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雲が天高く俺の頭上に位置し、西に傾いた太陽がくっきりと見える。
いつもの何もかも飲み干してしまいそうな包容力のある青い空とは違い、朱に染める空は移り変わる色調の速さがとても儚いが、幻想的で美しく、見ていて飽きさせない。
そんな朱に照らされた草々も普段とは違った姿を見せ、雰囲気を作り出していた。
アレクサ草原には陽光を遮るものがなく、この場所は風景画を描くには絶好の場所であり、今の目の前に広がる光景は絵画から抜き出したような美しさがある。
様々な方向に目を向け変化する景色を楽しんだ。
そして完全に陽が落ち、月が東から昇ってくる。
辺りが一気に闇に沈んでいく。
俺はもともとキャンプすると決めていたアレクサ草原から少し離れた木の下へ移動し火を起こす。
暗闇に灯る一つの明かり。
周りに明かりなんてものはなく、ここだけが上空のもの以外で他のものを照らす光源となっていた。
これでは光に群がる虫の様に、敵が群がり俺らを襲ってくれと言っているようなものだった。
しかしそんなことが起こる可能性はほとんどない。
何故ならこの場には、魔物の頂点に君臨する二匹の魔獣が本来の姿形で顕現し、滲み出る禍々しいオーラを放っているのだから。
この二匹が放つ圧倒的なプレッシャーは相手が有能なほど有効だった。
己の姿を隠すか、逃げ惑っていた。
だが、そんなものたちがいる中で、実力も分からずに襲い掛かってくる馬鹿な奴らもいた。
これは今だけでなく、ここに移動している道中でも発生していた。
襲ってくる主な馬鹿はゴブリンだったため、一瞬で一蹴する。
ゴブリンたちは自分がすでに絶命していることすら気付かないままあの世へ旅立っていた。
それにしても遭遇率が高すぎるような気もする。
いくら繁殖能力が高いとしても出会い過ぎている。
群がってきたゴブリンを軽く蹴散らし、抱いた疑問をぶつける。
「なあ、山吹。ゴブリンが多い気がするんだが、気のせいか?」
「気のせいではなく、確かに多いと思います、レイ様」
「やっぱりそうか。まあ、そうだったとしても俺たちがゴブリン如きにどうこうされるなんて、まずないからな」
「その通りです。なのでレイ様。レイ様はお休みになってください。私と白藍でしっかりと見張ってますから」
「姉さんの言う通りです。主は寝ていてください」
「じゃあ、そうさせてもらうよ」
従魔二匹に勧められ、俺は眠りにつく。
草の上に布団なしの環境で寝るには少し寒い季節だが、焚火のおかげでその点はあまり気にすることはなかった。
少し離れたところで、馬鹿な発言をした白藍が山吹に制裁を下されているところが目に入る。
仲が良いなと微笑ましく見ながら、少しづつ意識を手放していった。
白い床がすぐ目の前に広がっていた。
そしてその白が色のついた何かの液体でどんどん紅に変化していく。
起き上がろうと試みるが、身体は言うことを聞かなかった。
騒々しい悲鳴がそこら中から響き耳に入ってくる。
そのうちの一つに神経が反応し目を向ける。
そこには流れるように美しい金色の髪を持つ少女が仰向けになっていた。
少女の側には見覚えのない男が少女を毒牙にかけようとしていた。
阻止しようと懸命に体を動かそうとするも、動いてくれる気配がない。
初めは抵抗が出来ていた少女だったが、刃物を体に刺し込まれ叫喚する。
それはとても聞いていられるものではなかった。
助けたい思いだけが先行するもどうすることもできなかった。
少女の体に何度も何度も何度も何度も何度も突き刺さる刃物。
その度に上がる悲鳴は回数を追うごとに小さくなり、最後には何も上がらなくなった。
少女を中心として出来上がった紅い水溜り。
それは勢いを失うことなく広がっていき俺のところまで届きそうだった。
この様子を見ることしかできなかった俺は、これが何なのか分からないまま何かに引っ張られるように暗闇に落ちていった。
がばっと起き上がる。
周りを見渡すが、そこには白い床などはなく、一面草に覆われた自然しか見当たらない。
息が少し荒れ、汗もいつも以上に掻いていた。
先程のが夢だと理解するも、あまりにも生々しく体験済みのような現実的過ぎた夢に薄ら寒気がする。
夜が明け、春の陽気が俺をやさしく包み込んでくれていたが、何か嫌な予感がして、全くそのぬくもりを感じることができなかった。
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