妖精を揚げてはならない。騒がしいけど。
記憶の中のグルメ旅、第2弾でございます。例によって妖精に旨かった記憶を食われまくっておりますが、ここは随分行ったところなので、でもなあ、また食いたいな。この店以上は見つかっていません。宮城県に限らず、何処のブランド豚も美味しいですが、店主の腕はそれを凌駕するかも。
さて今回は、宮城県は岩沼市で、おそらく全国的にも名前をあげていた超有名店、とんかつふじさんだ。今でも国道4号線沿いに建物だけは残っているけれど、ここが閉店したと知った時は、真面目にどこに投書しようと思ったくらいだ。ここの出身であるとんかつ屋さんは、支店としておとなり亘理町でおととしぐらいまではやってたんだけど、ここも閉店してしまって残念な事この上ない。
二ーナ「ええっ、じゃあここも食べられないの?ひどいじゃない?」
だから、思い出の中の話だって言ってるだろう。前回はその貴重な思い出を食いやがって。こんなやくざな妖精だとわかっていたら、脳内とは言え連れ歩くことは無かったよ。
二ーナ「何よ、それ!私がツッコミ入れてなきゃ、思い出すものも思い出せない癖に。聞いてあげてるだけ光栄だと思いなさい。」
ちっ、口だけは達者でやんの。でも、まあ、一理くらいはあるのか?・・・まあそれはともかく、岩沼市のとんかつふじに、今回はご案内。
二ーナ「ん、んんん?なんかクチャいよ。これ、何の匂い?」
ああ、この匂いな。俺がここを知った時には、もうこんなじゃ無かったんだが、昔岩沼と言えばな、地場の製紙工場が垂れ流すこの臭いがつきものだったんだよ。1990年ごろには環境基準やらなにやらの見直しで、処理技術の向上なんかもあって、今やきれいなものだけど、どうしてもな。記憶の中となるとそれがついつい出てきてしまうんだよ。
二ーナ「本当?この染みついた臭いは、実はあんたの心のよどんだ匂いなんじゃないの?」
酷いい言われようだ。そんなオッサンの脳内妖精が言うこっちゃないな。誰の心がよどんでるってんだ。お前、実はよどみから生まれた・・・あ、いや、何でハリセンなんて持ってるんだよ?
ニーナ「当然、失礼なことを言うおっさんをしばくためだよ。こいつでしばかれたくなかったら、大人しく記憶を差し出しな!」
う~ん、やっぱり色々考え直さんと。想像の匂いも何とか抑えて。・・・うん、これならいいか。さて、気を取り直して。東北地方の大動脈、国道4号線沿い、岩沼市の工業地帯にあるここは、県南から北上する場合、もう数キロで国道6号線と合流する地点のちょっと前の右側、阿武隈川に近い方にあって、いつ行っても満員、入り口から入ると左奥に厨房と帳場があって、いつもここのおばあちゃん?が元気に挨拶してくれたもんさ。座席は国道沿いに座敷があって、そこに10人ぐらいは座れるほか、テーブル席が、あれ、いくつだった?まあ4人掛けぐらいのテーブル席が6つくらいはあったんだったっけな?
ニーナ「何、もう覚えてないの?なっさけない。ホントにもう年寄りね。」
しかたねえだろ、なんせもう10年は食ってないんだぞ。支店の方も行ったけど、やっぱり本店と較べれば一味違ったんだ。いつも行くと座る席は決まってたし。上かつライス一択。勿論スペシャルも食ったけど、あと一本ヒレカツな。ここで初めて一本ひれなんて食ったっけ。食うのにナイフが出てくるヤツだよ。スペシャルになるとロースのブロック肉を20分ぐらい揚げての提供だったから、アレをナイフとフォークで食ってたものさ。よくもあれだけの肉をしっかり中まで火を通して、それでも衣は、さすがに切る時剥がれはするけど、しっかりついているなんて代物出せたものだと、今でも感動する。おとなり福島県は、衣バリバリの揚げすぎ衣がトレードマークなのに。ここで衣がバリバリなんて思ったことないもんな。
ニーナ「どれどれ?んん、これはンまい。脂身とロース肉のコントラストがしっかりしているし、何このジューシーさ。口の中に上質な脂が溢れるよ。肉汁旨い。」
上かつライスは分厚いロース肉をさらりと上げて、5切れに切って揚げたてを出してくれる。ご主人はいつも厨房の中で、弟子たちと一緒に始終カツを揚げていて、それをおばあちゃんとかパート?の店員さんが持ってきてくれるのを待ってたもんだ。厨房の入り口あたりにメニューが掲げられていて、他にも普通のヒレかつライスやら並かつライスなんかもあって、一般の客はそういった普通サイズのも食ってたっけな。俺はいつでも、懐事情もあって上かつライス。時折五切れのかつのうちの一切れ全体が脂身だったこともあったけれど、そんな時でも、その脂身そのものが旨かったりする。脂身なのにくどくないし、揚げ具合そのものもいつも上々。付け合わせはいつも、どの皿もナポリタンとマカロニサラダとたっぷりのキャベツに練りからし。ソースは各テーブルにあって、当然かけ放題。そう言えばとんてきもあったっけな。支店の方のご主人の発案とかって、2度ばかり食ったけど、これも旨かった。分厚いジュ-シーな肉に絡むたれ。もう一度くらい食いたいと思った矢先に、いつものおばあさんが店から姿を消して、どうしたのかなと思った帰り際にふと店の二階の窓からのぞく安楽椅子に寝たきりだったような姿を見かけて寂しくなったものさ。それからしばらくしてだったっけな、店が閉店したのは。
ニーナ「ホント、寂しそうだね。あっ、挨拶してくれた。これも記憶?」
ああ、そうだよ。あんなに元気そうな人だったのに。そういやこの方に店の厨房前の冬場はストーブの横になる座席に案内してもらったんだった。それから寒くない日もずっとそこさ。心残りと言えば、メニューの中でとうとう大エビフライライスを食べずにいてしまった事さ。ここの大エビなら食っておくんだった。
ニーナ「何で食べなかったのよ。おっさんらしくもない。」
いや、だってさ、弟子もたくさんいて、岩沼じゃ敵なしのお店だったんだから、閉店するなんて思わないじゃないか。何時でも食えるなんて高をくくってたんだよ。当然、今でも後悔している。
ニーナ「あたりまえよ。おかげであたし食いっぱぐれよ。あーあ。食べたかったな、大エビ。」
なんだよ、記憶の中の喰えばいいんじゃないのか?
ニーナ「おっさんの食ったという記憶を食ってるんだから、仕方ないじゃない。見た目だけじゃお腹は膨れないのよ。」
いやいや、人の記憶で腹を膨らまそうだなんて、何て浅ましい奴なんだ。みろ、おかげで俺自身も腹が減ってきやがった。
ニーナ「おっさんは減量が必要でしょうが。今死なれちゃ困るのよ。まだあれも、ああこれもとんかつふじにはないんだからね。」
我儘なこと言ってやがる。でもそういえば、とんかつふじには宮城県内にまだ分店があったはずだ。以前古川からの帰りに、4号線の裏道を仙台方向に車で飛ばしていた時に、看板を見たことがあったぞ。寄んなかったけど。それと前に調べた時まだ関係店があるって話だったはずだけど。
ニーナ「確認したの?その情報。」
いや、仕事があったから後回しにしてたよ。それに最近同じ岩沼市の市役所前の道路向かいの奥まったところにふじのフレーバを感じさせる名店を見つけたからそこに行ってみるか?メニューは少し違うけど、付け合わせが似てたっけ。そこはカツカレーが旨いぞ。月末の方にサービスデーもあるし。肉も旨い。
ニーナ「じゃあそこに連れて行きなさいよ。あ、でも実店舗は無理か。今すぐ思い出になさい。」
やっぱり、すげえ我儘だ。ん、こら、頭に噛みつくな。
以前、職場の国鉄出身の方に、山手線沿いの豚ロース肉を低温でじっくり揚げるロースとんかつをごちそうになったことがあって、そこも当然美味しかったのだけれど、分厚い脂身もものともせず一気に揚げ切るとんかつは、まあ要するに、好物なのですよ。他にも実家の近くの町の某店も、今年閉店しちゃったから、俎上に上っちゃうな。なんて残念なというか、またトンカツかい。




