俺と彼女と、つながるメール。
彼女の腕を掴んだまま、どんどん早足で歩いて行く。どんどんどんどん歩いているうちに、ハッと我に返った。
あ……俺………
彼女の腕をグッと掴んでいた事に気付き、パッと手を放す。
そして、少し深呼吸してからクルリと彼女の方を向いた。
「…どうしたんですか?早退してから随分時間が経っているのに。」
「ご…ごめんなさい。」
「居るなら居るって、一言メールでもくれたら…もっと急いでここまで来たのに…」
「え?」
「あ…」
思わず本音が出てしまった。すると彼女は
「そんなことで…メール…してもよかったの?」
そんな事を聞いてきた。
「…メールくらい別にいいですよ。俺だって一応心配してたんですから」
「心配…してくれてたんだ…」
「そりゃあ、心配しますよ。目の前で泣かれたりしたら…」
「ごめんなさい…。怒って…る?」
「いや、怒ってないですよ。」
「ほんと?」
「本当です。むしろ…怒っていると思われていたことが心外です。」
彼女はどうしてこんなに、俺が怒っていると思っていたのだろう?やっぱり俺が…仏頂面だからだろうか。少しそんなことを思う。
すると、
「えっごめん…なさい。」
彼女はまた、俺に謝った。
「あーもう、そんなに謝らないでください。俺は別に怒ってないんですから。」
「ごめ……じゃなくって。…やっぱり伊藤くん、だーーいすきっ」
「……っ/// いや、なぜそうなるんでしょう。」
…ま、また。だからどうして彼女はそんなことを…
「だって、だいすきって気持ちが溢れて来ちゃったんだもん」
「…なぜこんな仏頂面な俺なんか…」
「えー?そこが好きなんだよ。いつでも冷静で落ち着いているとこ、ステキだなってずっと思ってた。」
「…そ、そうですか。いや、でも俺、いつでも冷静なわけではないですよ。」
そう、少なくとも…彼女が早退してからの俺は冷静なんかじゃなかった。
すると彼女は
「ちょっとだけね、さっきの伊藤くん…意外だったよ。そして…カッコ良かった。」
可愛い笑顔でそう言った。
「あまり褒めないでください。桐谷さんと居たら…冷静さを失ってしまいそうです。」
「…一緒に居たくないってこと?」
「いや、そうじゃなくて…。桐谷さんを好きって事ですよ。好きか嫌いかで言ったら好き…昨日そう言ったでしょう?ちなみに、他の人は好きか嫌いかで言ったら “ふつう”です。」
あぁ、何言ってるんだ俺。完全にペースを見失っている。
「え?そんなこと言われたら…期待しちゃうよ?」
「それは困りますね。そんなことを言われて、後でやっぱり伊藤くんなんてつまんない…という理由で振られたら、俺がヘコみます。」
すると彼女はくすっと笑った。
「たぶん私、伊藤くんのこと、ずっと好きだよ。」
俺にとって、もったいなさすぎる彼女からの言葉。
「なぜそんなに俺を好きだと言えるんですか?仕事の会話くらいしかしたことないのに」
「わかんない。でも、自分からこんな風に人を好きになったのは、伊藤くんがはじめてなんだよ。会うたびに、好きだなぁって思うんだ。」
「はぁ…それは光栄です…。」
彼女のストレートな言葉は正直嬉しい。けれど…今までずっと ほどよく人と距離を保って生きてきた俺にとっては、どうしたらいいのかわからなくなってしまう。
ここで男らしいところを見せたいと思う自分もいるが、無理をして彼女に嫌われてしまうんではないか…そんな不安も否めない。
そんな男らしくないことを考えていると
「ねぇ、伊藤くん。つまんないことでも…メールしてもいい?」
彼女がそんなことを言い出した。
「つまらないこと…ですか。それは返信に悩んでしまいますね。」
「じゃあ…だめ?」
「いや、別にいいですよ。俺が返信に悩めばいいだけの話です。」
「悩んでくれるの?」
「頑張りましょう」
「えへへ。伊藤くん、頑張ってくれるんだ。私、もう“惚れてくれないの?”なんて言わない事にする。」
「どういう意味ですか?」
「私がゆっくり伊藤くんを好きになったように… 伊藤くんにも、私をゆっくり好きになってもらえたら…それが、いい。だから…私も、がんばる。」
「…そうですか。」
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彼女と、そんな会話をして その後別れた。
今日も“家まで送りましょうか?”と聞いたけど、“ううん。私が送り狼になっちゃいそうだから、いい。” そんなことを言われたから、
“それは嬉しいですね” なんて、そんな冗談を言いつつ、
彼女が、“いつか伊藤くんが私の彼氏になってくれた時に、家まで送って。” そう言ったから 今日も送らない事にした。
そうして、駅からそれぞれ別々に帰った。
家に帰ってから、ハッと気づく。
あ…彼女のアドレス聞くの、忘れた…
そしたら俺のケータイがピコンと鳴った。
“ただいまー。桐谷 梨奈です。電話番号は×××…登録よろしくね。”
華やかな彼女からの、意外にもシンプルなメール。
“おかえりなさい。登録しました。”
そして俺の、素っ気ないメール。
そして…
ピコンーーーー
この日から、
俺と彼女がメールし合う日々が始まったーーー
そしてその後
俺が桐谷さんを家まで送って行く日が訪れる。
けれどそれはまた、
別のお話ーーーーーー
ーFINー
最後まで読んでくださりありがとうございました(^^)
この後もこの2人のストーリーは続く予定ですが、ひとまずここで完結とさせていただきます。
というのも、この作品と同時進行で描いていたお話がありまして、作者的にはそっちの方がおもしろいかな?なんて、思っています。
近々そちらを連載予定なので、よろしければそちらの作品もお楽しみいただけたら嬉しいです(*^^*)
地味に目立たず…けれどやる時はやる、頼りになる伊藤くんと、一見華やかで高慢、けれど実は素直で純粋な女の子…そんな2人の恋のお話として描かせていただいたこの作品。
桐谷さんのキャラ…うまく伝わっているかな…ちょっと難しかったです。
よかったら、一言感想や評価など残していってくださいね。
ありがとうございました(^^)
ー心花ー




