24.良き出会い。
「どうしても我慢出来ずに来てしまった」
お父様が申し訳なさげに謝って来る。こんな所まで来て、公務は大丈夫なのだろうか?
改めてお父様を見る。とても大柄だと思っていたが、やはり大きい。私を抱きしめる力も半端なかった。
そして改めてお母様を見る。大分痩せてしまい、言い方は悪いが老け込んでしまった気がする。とても苦労をかけてしまった・・・
「アーレイトも後で来ると言っていた」
お兄様も来るのか、やはり家族と再会できるのは嬉しいものだ。
「・・・それでベベルから聞いた話は本当なのか?」
ここでお父様が真面目な顔になり、ローゼリア侯爵家当主の顔に戻る。
「はい、本物のフランシソア様はこの指輪の中にいます。確証はありませんが王妃様にこの指輪をはめれば元のフランシソア様に戻るはずです」
私の言葉に訝しんでいるが、信じてもらう事しか私には出来ない。
「ベベルの推理が正解であったようだな」
お祖父様がベッドから起き上がり口髭を触っている、何だろう?さっきより元気になっている気がするけど。
「結局はその指輪を王妃にはめてみれば答えが出るのでしょ?ならやってみればいいじゃない?」
お母様がとりあえず試してみよう的な発言をする、この辺りの性格は変わっていないようだ。
コンコン
「失礼します。アーレイト様がお越しです」
ベベルが部屋に入ってきた。そしてお兄様を招き入れる。
久しぶりに会ったお兄様は精悍な男性な顔立ちになっており、昔のような中性的な美男子の面影は無くなっていた。
「キシリアナ」
私は名を呼ばれ、椅子から立ち上がり深く頭を下げる。
思えばお兄様にはとても迷惑をかけてしまった。私が失敗したせいで仲の良かった陛下の関係を壊してしまい、尻拭いまでさせてしまった。
すると私の頭に手をかけると髪をぐしゃぐしゃにする。驚いて顔を上げると想像以上の笑顔を私に向ける。
「ふふふ、今更だな」
再び髪をぐしゃぐしゃにされる、
「よく、無事に生きていた」
お兄様は涙ではなく笑顔の再会を望んでいるようだ、私が最初に謝罪しようとしたのを拒むように明るく努めている。
「実は先に外の2人に挨拶をしてきた、良き出会いがあったのだな。あの2人と話した後だから、こういった再会で行こうと決めたんだ」
ヨヒムとクララに先に会っていたのか!?アイツら変な事を吹き込んでないだろうな!?
「確か命の恩人ですってね!私からも礼が言いたいわ!」
お母様まで身を乗り出してくる。マクドガル執事長がベベルに視線を送るとすぐに部屋から出て行く、2人を呼びに行ったのだろう。
少し待っているとヨヒムとクララが入ってくる。侯爵一家が全員揃っており2人は動揺を隠せない。
「娘を助けてくれてありがとう」
お母様が2人に対して礼を言う、突然の出来事に見るからにパニックっているのが面白い。
「私からも礼を言わせてくれ、本当に感謝する」
まさかのお父様まで参戦してくる、2人の顔色が真っ青になっていく。
「儂からも」
お祖父様が立とうとするので全力で止める、気力があっても身体はついていけないよ。
「い、いえ、その、私はキア、違っ、えっとキシリアナ 様?が」
言い淀んでいるヨヒム、ここは私もちゃんと自己主張しておかないといけない。
「ヨヒム、キアでお願い。私はもう貴族には戻れないわ」
私の言葉が意外だったのかヨヒムは驚いた表情をしている。
「・・・やっぱり、もう貴族に戻るつもりはないのですね」
お母様の悲しそうな声に心が揺れ動く。
「あー、それなんだけどさ、キア。それはゆっくり考えた方がいいんじゃね?」
ヨヒムが頭を掻きながら言う、隣に立つクララは驚き不安そうな表情をしている。
「まあ、付き合いが長いからキアの気持ちは何となくだけど分かるよ。だけどさ、家族は家族なんだから大切にしな、私やクララなんかもう親と会えないからそういった事をもうやれないから、アンタまで私らと同じになる事はないよ」
そう言えばヨヒムの親は海難事故で亡くなったと聞いた、親が唯一残した財産の家をお店に改築して酒場を開いたと聞いている。
クララも親が売った奉公先から逃げ出したんだからもう会う事は出来ない・・・
「キアが私やクララ、メダリアの街の奴らを好きなのは知っているから、どちらかを選ぶとかは難しいのは分かるけど、よーく考えて答えを出しなって。じゃないと清算の意味ないぞ。お前もそう思うだろ?クララ」
「え?う、うん。そう・・・だね」
あからさまに表情が沈んでしまう。本当に可愛い妹分だよ。
「それから、まあ、メダリアの街の名誉のために言わせてもらうと、ベベルさんに話したキアの暗殺の件は、実は嘘なんですわ、本当に申し訳ない」
突然ヨヒムが頭を下げる。皆が騒つきはじめる、どうやら本当の事を言うようだ。
「夜の海に身投げしようとしたキアを私が偶然見つけて止めようとしたら、もつれて一緒に海に落ちてしまいました。彼女の手荷物が海に流されたのはそのせいなんです」
私自身は別に身投げしようとは思ってなかったが、そう見える場面だと誰でも思うわ。
「・・・そうか。そうだったのか」
お父様は身投げという言葉に非常にショックを受けているようだ。
「本当に・・・何と礼を言えばよいのか、」
お母様は目に涙をいっぱい溜めている。
「ただ、それからのキアの頑張りをずっと見てきましたし、今では誰からも好かれるメダリアの街の一員です。私達としてはこれでお別れなのは惜しい気持ちはありますが、決めるのはキアなので彼女の意志を尊重したいと思います。クララもいいな?」
クララは泣きそうになっているんだけど?いいの?
読んでいただきありがとうございました。
次話の投稿は土曜日の予定です。




