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三度目の正直を必ずこの手で  作者: 池春 藤斗


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クリックしていただきありがとうございます。

俺はあの場を立ち去ったその足で医務室へと向かった。

中に入ると誰もいなかった。

そのため窓側のベッドに無断で入り込み横になる。


「俺はもう寝るからお前らも寝てていいぞ」

「レイ様、そんなわけにはいけません。レイ様があのようになったというのに寝られるわけがありません」

「山吹は真面目だな」

「付き従うものとして当然のことをするまでです」

「そうか、なら好きにしろ」


そう言って俺は闇の底へ意識を降下させていく。

現実から乖離していく状況に抗うことなく流れのままに身をゆだね新たな光の出口へ向かって行くのであった。




一本の道。

俺はその道の上を真っすぐに歩いている。

その両端には田畑が広がり虫のオーケストラたちによる程良い演奏が耳に心地よく入ってくる。

上を見上げれば多種多様な色や大きさで個性を表現し、自身が存在していることを訴えかけるように力強く輝いている星が目に入る。

それもただぽつぽつと存在しているのではなく、数えるのが億劫になるほどに無数の星々が犇めき合っていた。

視界に入るそれらは圧巻と呼ぶにふさわしいものであった。

そんな星々が見えるほどにこの場は暗い。

周りに建物がないため光はあまり無く、見える光はすべてこの場から離れたところにある建物からしかない。

それでも道を照らすものを何一つ持つことなく道なりに歩けるほどに天然の明かりは眩いものであった。

美しい夜。

感動させる夜。

見惚れる夜。

そんな夜が俺を包み込んでいた。

それに夜だけが俺を包み込んでいるわけではなかった。

左手から伝わるぬくもり。

その左側には俺と並び歩く人影があった。

俺はこの人物と指を絡め合わせ互いの手のひらを包み込むように繋ぎ合っていた。

言葉を交わすことなく、ただただ同じテンポで歩いていた。

そんな状況下でも俺の心は穏やかで幸福感に満ち溢れていた。

虫や星々が俺らのためにできる限りの雰囲気づくりをしてくれているのではないかとさえ思えた。

そんな夜の道を歩いていると後ろから明るい丸い光源が二つ近づいてきた。

その光源たちを避けるために道の脇による。

その刹那、強めの風が吹き、光源たちが俺たちを追い抜かし離れ去っていく。

光源たちが近づいてきた数秒、俺たちはその光源に照らされていた。

俺の視界に入ったのは水のように流れる金色の長い髪を風に靡かせる少女だった。




沈んでいた意識が浮上してくる。

目を開けると窓から入ってくる色が夕焼け独特の朱色の光が差し込んでいた。

頭痛も今では感じなくなっていた。

それに夢と同様左手にぬくもりを感じた。

上半身を起こし確認する。

そこには肩甲骨まで伸びた艶やかで美しい青い髪をベッドの上に広げ、安らかな寝息を立てているミラがいた。

ミラの手は俺の手をしっかりと握っていた。

これがぬくもりの正体だった。

それにあれだけ寝ないと言っていた山吹が俺の足元で白藍と仲良く一緒にぐっすりと眠っている。

どうやら欲望に負けたようだ。

それにミラが来たことによって少し張りつめていた緊張の糸が緩んだのかもしれない。

俺はミラを揺すって起こす。

その表情はとても眠たそうだったが、目が合うと元のしっかりとした表情に作り直すと思っていたが恥ずかしがって上目遣いで聞いてくる。


「見た?」

「何を?」

「わ、私の……ね、寝顔……」

「見たって言われても見てくださいって感じだったしな。それにこれから何度も見るんだ。それも見飽きるほどに」


俺は話すのを止めた。

なぜならミラが先ほどまで恥ずかしがっていた様子とは違い、鬼のような雰囲気を纏い目が笑っていない笑顔を浮かべていた。


「もう一回言って?」

「なんでもありません」

「レイ、なんて言った? 私の寝顔を何度も見たらどうなるって?」


選択肢を間違えてしまったらとんでもないことになりそうだ。

そのため無難に褒めることにした。


「ま、毎日見れたら幸せだなって」

「……」

「毎日ミラほどの美人さんの寝顔を見れる俺は幸福感に満たされます!」


じっと目を見られる。

思わず目を逸らしそうになるが精一杯に我慢する。それが何秒か続いた。


「まあいいわ。初めからそう言ってくれたら嬉しかったのに」

「気が利かない男ですみません」


謝った。

はっきり言って俺にこんなことを求められても一発目からうまく言える自信がない。

ミラの場合、長年一緒に暮らしていたこともあり俺のことを分かってくれているが、他からだと本当に強烈な雷を落とされそうだ。

そんな不安が芽生えた瞬間だった。


「カスミはもう帰ったのか?」


この場にはカスミはいない。

そのためそのように考えるのが妥当なところであった。


「そうよ。ここに来る途中でマリアンさんと会ってね、本来なら一緒に帰る予定だったんだけど……誰かさんがこんなところで寝てるから先にマリアンさんと帰ってもらうことにしたわ」

「す、すみません」


二度目の謝罪。

どうやら俺にはよく謝罪する体質も持ち合わせているようだ。


「けど……」

「けど?」

「私としてはレイと二人きりになれるわけだから……こういう機会は嬉しかったりするかな。ああ、カスミちゃんが邪魔だとかそういうことじゃなくて、だから、あの、その……」

「分かってるよ」


赤面したり慌てたりと表情が忙しないミラをカスミをあやすように頭を撫でてやる。


「本当に、もう、ズルいんだから」


頬を赤らめながら幼い子供の様に微笑みかけてくる。

本当に憎たらしいほど可愛らしく見続けていられる表情だった。

そんな顔色を出してくれる女性に選ばれているんだと思うと光栄に感じる。

この行為に見合う男にならなければという義務感も湧き上がるが面倒とは思わない。

むしろ当然だと心得ている。

いつまでもこのようなことをしているわけにいけないのでベッドから降り、山吹と白藍を起こす。


「おい、山吹、白藍、帰るぞ」

「はっ、レイ様!! 申し訳ありません。寝てしまいました。約束事を守れないこの私にどうか罰をお与えください」

「そんなことしないから。ミラが来たから気が緩んだんだろう? それに隣を見ろ、まだ寝ぼけてるぞ」


隣には少ししか瞼が上がっていない白藍がフラフラしつつもなんとか立っているという感じだった。

山吹はそんな白藍に鉄拳を喰らわせていた。


「痛っ、姉さん何するんですか」

「おい、目が覚めたか駄馬。レイ様の前でなんて態度取ってるんだ?」

「す、すみません」


山吹が白藍に説教を始める。

俺に起こされるまで寝ていたのが嘘みたいだ。

それに俺はこんなことを思っていた。

どんな生き物でも男より女の方が強いんだなと。

医務室から出ていき大学校からも出ていく。

その際、ミラは密着するように腕を組んできた。

大学校内にいたため振りほどこうとしたが、しっかりとロックされていて無理だった。

それに見せつけながら歩いていた気もする。

人通りの多そうなところばかりをミラに先導されていたためだ。

実際に人が多いとさらに密着してきて注目の的になっていたが、まあ俺としては良い思いもさせてもらったからあまり嫌とは言えなかった。

そして俺は実力の話だけでなく女の話まで大学校内に駆け巡ることになった。


最後まで読んでくださりありがとうございました。

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