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三度目の正直を必ずこの手で  作者: 池春 藤斗


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クリックしていただきありがとうございます。

煌びやかな黒と金の門をくぐり広大な庭を一人で歩む。

門でも存在感が際立っていたが目の前にある家はそれに輪をかけて煌びやかだ。

豪華絢爛に彩られたそれは権力の象徴とも言える。

内部に飾られた装飾品はどれも繊細に作られており素人の目から見ても圧倒されるものがある。

豪邸。

そんな言葉では生ぬるいほどの世界が広がっていた。

掃除や何かを運んでいるメイドたちが脇により頭を恭しく下げてくるが無視して、邸宅内を迷いもせず進む。

ある一室の前で立ち止まり、ノックをして返事を待たず入り込む。

そこには一人の男が椅子に座り窓の外の風景を眺めていた。


「父上ただいま戻りました。成果は上々。誰一人文句を言わせないほどに終わらせてきました」

「そんなのは当たり前だ。すべてにおいて圧倒的な戦果を残し、近寄ることさえ憚る者でないとこの家には必要ない。そうだろう、特待生にも慣れない出来損ないの息子、ラグナよ」

「父上のおっしゃる通りです」


オークの集落を離れた後、インテンス家に戻り、父に報告していた。


俺はインテンス家の中でも優秀でインテンス家を継ぐ兄の筆頭武官として有望視されていた。

だが入学式の日で俺の立場が一変した。

インテンス家は負けることを許さない。

常に強者であり続けなければならない。

特に武力では顕著だ。

元はしがない平民だったらしい。

だが魔法に優れた初代が負け知らずの兵で次々に戦功を立て侯爵貴族にまで一代で登りつめた。

その後インテンス家は優良な魔法使いを輩出する家として知られていき、常勝無敗を名乗れるまでに実力を上げていった。

中には実力が伴わない者もいたがその者たちは皆淘汰され、家から追い出されインテンスの名を呼ぶことを禁じられた。

俺は追い出される一歩手前まで来ていた。

レイナルド・スミスディアのせいで。


「父上、かの者に不覚を取ったのは間違いありませんが今ならそんなことはありません」

「今ならだと……ふざけるな! いつ不覚を取っていいといった! 我が家は常勝でなければならん! しかも魔力暴走までして帰って来よって! 恥さらしにも程があるわ! お前のせいでインテンスの名がどれだけ傷を負ったか分かってるのか!」


回転式の椅子をこちらに向け怒鳴り散らす。

その目はとても鋭く、激しい剣幕に気圧される。

とても初老を迎え始めたとは思えない。

未だに滲み出る強者の雰囲気は恫喝するのに一役買い、後押ししているのもあるのだろう。


「運よく見逃してもらえていることをゆめゆめ忘れぬようにな」


鋭い眼光のまま釘を刺され退出を求められる。

今までこんな扱いを受けることはなかった。

すべてはレイナルド・スミスディアのせいだ。

憎しみが際限なく湧き出す。

ドアノブに手をかけ出ていこうとしたときに呼び止められる。


「そうそう一つ言うのを忘れていた。お前が無様に負けたレイナルド・スミスディアと一緒に住んでいる青い髪の女がいるんだが、以前長男の嫁に結婚の話を持ち掛けたのだが断れてな、実力を行使して捕まえようとしたがその前に逃げられてしまっている。まだインテンス家を拒んだお灸をすえてないんだ」


俺は無意識に口角を上げていた。

インテンス家に盾突くものはすべて表舞台から消えてもらっている。

男なら抹殺、女子供なら奴隷商人に売り払うという形で。

だからこそ未だにこの地位を確立できていると言ってもいいかもしれない。

逆らえばどうなるか目に見え他の貴族たちもどうなるか理解しているから。

理不尽な要求をされても従うしかない。

たとえ理不尽な要求をを成し遂げても報酬は難易度や損害に見合わないほどのものしかなく、失敗でもすれば責任を取らされ、娘を要求され引き渡すことになったり膨大な金額が請求されたりもする。

どちらに転んだとしても明るい未来などない。

このことについて王国も把握していた。

だがインテンス家は侯爵家であり、王国の貴重な戦力の提供先でもある。

その戦力もトップクラスの人材を用意してくれる。

軍事はインテンス家に。

そのような格言もできてしまうほど優秀なのだ。

ゆえに手を出すことができない。

他の貴族同様王家も喰われる可能性があるのだ。

実質この国を動かしているのは王家ではなく、インテンス家と言っても過言ではない。


「そうですか。心に留めておきます」


一度振り返りそう述べる。

今度こそドアノブに手を伸ばし部屋から出ていく。

出て行く者と残る者。

そのどちらも陰険な笑みを浮かべているのだった。


「楽しそうですな」

「そんなことはないさ。まあ若芽を摘むのは大事なことだからな」


扉が閉まると同時にかけられる声。

出入口は一つで窓もしっかりと閉まっている中突然現れる影。

それに驚く素振りすら見せず淡々と答える。


「今回はどうされますか?」

「そうだな、できるだけ例の物を揃えてくれ。代金は出来高だ。すぐにでも結果が出れば相場ではなくそれ相応を支払おう」

「かしこまりました。ではご期待に応えられるものを仕入れてきます」


そう言って影は忽然と姿を消す。

神出鬼没。

この言葉に相応しい影が去った後も変わらぬ笑顔で窓の外を見直すのであった。


最後まで読んでくださりありがとうございました。

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