26.結局誰も幸せにならなかった。
「アーレイト、王城の方はどうなのだ?王妃に接近できる余地はあるのか?」
お父様の質問にお兄様が思案顔だ、
「まずは現状を把握しましょう。陛下は現在王宮にはほぼ帰ってません。離宮の方で噂の街娘と一緒にいるようで、公共の場にほとんど出てきません」
おいおい、国王が引きこもってどうするんだよ!
「あの、お兄様。王妃様にはグラン様含めて5人の男性がいましたよね?どうなったのですか?」
あの後、私の幼馴染はいったいどうなったのか、少しは気になる。
「うん、まあ・・・あの者どもの事を聞きたいか」
歯切れが悪いと言うか、あまり良い顔をしていないな。
「ゴホン、あー、私が話そう」
お父様が咳払いを一回して、その後の話をしてくれた。
まず私の幼馴染のミシェイル=デルタ公爵子息だ。
父親同士も幼馴染同士で親友関係だった、そのデルタ卿が私の死を知ってとうとう怒りが大爆発したらしい、ミシェイルは主犯格の1人であった容疑もあって攫うように連れ戻されて現在はデルタ公爵領の僻地で下働きをさせているらしい。デルタ卿曰く人の道を踏み外したクズと断罪し、親子の縁を切ったとお父様に頭を下げに来たらしい。
・・・見事に転落してしまったのか。
次も私の幼馴染のベルトン伯爵子息のサイス=ベルトンだ。彼は嫡男であったが廃嫡され、弟が家督を継ぐらしい。こちらも自領に連れ戻されてほぼ幽閉されているという話だ。
王妃に御執心だった他の貴族子息も見事に転落したようで、追放されたり養子に出されてしまったらしい。
別にざまあみろとは思わないけど、誰も幸せになっていないなあ。
私も転落したけど、メダリアでヨヒムやクララと出会いメダリアの街の人々に受け入れられたのが、どれだけ幸せなんだと改めて思い知った。
「つまり障害はディランド=シャフタール将軍だけだな、他に軍閥の人間はいるのか?」
お父様の質問にベベルが手帳を取り出す。
「ディランド=シャフタール将軍は軍閥の新進気鋭の若手リーダーです。将軍のカリスマ性に魅入られた若者達が付き従っているようです。さすがにクーデターを企てているという噂は出てませんね」
それは今のところだろう、もしグラン陛下と恋人だという女性との間に子供が出来たら容赦なく行動に移しそうだ。
「ギルバルト様、やはりアイラス様達にご協力を仰ぎましょう。あれだけの方が私達に頭を下げて謝ったのですよ?私はキシリアナが生きている事だけでも知らせてあげたいのです」
お母様がここで口を開く。前国王様と前王妃様に私の生存を知らせたいらしい、私の事で気に病んでいたと聞くので少しでも楽にさせてあげたいようだ。
「確かに、あのお二方なら口も固くて信頼もおける。王宮へ入る手筈もスムーズにいくが・・・」
お父様が私を見る、私の同意が必要だと思っているのだろうか。
私が婚約者に選ばれた時、前国王様には良くしてもらった。だけど前王妃様は・・・私に対して実は微妙な反応だった気がするけど大丈夫かな?まあ、会うのはこれで最後だと思うし、気に病んでいたのが楽になるというのなら会っても良い気がする。
「私に協力してくれる確約をしてくれるならお願いしたいと思います。だけど私は前王妃様にはあまり好かれてなかった気がしますけど」
私と前王妃様の関係を言うと全員がキョトンとされる。
「いえ、そんな事は無かったはずよ?貴女の死を知った時は泣き崩れて謝罪されたわよ?」
あれ?お母様の反応がおかしいぞ?そんな感じだったの?
「お前が自意識過剰なんじゃね?」
ヨヒムは酷い。
「嫁に舐められないために威嚇してたんじゃない?」
クララが久しぶりに毒を吐いてくれた、いつものテンションになってくれて良かった。
「あー、おそらくクララさんが正しい」
お兄様が変な事を言うからクララが素っ頓狂な顔をしているぞ。
「母上も同じ反応を私の妻アンネにしていたのを覚えてないのですか?アンネは嫌われていると感じて落ち込んでいましたよ?」
お母様は腕組みをして考え込むが首を傾げてしまう、全然身に覚えがないようだ。
つまり、お兄様が言いたいのは嫁姑の関係だからということか。まさか私も知らないうちに体験してとは思いもしなかった。
「まあ、嫌われていないのなら大丈夫なのかな?」
私が尋ねるとお父様は笑いながら頷く、前国王様と付き合いの長いお父様が言うのなら大丈夫だろう。
「アイラス陛下は王室の管理区で隠居なされている、今ならいつでも会ってくれるはず。マクドガル、使いの者を出してくれ」
マクドガル執事長に命令するとすぐに頭を下げて部屋を出て行く。
少々展開が速くて置いていかれそうだ。
「えっと、それで、私らはどうする?もう帰ってもいいのか?」
おい、ヨヒムが帰ろうとしてやがるぞ?
「何でだよ!ここまで来たなら最後まで付き合ってよ!!」
「いやいやいや、私ら場違い感が半端ないぞ!?どこまで連れて行く気だよ!!」
今さらビビらないでくれ。
「アンタは私の護衛も兼ねてんだよ、その立派な筋肉を今こそ使う時だろ!相手は軍人だよ?私なんて片手で捻られるよ?」
「私は至って普通の一般人だよ!こんな筋肉見せかけだよ」
「そんな戦士体型の一般人がいてたまるか!」
「ここにいるだろ!」
私達が下世話な口喧嘩を始める、その様子をみんなが生温かい目で見ている。
それに気づくと猛烈に恥ずかしくなってくる。ヨヒムも同様で周囲の空気に気づいて真っ赤になっている。
「病院では静かにしようね」
「そう・・・だね」
・・・少し遅かったようだ。
読んでいただきありがとうございます。
申し訳ありませんが、仕事が忙しくなってしまい、ここまでしか書けませんでした。
ただ精霊女王様の方は書けたのでそのまま投稿しようと思います。
次話はまた来週の土曜日に投稿したいと思います。




