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三度目の正直を必ずこの手で  作者: 池春 藤斗


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大体いつも通りの時間に投稿しようと思ったらまた急用が……

予告通り複数話投稿します。1/2話目。

翌日。

俺は制服の上に母さんからもらったドラゴンの革でできた黒いコートを羽織り、両腰に二振りの刀、菊花と桜花を差し込む。

視線を足元に向けると山吹が寝転がっていた。

山吹は今朝早くに召喚しておいた。

毎度のことだが尾が一本の小さな姿でカスミに可愛がられていた。

まあ山吹も気持ち良さそうにしていたため止めさせることはなかった。


「カスミ、学園を楽しみにしていたところ悪いがいきなり休ませてごめんな。我慢してくれよな」

「うん、その代わり今度思いっきり兄さまと遊んでもらうから」

「いくらでも付き合ってやる。カスミのことよろしくな、ミラ。じゃあ行ってくる」

「いってらっしゃい、兄さま」

「いってらっしゃい、レイ。カスミちゃんのことは任して。それと無理はしないでね」

「分かってるよ。何事も無かったかのように帰ってくる」


カスミとミラに背を向け大学校を目指す。

山吹も俺のすぐ後ろをついてくる。

大学校に近づくにつれ、通りを歩く人が増していく。

今までなら人がいるところに山吹が歩けば可愛がられご満悦の表情を浮かべているのだが、今日は俺にピタッとくっつくように歩いているため周りの人は近づくにしても近づけないようにしている。

まあ俺がとげとげしい雰囲気を纏っていたからのもあるだろうが。

何事も起きることなく無事に大学校に到着する。

辺りを見渡すも昨日より人は少なくまばらだ。

まあ昨日は入学式ということもあり一か所に集まりすぎていただけだろう。

それだけに人があまりいない光景を見ると少し寂しい。

そんなことを通常なら思うのだろうが今の俺は微塵もそんなことは思わない。

戦うことで脳内のほとんどが占めている。

闘技場に向かい歩き出す。

一応開戦は昼からということで時間が少し余っていた。

どう時間を潰すか考えつつ歩いているとギルドエリアに足を踏み入れていた。

依頼は一般のギルド同様、大学校内でも三百六十五日二十四時間受けることができるため大学校にはいつでも入ることができる。

ただそのため監視の目は多く見張りの人が歩き回っていることもしばしばある。

そう今冒険者ギルドに入っていった三人の見張りたちの様に昼間でも見かけたりする。


「冒険者ギルドか……少し立ち寄るか」


少し考えてから見張りの者と同じように冒険者ギルドへ入っていく。

中は昨日来たときと変わらない様子だったが見張りの者たちが誰かを口説いているようだった。

出入り口からでは分からなかったため少し近づいて確認してみる。

そこには緑の髪の若い女性のギルド職員が標的となっていた。

トラブルに良く巻き込まれる体質の持ち主に感じてきた。

昨日の今日だ。

巻き込まれぬよう立ち去ろうとしたが見つかってしまった。

俺の方に彼女が駆け寄り、腕に抱きつき柔らかな膨らみが押し付けられる。

いきなりの出来事に頭は真っ白、動きも停止する。

これでも十分驚いているのにもかかわらず仰天する内容を見張りたちに話す。


「あなた様方の言うことは聞けません。何故ならこの人が私の好きな人で将来も誓い合っているからです」

「「「「えっ!?」」」」


俺とナンパ男たちから漏れる声。

それは見張りの者たちにも聞こえているだろう大きさだった。

だがそんなことを気にすることなく、


「そ、そうなんだ…」

「これはしょうがないな…」

「行くか…」


余程ショックだったのか声も態度も小さくなっていた。

そこは俺のために粘って問い詰めてくれよと内心愚痴る。

見張りの者たちがギルドから出て行き姿が見えなくなっても彼女は俺の腕から離れていなかった。

少し揺すってみてもビクともしなかった。


「いつまでそうしてるつもりですか?」

「うん? 私はあなたの彼女なんだからいつまでもこうしててもいいんじゃないの?」

「何言ってるんですか。周りを見てくださいよ。働いてくれって顔してますよ」


そう言って俺は職員たちの方に視線を誘導させ、思惑通りに見てくれる。


「そんな顔してないよ?」

「いや、してますよ」


項垂れてしまう。

相手をするのがしんどい。

それでも何とかしないといけないので行動するしかない。


「そろそろいい加減にしてください。通報しますよ」

「せっかく楽しめると思ったのに……」

「何言ってるんですか。それに昨日と性格違いすぎません?」

「そんなことないと思うけど。いつもこんな感じだよ?」

「なんでそこ疑問形なんですか」


深く溜息をつき肩を落とす。

もう少し問答が続くかと思われたがそんなことはなかった。

改めて彼女の姿をしっかり見る。

緑の髪に翡翠色の瞳。

その瞳の色は髪の色より鮮やかなためか同じ緑系統でも映えて見える。

容貌はギルドの受付嬢を担当しているだけもあり見目麗しい。

それに目を見張るほどではないがそれでも豊満な胸は女性の魅力として十分に役立ち、引き締まった腰に膨らみの大きい臀部。

これらは幼児体形とはかけ離れた大人の女のものであった。

このような人物が先程まで俺の腕に抱きついていたのだ。

嬉しくないなんてことはない。

ただ出会って二日目でこのような態度を取られる理由など思い当たらない。

昨日のことでは?

との疑問の答えが出るが早急すぎる気がする。

それにこれまでギルドで働いていただろうから今回と似たようなことがあったはずだ。

そこにたまたま触れ合うことがあった俺を見つけ、回避の手段として飛びついてきたのではないか?

そのように考えるのが一番しっくりした。

というかそれしかない気がしてきた。


「今日はもう終わったことなのでしょうがないですが、今後は俺を巻き込まないでくださいね」

「えー、なんで?」

「なんでじゃないです。ほら早く仕事に戻ってください。そろそろ本気で怒られますよ」


職務に戻るよう促す。

彼女は何か言いたげに見つめてくるがそんなものは無視する。

そうしているうちに彼女は諦めたのかとぼとぼと戻っていった。

ただその表情は男なら女を連れ出しなさいよと言わんばかりに訴えかけてくるものだった。

一難去ってまた一難。

このようなことわざがある。

だが今の俺は一難去って一難迎えに行くだ。

これから向かうところでめんどくさいことが起きるのは分かり切っているのだ。

ならこう言い換えてもいいはずだ。

それにいい感じに力が抜けていた。

これはこれで思わぬ副産物をくれた彼女に唯一感謝できる点だろう。

これなら冷静な判断が下せそうだ。

感謝の意を込めて担当場所に戻った彼女を見る。

視線を向けられた彼女はニコッと笑い手を振ってきた。

どんな意味で向けられているか全く分かっていない様子だった。

まあ視線を向けただけで正確に意図を汲める超人なら尊敬するのに値するも、奇異の目で見てしまうかもしれない。


最後まで読んでくださりありがとうございました。

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