46.未来を知っているの?
「どういう事だ、もしかして我々の行動は王妃側に筒抜けだったのか?」
ベベルも異様な雰囲気に焦りを感じている。
そう、まるで前王様やお父様、ハイド卿が来るのが分かっていたかのような対応なのだ。
「もしかして・・・誰か内通者が?」
バレリーが不穏な事を言い出す、だけど私達の中に内通者がいるなんて考えたくない。それに昨日今日集まって突発的に動いているんだ、事前に用意することなんて出来る訳がない。
(・・・ねえ、もしかしたらだけど、チヒロは何が起こるのかを知っているのかもしれない?それっぽい事を口に出していた気がするんだけど。)
フランシソアが不吉な事を口にする・・・確かに、まるで未来を知っているかのように、私が没落するのが分かっているような感じだった。
「・・・事前に何が起こるのか分かっていたという事!?」
つい口に出してしまった。
すると私に注目が集まる。
「そうか!相手は魔女なのだった。その可能性も考えられるはず、何が起こるか知っているなら事前に準備して対策を練る事が出来る」
ベベルが合点がいったように頷く。
「確かに・・・王宮の兵があまりにザルすぎだと思っていた。その理由が軍が出張っているというなら、王宮の兵にやる気が出る訳がない」
バレリーも毒を吐きながら納得する。王宮の兵が全くやる気がないとリコが言っていた、確かに今の状況でモチベーションを上げろというのは可哀想な気がする。
「とにかく急ぐぞ、このままでは王宮が血の海になってしまう!」
バランがよく通る声で指示をする、こういう時にこそ頼りになる。
ホールを遠回りすることになるが通用路を走り抜ける、その先に降りる階段があるはずだ。
通路を進んだ先に不意に複数の人影が見える、よく見るとボウガンを構えている、あの位置は間違いなく前王様やお父様達に狙いを定めている。
すると私達の脇を抜けて猛スピードで巨体が追い抜かしていく。
「うおおぉぉ!!」
熊のような巨体が猛スピードで突進して行く、その姿を確認した時にはすでに遅くゲインツの突進をかわす事が出来ずにモロにくらいぶっ飛んでいく。
「うげぇ、エグすぎ」
クララからドン引きの声があがる、今の一撃でボウガンを構えていた2人の兵士が気絶している。
「何だ、何があった」
階段から上がってくる声がする、するとバランとリコが階段から飛び降りて兵士に襲いかかる。援軍は3人、あっという間にバランとリコに制圧されてしまった。
そして手際よくバレリー達が兵士を拘束していく。
「ローゼリア兵ヤベェな、慣れすぎじゃねぇ?」
ヨヒムもドン引きだ、
「い、いえ、この人達が異常ですから!」
侯爵家の威厳を守ろうとロナは必死だ。
「5人組か、小隊だな、弓手2人にその護衛が3人か・・・間違いなく軍人だな」
ゲインツが真面目だ、こんな真面目な顔のゲインツを初めて見た。
「この様子では他にも小隊が潜んでいるな、すべての制圧は無理か・・・」
バレリーが眉間にシワをよせる、
「とりあえずお館様に合流するぞ、このままでは包囲されて一方的になぶられてしまう。ゲインツ、最悪は俺らで殿をやるぞ」
バランにも焦りの色が見える、ゲインツも力強く頷く、しんがりってどういう意味だ?作戦は失敗という事なのか?
「父さん大丈夫だ、先に敵はいない」
先を見に行っていたリコが戻ってくる。するとさっきまでの厳し顔から一転し、目を細めてリコに笑顔を見せる。
・・・物凄く嫌な予感がする。
「・・・バラン・・・ダメよ」
ついバランの服の袖を掴んで口にしてしまった。するとビックリした様子で私を見る。
そしてすぐに笑顔に戻る。
「おうよ!任せなされ!!」
子供の頃のように頭をガシガシ撫でられてしまった。何が言いたいのかわからないけど、もしかしたらさっきの会話は、撤退する時にバランとゲインツがその時間を稼ぐという意味ではないのだろうか?バランのリコを見る優しい目が、その決意に思えて仕方なかった。
結果的に大回りする事になってしまった。ここで陛下達に陽動として引きつけておいてもらい、私達だけでチヒロと接触するつもりだったのに、まるで先手を打たれたような気分だ。きっと離宮の通りでグラン陛下に捕まり時間を浪費したのが失敗の原因に違いない。
階段を降りてホール脇の出入り口にたどり着く。そしてちょうど前王様側と王妃側が対峙する中間位置に出てしまった。
どうやら二つの勢力は睨み合ったままの膠着状態だったようだ。
私達が突然現れた事で双方の視線が集まってくる、何か場違いすぎて恥ずかしくなってしまう。
いや、そんな事を言っている場合ではない。
「凄い・・・本当に2の導入部分のそのままだ。という事はあの白髪の大男が「百獣の王バラン」だよね?」
突然素っ頓狂な言葉が発せられる。百獣の王?誰の事だ?
「父さんの異名です」
リコが嬉しそうに教えてくれる。バランって百獣の王って呼ばれているの!?確かにライオンみたいな髪型だけど。
みんなの視線にバランは大きな体を恥ずかしそうに縮こませる。
「や、やめてくれ、そんな恥ずかしい名前はとうの昔に捨てた!!」
涙ながらにやめてくれと懇願してくる、私はカッコいいと思うのだけど、バラン的には嫌らしい。
「あれ?何かイメージと違うな?まあ、いいか、ディランド、あの男が妹さんを攫った男よ」
王妃が訳の分からない言葉を発する。ディランドの妹を攫った?私がバランを見ると首を高速で横に振って否定する。
本当に訳の分からない事を言って人を惑わせる。
「あー、その、えーと、お久しぶりですねフランシソア様。私の事を覚えていらっしゃるかしら?」
このままあの女のペースで行くと、さらに混乱を招きそうだ。
「・・・どなた?」
この女、マジでムカつく。
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次話の投稿は土曜日になる予定です。




