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母親教師の授業も終わり、昼食を終え、今は家の庭で父さんに剣術の指導をしてもらっている。
指導と言っても型を教えてもらっているわけでない。
ひたすら模擬戦闘の繰り返し。
実戦あるのみ。
それが父さんの考え方だ。
父さんはどこかの道場へ入門し流派を治めたわけでなく、独自に動き方や間合いの取り方を研究し、道場破りばかりしていたそうだ。
それが功を奏し様々な技を吸収して、臨機応変に繰り出す手数の多さで剣聖までたどり着いたと言ってもいい。
そのためこのような指導になっている。
俺は今まで父さんに傷をつけたことがない。
当たり前なのかもしれないが、それが何よりも悔しい。
だからどんな時でも思考は止めない。
斜めに切下げ、切上げそして縦に木刀を振るう。
人の目は横の動きには強いが縦の動きには弱い。
誰かに教えてもらったわけでもないが、なぜだかなんとなく知っていた。
そのなんとなくの知識を活かして、あえて縦目の攻撃を連続で繰り出す。
いくら縦の動きに弱いとはいえ慣れれば意味はなくなる。
それが俺の狙いだった。
人間慣れというものは非常に怖いもので、急に物事が変わると反応できないことがある。
この知識もなぜだか頭にあった。
そんなよくわからない知識を使い、タイミングを見計らい突きを放つ。
上手くいったと感じた。
だが父さんは驚くどころか笑みを浮かべ、簡単に木刀を空へ弾き上げる。
「まだまだ甘いな」
「こっちは子供なんだから手加減してよ」
「そんなことを言うから強くならないんだ。まあさっきの考えは悪くない。もっと工夫しろ」
空から落ちてきた木刀を拾い直し、再び挑みかかる。
挑戦するたびに足を掬われ、体を叩かれ転倒させられる。
体には傷や土汚れがついていく。
それでも何度でも立ち向かう。
父さんにできたなら俺にもできるはず。
その執念だけで体を酷使する。
ものすごい向上心を持っていたとしてもやはり子供は子供。
限界はすぐに訪れる。
意識はしっかりしているがもう体が動かない。
庭の芝生の上に寝転がっていると、
「レイ君どこ? おやつ食べましょー」
母さんの声が聞こえる。
返事をする前に俺を見つけ、獲物を見つけた獅子のごとく駆け寄ってきた。
「レイ君大丈夫? 痛くない? つらくない?」
「これぐらい大丈夫だよ」
「そう、それならいいけど……けどね、万が一があるかもしれないからじっとしててね」
そう声をかけてくると俺に回復魔法をかけてくれる。
それはとても温かく安心を覚える。
先ほどのだるさも全く感じることなく起き上がる。
「ありがとう」
「レイ君、お礼なんていらないんだよ。これはお母さんとして当然のことなんだからー」
感謝を述べられたのがうれしかったのか俺に抱きつき頭を撫で始める。
このときも魔法同様俺には温かさで包まれているように感じたが父さんはそうではなさそうだった。
「で、レイ君があんなにボロボロになっていたのはどういうことなのかな、あなた?」
このときの母さんの表情は俺には見えなかったが、おそらく鬼の形相と言っても過言ではないのだろう。
父親の声がわずかに震えている。
「そ、それはレイを強くするために鍛えたからで……それにレイも逃げずに立ち向かってくるし指導者として最大限の指導を」
「たかがそんな理由で私の可愛い可愛いレイ君を傷づけたんですね?」
「それはいくら何でも甘やかしすぎでは?」
「傷づけたんですね?」
「……」
四の五の言わせない圧倒的な威圧感を放ち、父さんはなす術もなくただ俯くしかなかった。
俺はそんな会話を聞いてとても微笑ましかった。
このような日常がレイナルドはずっと続くと思っていたが、そのようなことはありえず必ず変化が起きる。
前世のことなど一切覚えていないゼロからの人生。
レイナルドには明るい時間がたくさん残されている。
これから幾度となく壁が立ちはだかる人生とは彼は全く知らないが、その残された時間を全力で走っていくための一歩を踏み出していた。
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