47.転生者
「・・・どなただっけ?」
まあ、10年も経てば私なんて忘れられても仕方ないか。
良いんだよ、ちょっとムカつくけどそれが普通の反応だ、ここで「生きていて良かった」とか言われたら「お前もかっ!」てブチ切れてしまったかもしれない。
「えっと、元の名前はキシリアナ=ローゼリアと申しますが思い出していただけませんか?」
「・・・キシリアナ?」
懸命に思い出しているのか少し間が開く。
「・・・あっ!!あーーー!悪役令嬢だ!確かそんな名前だった!!」
悪役令嬢?以前も私の事をそう呼んでいたな。
「ようやく思い出していただけましたか、チヒロさん?」
「・・・え?」
私がチヒロという名前を呼ぶと明らかに反応している。
「・・・何で知ってんの?」
前王様側も騒つく、こんな簡単に認めるの?
「・・・そうか!実は貴女も転生者なのね!!悪役にも転生するってよくあるパターンだもの!!」
・・・は?
転生?よくあるパターン?何のこと?
「そうよね、シナリオではキシリアナは断罪されて国外に追放されたはず。暗殺されたって聞いた時はシナリオと違うって思ってたけど、貴女も転生者というならそれも納得できる!」
私は全然納得できないけど!?
「あの・・・何を言っているのか理解出来ないのですが?」
「あれ!?違うの?おかしいなぁ?」
お前の頭がおかしいんじゃない?
「でもここでローゼリア家が前国王を唆して反乱を起こすのは2のシナリオの冒頭部分通りなのよね」
は?唆して反乱?何を言っているの?
「うーん、『アメリアに花束を』って本当に知らない?恋愛ゲームだけど骨太なシナリオと結構な難易度のシステムで人気だったんだけど?知らないって事はやっぱり転生者じゃないんだ、仲間がいればちょっとだけ嬉しかったけど」
この人の言っている事が全く理解できない。
「王妃陛下、ローゼリア家が王家を唆して反乱とは、あまりに浅慮な詭弁ではありませんかな?我々が反乱を起こすなら愛するキシリアナが嵌められた時点で起こすと思いますが?」
お父様が相当怒っている、勝手に反乱を起こすという在らぬ罪を被せられるなんて思いもしなかった。
「あら?若い貴族を募ってグラン陛下を引き摺り下ろそうとしているのに?」
・・・どういう事?他の諸貴族の動向を把握している?
「・・・悪女が、軍の諜報部でも謀ったか!?」
ハイド卿のイライラがそろそろ爆発しそうだ、それを前王様が必死に抑えている。
「ふふふ、『アメリアに花束を 2』にちゃんとそこが導入部で触れていたのよ。これから前王様側と現王様側で争いが起きて内乱状態になる、そのおかげで主人公のリコルシェは赫の蠍から解放され、生き別れた兄を探しに王都まで来ることになるんだから!」
国が内乱!?本当に何を言っているんだ?内乱の原因を作りつつあるのはアンタだろ!!
「すでに第3作目の主人公の母親も出て来ているし、シナリオの強制力って凄いわ。私だって何とか抗おうとしてるのよ、グランとの間に子供を作らないのもその為だし」
王妃が一方的に喋っている。私達全員が理解に苦しんでいるのに、そんなものはお構いなしだ。
「だけど、実は私はこの時に侵入して来た前王派の人間によって殺されちゃうんだよね。まあ、ぶっちゃけそこにいる百獣の王バランによって殺されるんだよね」
バランに殺される?バランを見ると高速で首を横に振って否定する。
「まてまてまて、俺が王妃を殺す道理はない!内戦の火蓋と聞かされて、尚更殺すわけないだろ!!」
巻き込まれてしまったバランが気の毒になってくる。
「だって百獣の王バランは赫の蠍の残党なんでしょ?恨みをもってディランドと対峙するはずよ!」
「違う違う違う、そんな事は断じて無い!!俺はずっとローゼリア家に仕えて来た、変な事を吹聴しないでくれぇ!!!」
泣きそうなバラン、怖い顔に大きな図体をしているのに可愛らしい悲鳴をあげるものだ。
「え?じゃあローゼリア家が赫の蠍と繋がっているって事?」
「「「んな訳あるか!!」」」
その場にいる全員に否定されて何故か王妃が困惑している。
「えーーーと、貴女が言う内乱も起きないし、前王様派とかに別れない、貴女もバランに殺されませんから。私達の目的は貴女にこの指輪をはめてもらうだけなんだけど?」
私の指にはまっているグリーンパールの指輪を王妃に見せる。すると何のことか分からないようで不思議そうに首を傾げる。
「好き勝手な暴れているようですが、そろそろフランシソア様に体を返して欲しいのですが?」
フランシソアの名前を言ったとたん驚くように後ずさる。
「うそ?まさか生きてるの?」
見るからに狼狽えている、これは間違いなく黒確定だ、私がお父様達の方に視線を向けると向こうも気づいたらしくて頷く。
(キア・・・お願い、変わって)
フランシソア?何か言いたい事があるの?
よし!何でも言ってやれ!
意識が薄れていく感覚に陥る、そしてすぐに目の前が開ける。私なのに私ではない感覚、別の視点で私を見ているみたいだ。
「久しぶり チヒロ・・・貴女は知らないと思うけど」
相変わらず口調は拙い。私と頭の中での会話とは違い、実際に口から声を発するのとでは勝手が違うようだ。
「キアに 無理言って ここまで連れて来てもらったの」
私の雰囲気が変わったことで王妃が明らかに動揺している。
「お願い、もう私の体を返して!」




