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15.過去の清算

 詐欺神が言っていた()()()()とはこの事だったのだろうか?

 そんな事を考えながら涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を洗う。


 久しぶりに大泣きしたからスッキリとした気分だ、ストレス発散になると聞いていたが本当のようだ。


「久しぶりの大泣きだな?ここに初めて来た時に戻ったみたいだったぞ?」

 顔を洗って戻ってくるとヨヒムが笑顔で私をからかう。一方のクララはまだ心配そうな顔をしている。

「アイツらは帰らせたぞ」

「うん、ありがと!」


 こういう時のヨヒムの気遣いは本当にありがたい。


「まあ、私は売上げを補填してくれて謝礼金くれるって言うから付き合うのは良いけど、キアは大丈夫なんか?」

 おや、私は思ったより大切にされているみたいだ。

「うん、過去の清算はしなきゃね。10年も経っているから正直言って今更な気もするけど、私の行動が周囲の思惑から外れすぎたのが原因だからね」


 少し小腹が空いたので昼間に貰った砂糖菓子を取り出す。すぐに2人共お菓子に群がり沢山あったのがすぐに無くなってしまった。


「貴族に戻るっていう選択肢もあるだろ?」

「え?」


 ヨヒムの言葉にあからさまにクララが動揺している。コイツ、私の事が好きすぎだろ。

「うーん、今更戻ってもどこかの誰かと結婚させられるかもしれないから遠慮したいけど、実際はお祖父様やお母様の反応次第でどうなるかだなぁ」


 今の自分を見てどう思うかだな?

 見すぼらしい格好だと嘆かれるかもしれない、貧乏が染みついた姿に苦労をかけたと謝られるかもしれない。

 見栄や外聞が大切な貴族とは正反対な人生を歩んできたから、今さら貴族に戻れというのはキツい。こればっかりは出たとこ勝負だと思っているし、もしかしたら自分に選択肢はないかもしれない。


「何か、思ったより冷静なんだね?」

 ふとクララが私に視線を向ける。

 冷静か?冷静ではないと思うけど、月日を重ねて肝は据わったとは思う。

「何でだろうな、過去を清算しようと思うと、腹をくくるしかないからね。間違いなく平穏無事には終わらないと想像できるからじゃない?」

 クララは納得したような複雑な顔をしている。

「ところでアンタ、本当に休んでいいのか?苦労して手に入れた仕事なんだぞ?クビにならないだろうな?」

 いきなり数日も休むって、上司からの心証が悪くならないか?


「大丈夫でしょ、無遅刻無欠勤なんだから少しぐらい無理言っても・・・それにもう会えなくなるかもしれないし・・・」


「ん?最後なんて?」

 しりつぼみに声が小さくなり、上手く聞き取れなかった。

「・・・何でもない。もう寝る・・明日朝1番で休暇願い出してくるからもう寝る」

 そう言うと自室のある二階へ上がっていった。


「私は思ってた以上に好かれていたみたいだ」

「そうだな。アイツはお前のこと大好きだからな」

 ツンデレは本当に面倒臭い、周囲から丸分かりなのに本人は全然気づいていない。


「ほら、オゴリだ」

 ヨヒムが上等な果実酒を出してくれた。

「ふふふ、気前がいいじゃん。じゃあコレやるよ」

 そう言うと昼間に貰った魚の干物を渡す。中身を確認するとニヤニヤし始める。


「ははは、さすがにこれはもう食い飽きたわ」

「だな。あははは、」


 もうかれこれ10年来の付き合いだ、自然と笑いがこみ上げてくる。


「それで指輪を王妃にはめれるのか?」

 真面目なトーンになって尋ねてくる。

「うーん、まあ、ベベルが何か考えるでしょ?フランシソアが嫌われて孤立してんなら力づくでも出来るんじゃない?」

 私もやられて身に染みているけど、孤立した状態で力でねじ伏せられると抵抗なんて全然出来ないし、言われた通りにする事しか出来なかった。

「ははは、やり返すチャンスってわけか」

 そう言われると少し抵抗がある。

「別に恨んではないって。それに指輪の体なんだから傷つけたら可哀想でしょ。出来るだけ穏便に終わらせて欲しいわ」


(少しぐらい痛い目を合わせてもいいんじゃない?)


 自分の体なのに過激な奴だ。と言うか指輪は自分の体に戻る気になったのだろうか?

(・・・うん、本当は戻らなくてもいいけど、キアと一緒だよ、私もちゃんと過去を清算しなきゃいけないと思った。新しくスタートを切るにしても、チヒロって女と対峙しないといけないよね)

 良かった、大分前向きになってくれたようだ。


「・・・ふう、私はいったい何日臨時休業にすればいいんだ?」

 ここで頭を掻きながらヨヒムがボヤく。

「どうだろう?船なら半日で王都に着くし、すぐに終わらせて帰って来ればいいだろ?」

 出来る事なら私も早く終わらせて帰りたい、次の休日の教会学校には間に合わせたいけど・・・もしかすると次の教会学校は行けないかもしれない。明日教会に言いに行くか。


「あとウチらの身なりを何とかしなきゃな?」

 ふとヨヒムが自分の格好を見て苦笑いをしている。私も自分の格好を改めて見てみる。

「ははは、汚くはないけど、綺麗ではないな」

 つい笑いが込み上げてくる、今着ている服は教会学校の生徒のリンちゃんから貰ったお古だ。

「お前は昔着てたのでいいじゃん。かなり上等な服だったろ?」

「何言ってる、とっくの昔に着つぶしたわよ」

 着替えも海の藻屑になったからな、最初に着ていたドレスは一張羅として長年頑張ってくれたのを覚えている。


「せっかく大金貰ったから服も買っておくか。ヨヒム、明日の予定空けとけよ」

「あいよ!」




 *備考


 この世界における貨幣価値(円に換算)


 大金貨=10万円

 金貨=1万円

 大銀貨=5000円

 銀貨=1000円

 小銀貨=500円

 青銅貨=100円

 銅貨=10円

 小銅貨=1円


 たいして重要ではありませんが、参考程度にお願いします。



予約投稿時間を間違えてしまいました。

明日は19:00に投稿します。

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