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40.予期せぬ再会

「時間です、もう一度外の様子を見てきます」

 リコが時計を確認して外に出る。こんな緊張感は初めてだ、王妃教育の時だってこんなに緊張しなかった。

「皆さん、1人ずつ上へ」

 リコの合図で1人ずつ上へ行く、私も最後の方だが上へ向かう。薄暗い用具小屋に出ると外の空気を肌で感じる事ができる、やはり地下にいるより全然外の方が気持ちが楽になるな。


 再びリコの合図で今度は用具小屋から外に出る、目の前に映る光景に懐かしさを覚える。

 日が斜めに落ちつつも花壇には花が咲いており、庭園もしっかりと整理されていた。

「幼い頃ここでお茶会をしたなぁ」

「そうでしたね。初めて王城に来た時ですので、お嬢様が6つの時です。私がキア様専属になって初めての大仕事ですからよく覚えてます。あの時の私が15ですから時が経つのは早いものです」

 ロナも懐かしいようだ。もう20年以上前の話か、本当に時が経つのは早い。

「懐かしむの良いですが、先を急ぎますよ」

 ベベルが感傷的な気分に浸っている暇を与えてくれない。

 物音を立てないように足早に裏手の作業路へ向かう、細い路地裏のような道を進むと開けた場所に出る。


「ここが離宮?」

 初めて見たが立派な一軒家が建っており、庭園なども綺麗に整備されている。

「本来なら前王様のアイラス陛下夫妻が住われる予定で、派手を好まないお二方らしい設計だそうです。結局、追い出されるように今の屋敷に住われてますけどね」

 離宮ということはグラン陛下がここに住んでいるのか。いったいどんな気持ちなんだろう、本来なら両親がここに住む予定だったのに。


「誰ですか!きゃあ!!」

 王宮の方から声がすると思い振り返る、すでにリコが制圧しており、宮衣を来た従女を押さえつけていた。

「リコ、暴力はやめて!」

 つい口を出してしまった。するとリコは聞き入れてくれて手を緩めてくれた。

「ごめんなさい、暴力を振るうつもりはありません。どうか大人しくして下さい」

 優しく言うと従女は首を上下させて頷く。


「サンシェさん?陛下にはお伝えしましたか!?アイラス陛下様がいらしゃっているのですよ、早く陛下に」

 さらに王宮の方から女性の声がする。すぐにリコが制圧しようとするが、女性はリコにいち早く気づいたのか身構えてその手から逃れようとする。

「悪いなお嬢さん」

 逃げた先にはバランが待っており、従女は捕まえられる。

「なっ、なんですか、誰かぶぎゅ」

 叫ぼうとするのをバランが太い指を口の中に入れて遮る。


「バラン!ちょっと待って!乱暴はダメ!・・・って」

 抵抗しようとバランの拘束から逃れようとする女性の顔を見る・・・この顔は覚えている。

「エリナ?」

 突然自分の名前が呼ばれ、ジタバタするのをやめて目を見開いて私を見る。

「・・・しぇんふぇ?」

 バランの指越しに言っているからマヌケに聞こえるが、おそらく先生と言ったんだろう。

「バラン、お願い、指を外して」

 私がそう言うとバランは口に突っ込んでいた指を外す。

「キア先生?それにクララ?ヨヒムさんまで?」

 私達の顔を見て驚愕している。そうだよね、本来なら私達がここにいてはいけないのだから。

「何だ、いったい何の騒ぎだ!」

 しまった、少し騒ぎすぎた。後ろから男の人の声が聞こえてくる。


あ、・・・後ろから?


 後ろから、つまり離宮にいる人が騒ぎを聞きつけて出てきてしまった。

「エリナ!?貴様ら何者だ!!」

 男性が剣を握ろうとすると、ゲインツがその手を掴んで剣を抜かせない、あまりの力にビクともしない状況だ。


 本当に嫌だ、もう顔も見たくないのに、何で出てくるかなぁ。


「お久しぶりでございます、陛下」

 私が声をかける、すると全く動かなくなり、私の顔を凝視する。

「・・・もしかして・・キシリアナ・・・なのか?」

 私の事を少しは覚えていたようだ。まるで亡霊でも見ているかのように青ざめている。

「本当はもう二度と姿を見せるつもりはなかったのですが、こうして生き恥を晒しながらお見苦しい姿をお見せして申し訳ありません」

 深々と頭を下げる。周囲は水を打ったように静まりかえり私達を見ている。


「・・・エリナの言った通りだ、本当に、本当に生きていた」


・・・あれ?何か反応がおかしくないか?

 もっと、こう復讐しに来たのか!?とか、なぜ生きているのだ!!っていうのを期待していたのに。


 目の前の男はなぜ私を見て涙を流しているんだ?


「良かった、本当に、生きてて良かった」

 私の手を握り、泣き出してしまう。

 背筋がゾワっとして悪寒を感じる。すぐに握られた手を引き剥がして距離を取る。


「・・・すまない、嫌われてて当然なはずだよな」

 何か1人で納得している。それを見て私は例え難い気持ち悪さを感じる。

 これは嫌悪感なのか、失望感なのか分からない。ただ心の中に一つだけよぎった言葉がすぐに出てしまった。


「お前は、何を今更言っているんだ!!」


 とても一国の王に言うような言葉ではない、本来なら不敬罪でその場で処断されるかもしれない。


 でも心の底から出てきた心の声を止める事が出来なかった。


読んでいただきありがとうございました。

なかなかペースが上がらなくて申し訳ありません。

次話の投稿は土曜日になると思います。

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