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三度目の正直を必ずこの手で  作者: 池春 藤斗


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クリックしていただきありがとうございます。

お待たせしました。ここから本編開始です。

目覚めると、若々しい男女が俺の顔を覗き込んでいた。

その男女に触ろうと手を伸ばすも空間を撫でるだけで一向に触れない。

そんな俺の行動が微笑ましいのか、二人は顔を見合わせ、にこりと笑い女の方が俺に手を伸ばし軽々と抱き寄せた。

そう抱き寄せたのだ。

俺は3度目の転生を果たし、生まれたてほやほやの赤ちゃんからスタートすることになった。

話を聞いていると目の前にいるのが俺の両親で、生まれて二日目ということだ。

言語も1度目2度目と同じ日本語みたいだから苦労することなく会話はできそうだ。

2度目の時とは違い一つだけホッとしたことがある。

それは体を乗っ取ったという可能性が極めて低いということだ。

極めて低いというだけでその可能性がないと言い切れないのが少し心苦しいが。

まあ昨日は生まれたばかりでずっと寝ていただろうし、生まれた時でも目を閉じていただろうから記憶がないのは当たり前かもしれない。

まあ何とか無事にやって行けそうだ。

それに何となくだが、今この意識がしっかりしているうちに俺の生き方を細胞の一つ一つまで記憶させていかなけらばならないと思った。

それはなぜかは分からない。

けどそうすべきだと思った。

だから俺は心の内で自分に言い聞かせた。

何度も何度も何度も。


『絶対に後悔だけはするな。どんな理不尽でも跳ね返せる力を手に入れろ』と。


そうしているうちに俺は底なし沼に落ちていくように意識を亡くしていった。



********************



この世に生を受けてから五年の月日が流れた。

俺は今五歳だ。

名はレイナルド・スミスディア。

黒髪黒目というこの付近では珍しい特徴を持ち、子供らしくないと言われる。

父さんの名はレオポルド・スミスディア。

母さんの名はラン・スミスディアだ。

両親も黒髪黒目と親子ともども目立っている。

まあそれは当然なわけで、俺の両親は駆け落ちをして見知らぬ人が住むこの村に移住してきたのだから。

ここはウィンディアという村で、西大陸の西側に位置する村で西の森を抜け町を越えると海が見えるが、ここからではそんなものは見えるわけもなく四方八方山や森しかない。

それゆえに過疎化が進み、年々平均年齢が上昇している。

なぜそのようなところに両親は移住を決めたのかとなるわけだが、極力自分たちの名が知れていないところという基準で決めたらしい。

何でもこの二人は東大陸では有名な二人で父さんは剣聖と呼ばれ、母さんは聖女と呼ばれるほどの回復魔法の使い手なのだそうだ。

そのためすぐに戦に駆り出され、落ち着いた生活ができなかったらしい。

そんな生活に嫌気がさした二人は勝手ながらも家を抜け出し二人でウィンディアにやってきたわけだ。

出会いは戦場で父さんの一目惚れらしい。

そこからの猛アタックでハートを射止めたと五歳の俺に自慢げに良く話しかけて来る。

五歳の俺に何を求めているのやらといつも聞きながらそう思っている。

それに物ごごろ着いた時から鮮明に覚えていることがある。

それは『絶対に後悔だけはするな。どんな理不尽でも跳ね返せる力を手に入れろ』という言葉だ。

その他は両親と遊んだり、稽古をつけてもらったりなど、とてもありきたりな五歳の思い出しかない。

だから俺はこんな言葉をどこで知ったのか不思議でならなかった。

両親にも一度聞いたことがあるが知らないと言わんばかりに笑い飛ばされた。

このもやもやを晴らしたくも俺にはそのような知識や力などない。

どちらも手に入れたとしても解決するかは分からない。

ただこの言葉は決して忘れてはいけないもので、必ず実行しなければいけないとも感じていた。

そのために力がすべてのこの世界で強者になろうと励んでいる。


そんなわけでただいま家の庭で母親教師の魔法講義中だ。

内容は簡単、母さんの真似をするだけだ。

魔法を行使するのに基本詠唱などは必要なく、イメージをするだけで発動する。

言うだけなら簡単だがこれが意外と難しくそうやすやすとはできない。

ならどのように解決しているかだが、詠唱をすることにより正確なイメージを構築させて魔法を発動させている。

しかし複雑な魔法になればなるほど当然ながら、イメージがしづらくなり詠唱に頼ることが多くなる。

そのため魔法を行使する際に詠唱を行う者は非常に多い。

俺も普通なら詠唱などをして魔法を覚えていくのが妥当だろうが、目の前にいる教師は聖女と呼ばれた天才だ。

そんなものは必要ないと初めからイメージだけで魔法の練習を行う。

まあ苦労はするが、聖女の血を流れているためか繰り返しイメージしているとできてしまう。

これが如何に異常なことか五歳の俺に分かるはずもなく、天才の母さんも分かっていなかった。

そのため他とは一線を画しているのに気が付くのはあとになってからだった。


「レイ君、上手になったねー。頭を撫でてあげよう、撫でてあげよう」

「そんなの良いから次教えてよ!」

「駄目ですー。レイ君の頭を撫でさせてくれなければ次はありませーんだ」

「うっ、やらせないと次にいけないか……仕方ない、か……。」

「やったねー。うん、よしよし。レイ君の髪はさらさらして気持ちいいねー。ずっと撫でまわしたくなるよー」


そのまま俺は何分間も頭を撫でられる。

もうお気づきだろうが俺の母さんは途轍もない親バカだ。

そんなんだから俺は子供らしくなくなったのかもしれない。

反面教師。

まさにこの一言に尽きる。

やっとの思いで解放された俺は次の魔法を教えてもらえると嬉しさに満ち溢れていた。

さっきは火の魔法だったから今度は水かな、土かな、それとも風かな。

期待を胸いっぱいに膨らませ母親教師の言葉を待つ。


「じゃあ次は新しい先生が来るまでお預けねー」


想定外の内容が耳に入ってきた。

返事に戸惑う。


「お預けって何? まだちょっとしか教えてもらってないよ?」

「うーん、それはねー、お母さんが回復魔法に特化しているからよ」

「それでもいろいろな魔法教えてくれたよね?」

「だってそれは基礎だからねー。使えて当たり前。だからお母さんより専門家の人に教えてもらう方がレイ君のためかなーって考えてるのよー」

「そ、そうなんだ。ありがとう」

「まあ回復魔法はお母さんが教えるけどねー。これだけは譲れないかなー。それにこの時間が無くなればレイ君の頭をなでなでする時間も減るしねー」


俺のことをしっかりと考えてくれてるんだと感極まるものがあったが最後で台無しだ。

やはり親バカな母さんは通常運転だった。


最後まで読んでくださりありがとうございました。

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