37.オッサン達はかしましい
厳ついオッサン達の大歓迎を受けた後、派手に胴上げされそうになったが、ロナによってバッサリと切られて洋館の中に入るように促される。
「外はボロボロだけど中はしっかりしてるね。」
洋館の中を見てつい呟いてしまった。想像以上に綺麗に整理されており、人が住めるくらいの環境だ。
「それで、そろそろ私を解放してくれませんか?」
バランは私をお姫様抱っこしたまま放そうとしない、私も良い歳なのでそろそろ止めて欲しい。
「お嬢、軽すぎるぞ、ちゃんと食べているのか?」
厳つい顔で変なことを言うな!
今の私は無駄な贅肉がなくなり、適度な筋肉がついた理想的な体型なんだよ!
バランから解放され、ソファに腰掛ける。
「君は良いな!良い筋肉だ!何か経験はあるのか?」
向こうではヨヒムがナンパされている、
「いえ、何もやってないッス、包丁より重たいモノ持ったことないッス。」
ヨヒムよ、その体型でその嘘は誰も信じないぞ?
「そうか、それは勿体ない、是非ウチで鍛えてみないか?いや、鍛えるべきだ!!」
嘘を信じた!?
そして勧誘は続く・・・ローゼリア家の精鋭部隊は脳みそまで筋肉だったようだ。
「・・・ゲインツ、そろそろ止めてください。その方は私の命の恩人であり、私が住まわせてもらっている家の家主さんです。」
陽気で人懐っこい熊男が、顔をクシャクシャにして私に無邪気な笑顔を向けてくる。
「貴方は歳を重ねても変わりませんね。」
昔と変わらない無邪気な笑顔に私もつい笑みが溢れる、
「わははははははは、お嬢はベッピンさんになったなぁ、もう少し上半身に筋肉が欲しいがなぁ!!だが、うん!尻は良い、尻は良いぞ!!」
この男、査定基準が筋肉のようだ。尻、尻言わないで欲しい、お尻が大きいのは仕方ないだろ!
失礼な物言いは昔は苦手だったけど、憎めない性格だったのを何となく思い出してきた。
「ゲインツ、そろそろ話をしたいのだが?」
背が高く鋭い眼光の男性がゲインツを窘める。懐かしい、甘やかすしかなかった私の周囲で、唯一苦言を言ってくれた人だ。だけど頭が良かったのでとても為になる話を一杯してくれた。
「バレリー、お久しぶりです。お元気そうで本当に良かった。」
「・・・。」
何も言わず目頭を押さえている。
「あんな、クソ生意気で、殴りたくなるような喋りしか出来なかった小娘が、こんな、立派になって・・・くっ、くそ!目から汁が・・・」
何で泣く!?
そしてクソ生意気な小娘?そんな風に思っていたのか!?沢山おもしろい話をしてくれたと思っていたのは私だけだったのか!?
「ローゼリア家、濃いな。」
クララがボソッと呟く。
「いえ、その、たまたま志願したのが、こんな変な奴ばかりで、他の人達はもっとマシですから!」
ロナが顔を真っ赤にしながらクララに言い訳をする。私も昔はそれを普通に思っていたから気づかなかった。
大人になり、離れてみるとその異常性がよく分かる、コイツらはやっぱ変だ普通じゃない。
ようやくオッサン達が落ち着いてきたので、ベベルがこの後の行動の話をする。
「それでは、お話をさせていただきます。これよりアイラス陛下と旦那様、そして元軍閥長のハイド卿の御三方が正面より王宮へ向かわれます。おそらくそれで正面は大騒ぎになるでしょう。」
おお、これはつまり陽動作戦って奴だ!!
「おそらくディランド=シャフタール将軍を含め、軍人達はそちらに注目がいくはずです。今まで静観していたアイラス陛下とローゼリア侯爵が共に行動しているのです、おそらく現国王グラン陛下もそちらに向かうはずです。その騒ぎに乗じて我々は隠し通路より王宮に潜入、王妃に接触しようという算段です。」
凄い、滅茶苦茶本格的だ!私のような素人では考えつかない作戦だ。
「本当はもうひとつ陽動が欲しいが、陛下や旦那様を囮にするのだから無理は言えんな。」
バレリーが作戦を考えたの?凄い!カッコいいぞ!
「問題があるとすれば、ディランド将軍の裏をかけるかどうかですね。バランさんなら大体の相手なら勝てそうだが、」
バレリーが話を振る、するとバランは首を横に振る。
「いや、ディランド=シャフタールという男は相当にヤバいらしいぞ。噂に聞いたのだが、数年前に人攫いの闇組織20数名を1人で殲滅させたらしい、その中にはかなりの手練れがいたと聞くぞ。」
珍しくバランが弱気だ。私としてはバランが負けるのなんて想像が出来ない、商業施設で見たディランド将軍は体格は普通で筋肉ムキムキではなかった、バランが負けているとしたら顔だけだと思うのだが。
さらにベベルが手帳を開いて不安を煽るような情報を話し出す。
「私の調べでは、昨年の傭兵部隊「赫の蠍」を殲滅させた時の指揮もディランド将軍となってます。ゲリラ戦が得意な相手に大胆にも奇襲を仕掛けて勝利したと聞きました。」
・・・メダリアに引きこもっていたから全然世間に疎くなってしまった。そんな事があったなんて知らなかったよ。
「冷静沈着かつ大胆不敵、頭がキレて天下無双の強さを誇る、若手ながらすでにカリスマ的な存在です。」
ベベルがディランド将軍の武勇伝を語り終える、そんな超人的なヒーローがなんで王妃と一緒にいるんだ?
そんな人が本気になれば国なんて簡単に乗っ取れるんじゃないか。




