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25. 大鷹の腕章

 しっかり考えて答えを出せか。


 ヨヒムの予想外な提案に戸惑いつつも、確かに焦って答えを出す必要も無い気がする。


「うん、分かっているよ。そのために王都まで来たんだし、こうして私が無事に生きている姿を見せる事も目的の1つだったからね」

 ここで何か言いたそうなお母様を制止し、お父様が私の肩を叩く、

「私達はキシリアナを見捨てたも同然だ、どうこう言える立場ではない。だから私達も君の選択を尊重するつもりだ、ただキシリアナという名の名誉を少しでも回復できるのなら、私達はそれだけで満足だ」

 困った、お父様まで優しすぎる。


「ま、まずはフランシソア様の事を考えましょう。昨日、運河沿いにある巨大複合商業施設に行った時に王妃を見かけたけどいつもあんな調子なのですか?」

 話題を変えたいと思い昨日の話をする、すると全員が苦々しい顔をしている。

「はあ、また買い物か本当に好きだな。いったい国費を個人でどれだけ浪費するつもりか」

 お兄様が大きなため息を吐く。

「確かメダリアに商船団が来ていたので、舶来品目的でしょうね」

 ベベルが補足する、商船団が来ていたのは私達も知っている。おそらく王都のバイヤーがメダリアに買い付けに来て、商品が売り場に出るのが昨日くらいになるのだろう。

「何やら腕に大鷹の腕章をつけていた方と一緒にいましたよ?護衛に軍閥の偉い人ですか?」

 護衛としては少々贅沢な気がするけど。

「確か将軍とか野次馬が言ってたよな?」

 ヨヒムがあの時の事を思い出すように口にする。


「将軍だと?」

「父上、噂は本当のようですね」


 お父様とお兄様が深刻そうな顔をしている。いったい何があったのだろうか?私が不思議そうな顔をしていると気づいたのか説明してくれる。

「王妃の新しい男という噂されているのが軍閥幹部のディランド=シャフタール将軍なんだ」

 やはりあの横にいたのは軍閥のお偉い人だったか。

「しかし不味いな、はっきり言ってグラン陛下の人望は地に落ちていると言っても過言ではない。もし軍が王妃側について内紛が起きたら諸貴族に呼びかけても、彼らが積極的に動くとは到底思えない」

 以前ベベルが前国王様が謝罪行脚をしたと言っていたな。まあ、グラン様に関しては自業自得とも思えるけど・・・


「・・・グラン陛下はそこまでなのですか?私と婚約した時はとても聡明で人望も厚かったのに」

 お兄様が残念そうに首を横に振る、どうやら本当にあの頃のグラン様の面影はもうないようだ。

「最近の陛下は正直言って危険だ、どこかの街娘に入れ上げているともっぱらの噂だ」


 おいおい、街娘って、本格的にこの国は不味いんじゃないのか?貴族社会に平民が入っていったら周囲の反発が物凄いことになるぞ。


「私はてっきり前国王様か前王妃様が、お相手の方との縁を内密に取り持ったのかと思いました」

 会った事があるから知っているが、お二方共に人望があり聡明な方だったはず。

 すると今度はお父様が首を横に振る。そう言えば前国王様と仲がとても良かったな。

「前国王アイラス陛下の声に全くもって耳を貸さないのだ、キシリアナの件も含めて幾度となく苦言を呈していたが頑なに拒絶している。それに今さらグラン陛下の妻となりたいという貴族令嬢がいないのも現状だ」


 前国王様が私のことも・・・


「その事なんだが、実は若い貴族諸侯の間で王侯親族のヘンリー公爵家の次男を前国王の養子にし、グラン陛下を排除しようという動きがあるらしい。私にも協力を願われたが、妹のキシリアナの件もあり(こじ)れる可能性が高いから断ってたんだ」

 お兄様の言葉にお父様がとても驚いている。どうやら初耳だったらしくお兄様が後で詳しく話すと言って(なだ)めている。


 そしてしても参ったな、この国が内紛寸前にまでなっていたとは。


「・・・キシリアナはそのままメダリアにいた方が安全なんじゃないか?」

 さっきまでの弱りきっていたはずのお祖父様が一変してしまった、かつてのキレ者の大貴族だった頃の顔に戻っている。

「確かに自治都市なら貴族や軍は介入出来ない。このまま死んだことにしておいた方が都合が良い気がする」

 お祖父様の意見に皆が賛同する。おや、私はこのまま平民としてメダリアで生きていけるのか?

 そしてクララの表情が一気に明るくなっていく、私がクララにこんなに好かれているとは思いもしなかった。


「あの、もしフランシソア様が元に戻ったらどうなりますか?」

 ここに来た1番の目的を忘れそうになる。まあ、指輪だけの問題ではなくなってきた気がするけど。

「問題はディランド=シャフタール将軍だろうな。彼が本気で王妃に恋慕しているのならややこしい話になる。逆に魔女により心を操られているというなら簡単な話になり、内乱は回避される道が見えるな」


・・・やばい、魔女というのは咄嗟の嘘だったんだけど。


(キア、魔女は嘘だけど魔法は本当かもしれないよ?)

 え?どう言う事?

(なんかチート能力キター!とか訳分からない事を言っていたの。あの女、私以上に私の事を知っているみたいなの)


 くそ!あの時、詐欺神に色々と聞いておけば良かった。

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