↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
41/68

41.捨てた女

 今の私は紛れもなく怒っている。

 目の前の男は泣きながら私が生きていることを喜んでいる。

 普通なら私も喜んで感謝しないといけない。


 だけど違う!


「いや、違う、エリナからキシリアナに似た女性を知っていると聞いて、もしかしたらと思って」

 私の顔を見て血の気が引くように青くなっていく、そして言い訳のような言葉を重ねる。


「私を捨て、私を殺した男から心配されて、どこの誰が喜ぶと思っているんだ!同情してくれてありがとうとでも言うと思ったのか!?」


 自分でも信じられないような汚い言葉が出てくる。


「捨てた女を心配した?生きていて良かった?捨てた女を懐かしんでぐじぐじ引きこもっていたのか?見下げ果てた馬鹿ね!そんな事されたって誰も喜ばないし、誰もそんな事望んでない!!」


「アンタは引きこもって何をした?父親と母親を苦しめて国を滅茶苦茶にした!友達だった人達が厳罰を受けているというのに、自分だけ私に謝罪して、許しを乞うて、救われた気になっているつもりか!」


「違うそんなつもりは」

「違わない!!今の状況をどう説明するつもりだ!お前が選んだ選択はみんなを不幸にしてんだ!お前は何をしたいんだ、今さら過去の女に縋るな!こっちは死に物狂いで毎日を生きてきたんだ、人を馬鹿にするのもいい加減にしろ!!」

 もう自分でも何を言っているのか分からない、捲し立てるように罵詈雑言が出てくる。


「もういい。よく頑張った」

 突然、ヨヒムに抱き寄せられ、言葉を遮るように強く抱きしめられる。

「何やってんだ、こういう時は行けって!」

 後ろでクララがベベルの尻を蹴る。すると押し出されるようにベベルがグランの前に立つ。


「・・・陛下、もう良いでしょう?これ以上私の大切な方を傷つけないで下さい」

 ベベルの背中が逞しく見える。

「キシリアナ様はこの10年、自身を呪ってきた、家族を苦しめ、我々のような下々の者に対して罪の意識を持って贖罪をして生きてきた。その意味を貴方様は分かりますか?」


「我々ローゼリア家の人間は、今でもキシリアナ様が貴方達の卑劣な罠に嵌められたと信じています。無実の罪で罰を受け、犯してもいない罪を今もなお償い続けていた。その意味を知っていただきたい。どうか自身の行為を見つめなおして下さい」

 ベベルが一礼して私達の方に向く。


 なんだろう、こう言ってもらえると・・・とても嬉しい。


「参りましょう、時間がありません」

 ベベルは先頭に立って王宮へ向かう。

「エリナ、こんな事になってゴメンなさい。貴女にとって悪くならないように配慮します。どうかグラン陛下を連れて避難してて下さい」

 そう言って頭を下げる。何か言いたげにしていたが、私も醜い姿を見せたので少々気まずい、グラン陛下も茫然自失といった様子で呆けている。このまま何か言われるのは嫌なのでさっさとベベルを追う。


「ははは、久しぶりにヒステリックなキアを見たな、昔に戻ったみたいだったぞ」

 私を追いかけてきたヨヒムがからかってくる。

「ヤバいわ、滅茶苦茶恥ずかしいわ。少しは大人になったと思ってたけど、全然ダメだった」

 ちょっと反省する、

「少しだけスカッとしたけどね」

 クララがニヤニヤしている。

「ふふふ、昔、私達へ暴言を吐いた時を思い出しましたよ」

 ロナも珍しく笑っている。

「あう・・・あの時は本当にごめんなさい」

 そう言えばああやって捲し立てた気がする。

「ふふふ、今更ですよ。貴女様自身でおっしゃっていたではありませんか」

 私がグラン陛下に言ったことが、今まさにブーメランで返ってきた。

「でも、誠心誠意の謝罪をされるのは悪い気はしませんよ。ねぇ、ベベル」

 笑いながらロナは先頭を歩くベベルに話を振る、

「はい、本当にその通りです。あのような薄っぺらい自己救済のための謝罪と比べてはなりません」

 振り向きもせずに憤った返事が返ってきた。

「それで、私達はどこに向かっているの?」

 自信を持って先頭を歩くベベルに尋ねる、するとピタリと止まる。


「・・・申し訳ありません。私まで頭に血が昇っていたようです」

 耳まで真っ赤になっている。コイツはアテもなく歩いていたのか!?

「そのまま進むと二階にいく従者用の階段があります。分かっているものだと思ってましたよ」

 リコが苦笑いをしている。そのまま私達の脇を抜けて先頭に立つ。


「ははは、アンタやっぱりいいキャラしてるよ」

 ヨヒムがベベルの背中を叩いて先へ進む。

「詰めが甘い」

 ロナがベベルの肩をポンポンと叩く。

「途中までは良かったのになぁ」

 クララが小さく毒を吐く。

「ドンマイです!」

 なぜか一緒に来てしまったコリスが励ましの言葉をかける。

「おら、モタモタするな、行くぞ」

 バラン、少しは気を使え!

「がははは、元気だせ」

 ゲインツは良い奴だ。

「まあまあ良かったぞ」

 バレリーは口は悪いけど優しい。


 私は・・・


 ベベルの背中を優しく叩く、

「大切にしてくれてありがとう。カッコ良かったし嬉しかったよ」

 本当に嬉しかった。ベベルの言葉に今までの自分を肯定され、救われた気持ちになった。


 大きな声では言えないけど本当に感謝しかない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。