ナンパと、俺のアドレス。
…なんなんだろう。どうして突然?なんとなくモヤモヤと考えつつ、本屋に寄る用事を思い出し、少し歩いた道をまた戻る。
すると…
桐谷さんが男に絡まれていた。
「なぁ、ねーちゃん、俺と茶ーいかへんか?」
…酔っぱらいか?今どき“茶ーいかへんか?”はないだろう。
そう思いつつ
「いっ行きませんっ」
その男を断る桐谷さん。しかし
「あ?ねーちゃん、ちょっと可愛いからってそれはないやろー」
男に言いがかりをつけられはじめた。周りの通行人も、それを見ているが何もしない。
…仕方がない。
「あーお兄さん、僕とお茶行きましょうか。いいお店知ってるんですよ。」
俺は男に声をかけた。すると
「あ?…んだよ。メンドクセーのが出てきたな。男と茶ー行く趣味はねーよ。」
そう言って男は案外あっさりと消えて行った。
「…あ、ありがと…」
うつむきながら小声で俺に礼を言う彼女。
「いや、それより…大丈夫ですか?」
彼女がなんとなく元気がなくなっていたのでそう声を掛けた。けれど。
「うん。大丈夫。慣れてるから…」
…慣れてる?あぁ、そうか…こういうことがよくあるんだな…そう思った。
そして、彼女の元気のなさが気になったから
「家まで…送りましょうか?」
そう聞いたのだけど。
「ううん。大丈夫。伊藤くん疲れてるって言ってたし、帰ってゆっくりして?明日会えなかったらさみしいから。」
そんなことを言い出した。…確かに、家まで送る、というのもやり過ぎだろうか。
「あ…じゃあ、何かあったら連絡してください。何もないのが1番だけど…」
そう言って、俺の連絡先を紙に書いて渡した。
すると、彼女も少し笑って
「うん。ありがとっ」
そう言って別れた…。
彼女と別れて家路につく。
…心配だったからケータイ教えたけど…あれじゃ俺がナンパみたいだったか?いや、そんなことはないか。
それより、彼女はなぜ俺を好きだなんて言い出したんだろう。だけど仮に、本当に俺を好きだとしたら…ケータイ教えられたんだから連絡してくるかな…
そんなことをモヤモヤと考えていたけれど、その日、彼女からの連絡はなかった…。




