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三度目の正直を必ずこの手で  作者: 池春 藤斗


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クリックしていただきありがとうございます。

大学校内にはいくつもの建物が建てられている。

その中には当然使われていない部屋もあり俺たちはその空き部屋を借りて話をすることになった。

盗聴をされないように俺たちが防音対策を取らずとも部屋自体がそのようになっている。

学びたいことがあるなら堂々と学びなさい。

そういう思想がこうしたところから十分にじみ出ていた。

そのためよく会議などでも使われていたりもする。

部屋に入ると机が中心に集まっていてその机を囲むように椅子が並べられていた。

部屋のサイズも小さくディスカッションをすることが前提の配置だった。

俺が通路側に座ると未だに俺の腕を組み続けている白髪の少女も椅子をくっつけて座る。

ここまで来るといちいち反応するのもめんどくさくなってきた。

残りの三人は俺の反対側、窓側に座り話が再開した。


「気を使ってくれてありがとう」

「いや、何か裏があると思ったからな。当たり前のことを言っただけだ」

「まあそれはおいおいにして自己紹介から始めるよ。一応俺は昨日したけど念のために。俺はネオティウス・イヴァン。イヴァン侯爵家の長男だ。隣にいる紫の髪をした彼女がリア・オルタンス。オルタンス伯爵家の次女だ。すでに知っていると思うが君の隣にいるのはユリシア・ヘルンベルツ。ヘルンベルツ男爵家の長女だ。そして最後に金の髪を持つ彼女、レティシア・ホワイトロックはこの西大陸を統べるホワイトロック王国の第三王女であり、この集団のリーダーだ」


知らないことがいくつかあった。

一つ目はこの大陸はホワイトロック王国が統べっていることだ。

この歳で知らないなんて普通ではありえないのだろうが、政治や国のことに全くの興味がなかったため調べようともしなかった。

それに支配者の権力が及ばないほどの辺境地の村出身だからというのもあるかもしれないが。

そして二つ目。

金髪の彼女は王国の第三王女でありこのメンバーのリーダーであるということ。

常に話しかけてくるのがネオティウス・イヴァンだったため彼がリーダーとばかり思っていたが違った。


「それにしても侯爵家に伯爵家、男爵家。おまけに王族とは位の高い集まりなんだな、ここは」

「これにはいろいろ理由があるのさ。まず関係性だがイヴァン侯爵家は王家につかえる騎士の家の一つだ。そのため代々王家の人間を仕えてきたのだが、俺の場合、第三王女と同じ年齢ということで第三王女のそばにいることになっている。リア・オルタンスは俺の許嫁で共に行動するよう両家に言われている。そしてユリシア・ヘルンベルツは地方の男爵家の人間だが第三王女を救ったという経緯があり王家からも信頼を勝ち取った一番の出世頭だ。それに第三王女の良き友人ってところだな」


腕に絡みつくように抱きついている彼女が出世頭というのは予想外だった。

その反応が身体に出ていたのか彼女が俺を見て自慢げに笑いかけてくる。

本当に見かけでは実力が計れないことがはっきりとわかる紹介だった。

それに何となく彼らのことを把握することができた。

だからこそ疑問が生じることがある。

昨日の夢に出てきた少女は誰なのかということだ。

後姿だけだったが見た目や背丈、体格までも目の前にいる第三王女と変わらない気がする。

それに正夢が起こるという感じではなく、本当にあの場にいて既に経験した感覚だった。

だが俺の記憶上あのような記憶などない。

モヤモヤだけが募りに募る。


「第三王女、あなたとは大学校でしか話したこともないし会ったこともない。それに間違いはありませんか?」

「レティシアでいいわ。そうね、大学校に入ってからしか話したこともないし会ったこともないはずよ」

「そうですよね……変なことを聞いてすみません、レティシア様」

「レティシアよ」

「……わかりました。レティシア」


肯定され、胸のうちにしまい込むことにした。

どう考えても今これが解決するとは思えなかった。

それに自国の王女を呼び捨てにするなんて恐れ多いが、命令なら仕方ない。


「それで俺を勧誘したい本当の目的は何でしょうか?」


単刀直入に尋ねる。

その方が単純明快で嘘をつかれにくいと考えた。


「君の力が欲しいというのには変わらない。だがその力をどこに使うかが問題になるかもしれないんだが……」


そう言って一つ白く染まった正方形の小さい箱を取り出し俺の目の前に置く。


「これを見たことがあるかい?」


観察するような目でそう問われたが見たことがなかった。

見たことがないものをあるとは言えない。


「ないですね。これはいったい何ですか?」


返事はすぐではなかったが返ってきた。


「これは魔道具だよ。それも飛び切り優秀な」

「これがそんなに良い魔道具なんですか。凄いな」

「ああ凄いさ。使用者の魔力や魔法の威力が増大する、そんな代物さ。だがその魔道具は使うこと、さらに作ることも禁止されている」

「それはいったいなぜですか?」

「それは魔導士を材料にできてるからよ」


レティシアが結論を述べる。

魔導士を材料に。

俺はこの事実に驚愕した。

いや、聴き間違いかも知れないから聞き直した。


「今なんて言いました?」

「その魔道具は魔導士を材料にできてるの」


聴き間違いであってほしいと願っていた。

だが現実は残酷なものでそんなことはなかった。

悲しみに胸が打たれるのと同時に燃え上がる怒りでどうかなりそうだった。


「俺にどうして欲しいんだ? 作成者および使用者の殲滅と魔道具の破壊か? それともそれを容認しているところの壊滅か? いやそれじゃあ甘いな。塵一つ残さないまでの消滅だな」


流石にやばいと思ったのだろう止めにかかられた。


「そこまでしなくていいから。してしまったら国際問題になるから」

「そうよ。暴れまわるところも見てみたいけど結婚できなくなるからダメ」

「私のところに来るならそれだけは避けてほしいわ」


そんな否定の声が上がる中一人だけ違う言葉が放たれた。


「ネオ、あなたも男ならこれぐらい言ってみなさいよ。ほら、早く」

「リア、こればかりは冗談でも言えないから」

「本当に男らしくないわね。もしネオがどこかに戦争を吹きかけるようなことをしても私は逃げないし、そばも離れないし、愛し抜く自信もあるわ。だから周りに聞かれてない時ぐらい吠えるだけでも吠えてみなさいよ。保身に走ってみっともない」


流石伯爵家の娘というか胆力がありすぎる。

まあ侯爵家に嫁ぐだけあるのかもし入れないが。

それに冷静になれた。

少し過剰な反応をしてしまったことに反省しなければいけない。


「悪い、少し感情的になりすぎたために変な空気にしてしまった。今はこのことについてどう動いてるんですか?」

「今は見つけ次第魔道具の確保だけだな。売り手を見つけても末端の人間が多いからあまり意味がない」

「分かりました。とりあえずこの件がひと段落するまでは協力しましょう。広めたり使わせたりするのは癪ですからね」

「ありがとう。助かるよ」


こうして俺はレティシア・ホワイトロック率いるメンバーに参加することになった。

この結果が吉と出るのか凶と出るのかは不明だが、吉であって欲しいと願うのはおかしくはないだろう。


最後まで読んでくださりありがとうございました。

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