29.ゲームの世界?
王妃フランシソアを殺して欲しい・・・
自分を殺して欲しいと頭を下げている。ここまで覚悟を決めていたとは思わなかった。
「・・・殺して欲しいとは暴論であるな。我々に手を汚せということかな?」
お父様が少しキツめの言葉を投げかけて来る。
「いえ、その、あの、」
思った反応とは違うのかフランシソアは狼狽えてしまう。
「キシリアナを連れて来てくれた人を殺せなどと言わないでおくれ。フランシソアと呼べば良いのか?君のおかげでキシリアナと会う事が出来た、我々がその恩のある人を殺すなど出来ると思うかい?」
優しく諭すようにお父様の言葉が続く。
「今の会話で、君が真っ当な思考の持ち主であり、良き人であることも計り知れる。真っ当な良き人だけが苦しむ結末はあまりに不条理だ、例え上手くいかなくても、何とか元に戻る方法を共に探すことを約束するよ」
ヤバイ、お父様が滅茶苦茶にカッコ良すぎる。隣に座るお母様の目がハートになっている。
「・・・すいません、ごめんなさい。ありがとうございます」
溜まっていた感情が決壊したようだ、頭を下げた状態ですすり泣き、感謝と謝罪の言葉を繰り返している。
変わるか?
「・・・うん お願い」
私だけに聞こえる小さな声でお願いされる。そのまま意識が失われるような感覚に再び襲われ、現実の世界に連れ戻されていく。
「ふう、ありがとうございますお父様」
私に入れ替わったのが分かったのか、周囲の空気が重たい。
「・・・え?キシリアナ?」
「戻ったの?」
お父様とお母様が私を変な目で見ている。
「え?はい。元に戻りました・・・けど、」
状況が読めないのでヨヒムを見る、すると大きな大きなため息を吐かれてしまった。
「さっきまで泣いていた奴が、一瞬でケロッと元通りになるのを異常と思わない方がおかしい」
ああ、どうやら私も普通の感覚が無くなっていたようだ。
「しかし、もし今のが本物のフランシソアならば、今の王妃の中にいるのは何者なんだ?魔女というのならそれはそれで納得できるが話が突飛すぎる。いったいどこから来て目的は何なのだ?世界を支配でもしたいのか?」
前王様が深く考えむ、そう言えば王妃の中の女、なんて言う名前だっけ?
(名前はチヒロよ、なんて言ってたかな、確かゲームの世界そのまんまだって言ってた)
ゲームの世界?どう言う事だ?本当に訳の分からない言葉が次々に出てくる。
いや、要するにこの世界の人ではないということか?つまり侵略者とか?本物の魔女とか?別世界のから来た悪魔とか?
・・・ってそんな訳ないか。
「王妃の中に入っている魔女はチヒロという名前みたいです、王妃の前でその名前を呼んで反応があれば確定という事で良いと思います。それと、そのチヒロという女はこの世界の人間ではないとフランシソア様は言ってます」
私の言葉にみんなが理解に苦しんでいる。この世界の人間ではないと言われ、はいそうですかと誰も納得できないだろう。
こればっかりは想像する事しか出来ない、取り敢えずは現実的な話をしよう。
「それで、王宮に入る事は可能なのでしょうか?」
私にとって一番の懸念とも言える問題だ。今の王城ははっきり言って、私が婚約者だった頃とは全然勝手が違うだろう。
「実は私達も最近は王宮に足を踏み入れていないのだ。王族専用の隠し通路があるから潜入する方法は問題ないと思うが、中がどうなっているかは分からない」
前王様が苦々しく現状を教えてくれる。
「現状としては、王妃が現在王宮で暮らしており、どうやら軍閥の人間と与しているらしい。そして問題は陛下です、噂ですがどこぞの娘と懇ろになっているとの話です。その娘と離宮に一緒にいるようですが、それがかなりの懸念材料です」
お父様の話を聞くと前王様夫妻は初耳だったようで2人共青ざめている。
「その娘というのは身元は分かるのですか?」
前王妃様が泣きそうな顔でお父様に聞いてくる。
「いいえ、我々も調べているのですが、離宮から出て来ないので出自等は憶測ではありますが、どうやら王宮に外部給仕で来ていた者ではないかとの話です」
ベベルが手帳を見ながら調査した結果を報告してくれる。
「外部給仕?身元はしっかりしているのか?」
お父様の質問にベベルは頷く。
「グラン陛下はほとんど離宮から出てきません、なので手を出す事ができる女性は限られてます。王宮の従女は顔と身元がしっかり割れています、名簿と照会して誰一人として欠けている者はいません。逆に外部給仕は身分証会はしますが、認可が下りれば出入りが可能であります。逆に言うと最初の身分証会で身元が不透明な者は弾かれるはずです、なのでおそらく大丈夫だとは思われます」
外部給仕か、何か専門の職人か何かかな?確かドレスの縫い子や菓子職人の事だよね。
「もし、フランシソア様が元に戻れた場合、グラン陛下との離縁は可能なのでしょうか?二人の関係はすでに破綻しているようですが」
国王なら側室がいても問題ないけど、本人にその気がなければ離縁できるよね?
「全くの別人なのですから問題ないでしょう、陛下もフランシソア様に縋ることも無いと思います、逆に離縁したがっているかもしれません。双方の同意があれば特に障害はないと思われます」
ベベルが楽観視している。
「甘いわよベベル、国王様なら側室がいても問題ないのよ、体裁のためにフランシソア様を利用する可能もあるでしょ?表面上は夫婦のまま離婚しないで、愛する女性と真の愛を育むなんて選択肢を選ぶ可能性があるでしょ?」
あまり考えたくないけど、可能性はゼロではないはずだ。
「・・・大丈夫、もうグランには国王の座を降りてもらうよ」
・・・前王様が唇を噛んで決意を吐露した。




