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魔法陣の上には馬の様な体躯で神々しいほどに光り輝く魔獣がいた。
白くて長い鬣を持ち、白藍の体中に青白い雷を駆け巡らせている。
そして一番目に付くのが額から長く伸びる一つの角。
その角には螺旋状の溝ができていた。
一言で表すと一角獣、ユニコーンと呼ばれるものであった。
「汝が我を呼び出したのか?」
問われた俺は震える体に鞭を撃ち返答する。
「ああ、俺だ。生憎このざまなんで抵抗などせず俺の従魔になってくれないか?」
「確かに満身創痍だな。だが二つ返事で我を従えられると思うのは間違いだぞ人間」
ユニコーンを中心として青白い雷が轟音を伴いながら何発も落ちてくる。
一発でも当たれば死ぬのは避けられなかった。
「些か態度が悪くないか、お前さんは」
山吹が口を挟んだことにより雷が止む。
「何か懐かしい気配があると思えば九尾か。なぜおまえがここにいる?」
「考えればすぐわかること。私はこの方、レイナルド・スミスディア様の従魔になったからここにいるんだよ」
「ほう」
ユニコーンが目を見開き、品定めをするように見つめてくる。
そして口を開いた。
「確かに九尾を手懐けているようだな。一度だけチャンスをやろう」
「一戦交えようてか?」
「そんな状態では当てにならん。ゆえに我に触れて直接魔力を流し込め。その質や純度、量を基準として決める。これならどんな状況であろうと普段とあまり変わらん。どうする?」
「やるに決まっているだろう」
フラフラしながらもユニコーンに近づき触れる。
魔力量は有り余るほどにある。
そのすべてを流し込むイメージで一気に魔力を解放する。
流し始めてから三秒もしないうちにユニコーンの方から離れていく。
その目は先ほどと違い畏怖や嫉妬、羨望など様々な感情が複雑に入り乱れた色をしていた。
「おやおやどうしたんだい? そこら辺にいる有象無象どもと違って私の主は別格だろう?」
山吹が自慢気に話し掛けていた。
それは早く負けだと言えと言っているようにも聞こえた。
「その通りだ。この方こそ魔を統べるのに相応しい。我などでは到底辿り着けない境地におられる」
「魔を統べるとはどういう意味だ?」
「その言葉の通りで、魔。魔獣や魔物、魔法を行使するものの頂点に立つべきお方だということです」
あまりのスケールの大きさに質問した俺が唖然としてしまった。
そこまで持ち上げられるとむず痒い。
話を変えるため結果をすぐに聞き出した。
「それでどうするのだ? 俺の従魔になるのか?」
「答えなどもう決まっております。あなた様の下においてください。いついかなる場所でも役に立ってみせます」
宣言をもらった。
あとは名ともう一度魔力を流し込むだけだ。
「ユニコーンは普通白だと思っていたがお前は違うんだな。普通のユニコーンとは違う異色の白藍の体躯が特徴的だから白藍だ。安直的だが構わないか?」
「名を頂けるだけでもありがたいです。これからは白藍と名乗らせていただきます」
そう言って頭を垂れる。
白藍に再び近づき魔力を流し込む。
こうして第二の召喚獣を手に入れることができた。
それも様々な人たちがいる目の前で。
だがそんな状況なのだが気にしていられないほどに体が疲弊していた。
白藍に魔力を流し込んだ後は地面に倒れ込んでいた。
「白藍よ、気付いているだろうがレイ様は私を常時召喚していても大丈夫なほどの魔力をお持ちの方だ。お前もそうさせてもらったらどうだ?」
「それが可能ならそうさせていただきたいものだ」
「なら一つだけ条件がある」
山吹が白藍に提案し小さくなった姿を見せる。
「レイ様がお住みの世界では私たちみたいな大きな体では生活に支障が出たりする。そのために小さくなれることが必須なのだが……なれるか?」
「姉さんみたいに尾の数を無くすなどという芸当は無理だが小さくなるだけならできるぜ」
そう言って白藍も山吹と同じほどの大きさになる。
横並びになっている二匹を見るととても精巧な人形にしか見えない。
しかも白藍の変わりようがすごい。
自尊心の塊みたいな態度からいきなり砕けた口調で姉さんと呼ぶまでになっている。
こんな一瞬で変わるものなのかと疑ってしまう。
まあもしかしたらこっちの方が地という可能性があるので何とも言えないが。
そう言えばラグナ・インテンスはどうなったと思い視線を向ける。
菊花で根こそぎ魔力を奪い去った結果もう暴走は起きていないようだった。
それに誰かが呼んできた救護班みたいな人達も駆けつけている。
ラグナ・インテンスが連れてきた奴らも立ち尽くしているだけだった。
大きく息を吸い込み吐き出す。
先程までよりも疲れや痛みが押し寄せてくる。
ラグナ・インテンスのことは嫌いだが生死に関係しているということで意外と気にしていたのかもしれない。
瞼が重くなってきた。
「山吹」
呼びかけると山吹が駆け寄ってくる。
「どうされました?」
「少し眠いから後のこと頼むわ」
「分かりました。あとのことはお任せください」
その言葉を聞き終えると底なし沼に沈んでいくように意識を無くしていった。
目が覚める。
視界には白い天井らしきものが見え、適度の重さのものが身体を包み込んでいる感覚がある。
ベッドの上で布団をかけられ眠っていたと瞬時に推測する。
右手を目の前に持っていき指を閉じたり開いたりと体調を確認してみる。
どうやら異常はなさそうだ。
念のため左手でも確認しようと動かそうとしたときに誰かに握られていることに気付く。
視線を左に移すと長くて青い艶やかな髪を垂らして可愛らしく寝ているミラの姿があった。
そんな姿を眺めているとミラが目を覚まし、俺が起きていることに気付く。
「おはよう、ミラ。ゆっくり眠れたかい?」
そう言って体を起こすとミラは目を赤らめさせていった。
握っていた手を離しそのまま近づいてきたので抱きついてくると思ったが飛んで来たのは平手だった。
当然警戒していたわけではないので避けれず直撃する。
「グヘェ!」
「グヘェ! じゃない! どれだけ心配したか分かってるの!? 無理しないでって言ったよね!?」
「ご、ごめん」
ミラは本気で泣いていた。
謝った。
というよりも謝るしか選択肢はなかった。
「レイが生きていてくれてよかった……三日間も目を覚まさなかったんだよ……このまま目が覚めなかったらと思ったら私……」
「心配かけてごめん」
ミラを抱き寄せた。
その腕の中で泣きじゃくるミラはとても俺より年上とは思えなかった。
三日間も眠っていたらしい。
当然不安になるだろうと思った。
それに今のやり取りにとてもデジャブを感じた。
記憶を探ると思いだす。
ハイドラを倒した後の母さんとのやり取りだ。
あの時も母さんを泣かせてしまった。
どうやら俺が選択する行動は大切な誰かを泣かしてしまう傾向があるのかもしれない。
今回で二度目だ。
三度目が起きれば確実にそう言えるだろう。
二度あることは三度ある。
これだけは阻止したい。
それに記憶を探っていた時にもう一つ思い出したことがある。
あの時に初めて出会った同年代の異性として触れ合った女の子だ。
白い髪と可愛らしい笑みを浮かべ、別れ際に俺のお嫁さんになると公言した女の子。
ふと思い出したその記憶の女の子、ユリシアは今どこで何をしているのかなと胸の中で思いを馳せていた。
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