランド=シャフタール将軍の後ろに隠れる、どうして彼がそこまで王妃の肩を持つのだろうか?
「シャフタール。貴様は王妃側についているが、その者に大義があると思っているのか?」
王妃を守るように立つディランドに対してハイド卿が凄む、それでも表情を一切変えずにこちらを見据えている。
「王宮に土足で私兵を連れて乗り込んでくる者に義があるとは思えませんが?」
初めてディランドが口を開く。至極真っ当な言い分だ、今の状況はローゼリア家が王権を明け渡すように武力で圧力かけているとも見えてしまう。
「それは私に対しても言える事か?」
前王様が前に出る、こちらは前国王という立場で話をしている。待てよ?このままでは王妃の言う通り現国王側と前国王側で対立し、内乱の火蓋となってしまうのではないか?
今の私は客観的に周囲を見れて、視界が広い。2階の通用路に複数の人が動いている、間違いなく軍の兵達だと思われる。このままでは一方的にやられてしまう。
(フランシソア!変わって!空気がおかしな方向に向かっているわ!)
「うん、分かった!」
この空気は悪い、急いで何とかしないといけない。
「ちょっと待って下さい!!」
出来る限り大きな声を張り上げる、すると私に注目が集まる。さっきまでフランシソアが必死に嘆願していたのに、私に入れ変わり180度雰囲気が変わったのでさらに注目が集まる。
「私達の目的は王権でも、軍との対立でもありません、戦いに来た訳ではありません、こちらには軍人でもないし貴族でもない一般の人がいます!双方とも武器をおさめて下さい!」
ヨヒムにクララ、ロナにコリスもいる、こんな事のために戦闘に巻き込まれるなんて絶対に嫌だ!
「現在、フランシソア王妃の体を悪い魔女が乗っ取っています。本物のフランシソア様はこの指輪の中に閉じ込められいます、私達の本来の目的はこの指輪をはめて本来のフランシソア王妃を取り戻す事です。お願いです私達は軍の皆さんと戦う意志はありません!」
何とか戦闘が起こるのを止めたい、その思いだけで訴えてかける。
するとディランド将軍が冷たい視線を私に向ける。その圧倒的な威圧感に背筋がゾッとする。
「そのような何ら信憑性もない戯言を信じると思っているのか?そちらが王室へ剣を向けた以上、こちらも引く気はない」
全く聞く耳を持たれない、むしろ逆に警戒心を煽ってしまったのかもしれない。
「で、ですが」
「くどい。平民であっても王宮に土足で踏み入り、王家と対峙した時点で当事者だ。剣をおさめる道理にはならない」
空気が痛い。こんな風に真正面から威圧を向けられた事がない、殺気を向けられるとはこんな感じなんだろうか。
「度が過ぎるぞ将軍。そのような抜身の殺気を女子に向けるんじゃない」
バランが私を守るように前に立つ、ディランド将軍の殺気に当てられてバランも武器を手にする。
いけない、これ以上は本当に血が流れてしまう。
「いやいや、本当かどうか試してみたらいいんじゃね?信憑性も何も指輪をはめるだけなんだから大した手間じゃないだろ?」
ここでヨヒムが明るい口調でディランド将軍と王妃に尋ねる。
「それとも指輪をはめられない理由でもあるんですかい?」
ヨヒムが何とか指輪はめるように誘導しようとする、王妃は何も言わずに目を背ける。
「前王様夫妻のようにパレードをして顔見せしたら、尊敬する対象として顔を覚える事ができるけど、アンタが王妃なんて一部の人間しか知らないんだよね?本当にアンタが王妃なのかい?とてもじゃないけど尊敬する対象に思えないんだよね」
ヨヒムが結構辛辣な言葉を投げかける。
「ここは景気よく指輪をはめて私らを納得させて下さいや。はめてもらって何も起きなかったら非を認めてコイツが責任とりますから」
・・・おい、何で最後に私を差し出す?
「・・・あら?王族をこき下ろしておいて罪がないと言うのですか?」
「は?」
私がヨヒムの腕に抱きつく。もしダメだったら貴様も道連れにしてやる。
ヨヒムに睨まれるも大きくため息を吐かれる。そして再び王妃を見据える。
「えーと、ウチらは血が見たいんじゃなくて、指輪をはめた王妃様を見たいだけなんですがね?」
私達が挑発っぽく問いかける、すると目を背けていた王妃が私達を睨む。
「アホくさ。何なん?モブが何そんなにイキがってんの?」
とても高貴な人間が発するとは思えない言葉を口にする、これが本性なのだろうか?蔑むような目つきで私達を睨みつけてきた。
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次話の投稿は土曜日になる予定です。




