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妖精は、故郷を目指さない。どこに行ったやら。

もう駅前には何もありません。東北本線の駅でも一番寂れていると言っても過言ではないところです。そもそも本当にここ、市なんだろうか?学生すら姿を見ないな、朝と夕以外は。昼間は昔はご老人もあるいていたんだけどなあ、これが過疎ってものだな。店も無いし。

 前回、相馬市辺りで逃走?したニーナは、どこに行ったやら、しばらく記憶の中を探ってみても羽一枚見つかりはしない。どこかの異世界にでも取り込まれたか、まあ、何か食ってたらそのうち出て来るだろう。と言う訳で、今回も筋肉マニア?を捕まえてきた。

イーナ「何莫迦なことを仰っているのですか。ご自分の甲斐性のなさを棚に上げて。」

いやまて。何か失礼なことを言ってないかな?

イーナ「甲斐性なしでダメなら、そうですわね、女に逃げられた惨めな方、で宜しいのかしら。まあ、ピッタリな呼称です事。」

まて、それは酷くないか、脳内筋肉フェチが、そんな事を。

イーナ「いけなかったでしょうか?だとすると甲斐性なし確定ですわね。さあ、甲斐性なしさん、筋肉に乏しいあなた様でも、わたくしたちのご飯の素なのですから、きびきびと動く。せめてもわたくしの為に。」

しまった。何でこんなの呼んだんだろう。仕方ない、今回は恐らく一番古い記憶だ。宮城県は白石市の駅前通りの一番駅そばにあった、おでんの「一力」にご案内。今や建物すら残ってない、白石市では珍しく、名店と言えるお店だ。だからもうなくなったんだろうな。


 イーナ「引き戸を開けて中に入りますと、まあなんて良いおだしと醤油のかおり。食欲が刺激されますわ。」

そうだな、ここは、昔、と言っても戦後の話らしいが、白石駅の駅前あたりで屋台を引いていたご主人が、ホームグランドであった駅前の通りで開店した小料理屋で、店の入り口に厨房があって、その前ではいつも味染みおでんが煮えていたっけ。でも俺は、ここに来るといつも「ホタテのバター焼き定食」を食わせてもらっていたんだ。大抵ここには酒を飲んでいた親父を迎えに来るばかりで、いつか自分できてここで目いっぱいおでんを食ってやろうと思っていたんだ、けど。

イーナ「けど、ってことはまさか、例によって?」

そう。そうなる前に店が閉店してしまってな。それがあまりに悔しくて今でも性懲りもなく記憶の中にとどめているというわけだ。横にあったペットショップも懐かしいな。

イーナ「まさか・・・食べるんですの?こんな可愛いワンちゃんを?」

こらこら、何処の人でなしだ。猫は主食だが、犬はもらってくるオンリーだったぞ。

イーナ「猫さんは食べるんだ・・・・・・鬼!甲斐性なし!鬼豚‼‼」

何だ鬼豚って?見た目で決めるな。それに猫は主人みたいなものだぞ。機嫌を損ねた時の怖い事怖い事。

イーナ「あら、あなた様は猫以下だったのですね。メモメモ。」

やめんか。何で脳内設定にそこまで言われなきゃならん。ともかく、おでんについては、卵と大根、一部の練り物の記憶しかない・・・って、もう喰ってやがるのか。油断も隙もない。

イーナ「うん、いいおだし。おつゆの色からしてもっと味が濃いのかと思っていましたが、意外と薄口の上品なお味。これは、日本酒(おさけ)が進みますわね。こちらの、ホタテのバター焼きも美味しですわ。お味噌汁もいいけれど、このごはん。香の物があればいくらでも進みますわ。」

まあ、間違いなくここ白石では最上のごはんやだったからな。もう一件ちょい奥の方にもう一件美味しい肉メインの定食屋も、出来たことは出来たんだけど、ここも出来て程なく閉店したからなあ。ここの並びの肉屋さんの店名を冠したお店で、そこもずいぶん行ったものさ。あの頃は良かったな。ここの定食・おでんもそうだが、とにかく美味しい店が白石にもあったんだ、あったんだよ。信じられないけど。

イーナ「白石と言う町でしたら、温麺がありましたよね。そこはダメですの?」

前にニーナには言ったことがあるんだが、白石と言う所で美味しいものをお店で出しても周りに恨まれるだけで良い結果にならないのだ。後継店も出来ないし。元病院の前に出来たお好み焼き屋さんもなくなったしな。ほんと、何処で飯を食おう?

イーナ「伊達の方にでも行ったらいかがかしら?」

まあ、それしかないよな。実際、町だったころから保原とかの方が旨いものがあったしな。うん、そっちの方が食いしん坊妖精(ニーナ)も見つかるかもしれん。

イーナ「また、呼び出します?」

そうか、それを忘れていた。こら、痴呆じゃねえぞ。笑うんじゃない。

そう、それでも昔は店があったの。もう無いだけで。それじゃダメでしょう。ここより福島側か、いっそ岩沼より北なら、いや大河原より北か。だったらいくらでもあるのに。市内はダメだな。温麺(うーめん)ならそこそこ食えるけど、あれは家で食うものだ。

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