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「おい、大丈夫か」
肩を叩かれながら呼びかけられる。
俺はそれをきっかけに意識を覚醒させた。
周りを見渡すと誰もいなくなり目の前にいる男教師らしき人物しかいなかった。
「すみません、途中で頭痛がして意識無くしてました」
ありのままに答えた。
こんなところで嘘をついても意味がない。
「それは大ごとじゃないか! 今すぐ手当を!」
「今は大丈夫なので結構です」
「それならいいが……どこまで聞いていましたか?」
「ほとんど聞いていないと思います」
「そうですか。なら大切なことだけを掻い摘んで説明しましょう」
この者が言うには大学校は単位取得制。
授業で単位を取得するほか、依頼を成功させて単位を取得することもできる。
その依頼はランク分けされ、高ランクなほど高難易度になり、専門知識や優れた技術、はたまた命にかかわることもある。
その代わり取得単位数も多くなる仕組みだ。
また高ランクのものを簡単に受けられても困るため、失敗または期限内に遂行できなかった場合は得るはずだった単位数が引かれる。
ハイリスクハイリターン。
この言葉に相応しい制度だ。
そのためほとんどの者が身の丈に合ったものや高レベルに至るために単位の取れない授業を真剣に受けているらしい。
それにただ卒業するだけなら関係ないが、少しでも良いところで仕事をしたいのなら大学校時代にどれだけ高ランクの依頼をこなしてきたかというのも重要になり、お手頃の高ランク依頼が舞い込んできた時には取り合いになったりすることもあるとのことだ。
説明を聞き思考する。
早く卒業しようと思えば高ランクの依頼を受け続ければいいだけという簡単なものだがそういうわけにはいかないので悩みどころだ。
ただ授業を受けなくてもいいのは良かった。
それだけ自由にしててもいいということだからだ。
俺は依頼を見に行くべくどこに張り出されているか聞いた。
「ああ、依頼はギルドエリアにあるよ」
「ギルドエリア? ギルドと何か関係あるんですか?」
「大学校に持ってこられる依頼はすべてギルドに依頼された依頼を取り扱っているんだ。そのため様々なギルドが指定されたエリア内に支店を設けているんだ。ギルドを窓口にしているため不正はできないというメリットもあるね」
「ありがとうございました。一度覗いてみます」
「体調管理はしっかりしてね。何かあれば私、オイスト・スネトニに聞いてくれ」
俺はギルドエリアに向かう。
ギルドエリアは全校生徒が来やすいようにか大学校の中心に配置されていた。
見渡せば商業ギルドや魔道具ギルド、魔法ギルド、冒険者ギルドなどがある。
中には執事メイドギルドや郵便ギルドなど変わり種も存在していた。
様々なギルドがある中で俺が覗くならもちろん冒険者ギルドだった。
理由は簡単で一番討伐系統の依頼が多いからだ。
中に入ると何人か人がいた。
先輩方かなと思ったが声をかける理由もないため依頼が張り出されているボードの前に移動し眺める。
ランク順に依頼は張り出され見やすいものとなっていた。
「魔獣討伐の依頼はないのか」
小さく呟く。
動物の狩りや魔物の討伐、それらの剥ぎ取りの依頼はあったが魔獣だけはなかった。
もしあったなら最高ランクの列に張り出されていたのだろう。
今はその最高ランクの列には一枚もない。
拍子抜けだ。
ギルドから出ていこうとすると目の前に立ちふさがる者がいた。
「よう、久しぶりだな」
「ラグナ・インテンス」
俺は忌々しく毒づく。
俺の目の前に立ちはだかったのは試験相手だったラグナ・インテンスだった。
会いたくない二人の人間のうちの一人だった。
もう一人の方が断然会いたくないが、ラグナ・インテンスでもあの時を思い出すからだ。
「どいてくれないか。出ていくところだから」
「いや、それはできない」
「訳が分からない」
俺は違う出口に向かって歩き出す。
だがラグナ・インテンスが追いかけてき、俺の右肩に掴み振り向かさせる。
「何をするんだ!」
「もう一度俺と戦え!」
「ハアッ!?」
全く持って意味が分からない。
なんのために戦わなくてはいけない。
俺は無視して歩き出そうとするがラグナ・インテンスがそれを許さない。
「離せよ! 大体お前と戦う理由などない」
「お前になくとも俺にはある。どんな手を使ったか知らんが俺が負けるなどありえん。不正をしなければお前が合格できるわけがない」
「おい、言いがかりをつけてくんじゃねえぞ。俺は不正などしていない。お前が俺より弱かった。それだけだろう」
あの時同様頭に血が上る。
それに伴い思考力が低下していく。
険悪な雰囲気が漂る。
それに気付いた緑の髪の若い女性のギルド職員が駆けつける。
「ここはギルド内です。争いは外で行ってください」
「おい、お前なんて言った?」
ラグナ・インテンスの声音には怒気がにじみ出ており、目つきも鋭く、彼女に標準が合わされていた。
「ここはギルド内です。争いは外で行ってください」
震える体に鞭を撃ち、勇気をもって同じ言葉を放った彼女。
だが次の瞬間壁まで吹き飛ばされていた。
「おい、誰の許しを得てそんなこと言ってんだ? 俺を誰だと思っている! インテンス家の者だぞ! お前如きに口出しされる覚えはねえ! それとも俺に断罪されたいのか?」
ラグナ・インテンスは彼女に向けて嘲笑う。
「どうした? 先ほどまでの威勢はどこにいった?」
彼女は顔面蒼白で体が震えている。
トラウマを残しかねないほどに危険な状態だった。
そんな状況を大人しく見ていられるほど嫌な趣味は持ち合わせていなかった。
「おい、何他人巻き込んでるんだ? お前の目当ては俺だろう。なら最後まで俺を見とけよ」
低く冷たい声で放った言葉。
それはラグナ・インテンスをこちらに振り向かせるには十分だった。
「やっとやる気になったか。明日の昼、闘技場で待ってるわ。もし来なければ……妹がどうなっても知らんぞ」
ラグナ・インテンスはそれだけ言って冒険者ギルドを後にした。
俺はその後を追うことはなく吹き飛ばされた若い女性のギルド職員に近づき膝立する。
「大丈夫ですか? どこか痛いところは?」
そう言って外傷を調べようとしたとき、彼女が俺に抱きついてきた。
大量の涙が俺の胸元に浸みていく。
ほかのギルド職員の方に目を向けるもそのままにしてあげてという視線しか来なかった。
しかしそんな視線しか送ってこないギルド職員にも腹が立っていた。
ギルドは公平な組織のはずだ。それゆえに仲間を守るために結託しても良かっただろうと思う。
彼女の髪を撫でて落ち着かせ、泣き止むまでその場を動かなかった。
そうすること数分、彼女は泣き止み赤く腫らした目でお礼を述べてきた。
「すみません。ありがとうございました」
「いえ、こちらこそご迷惑をおかけしました。二度とあなたを泣かせないように明日言い聞かせてきますから」
俺は立ち上がり、覚悟をもってギルドを出ていった。
俺が立ち去った後のギルドはとても静かだった。
生徒は先ほどの騒ぎで出ていき職員だけがいる空間。
だがその職員も先ほどの光景が脳裏をよぎり作業の手があまりつけられていない。
それでも振り払おうと懸命に行動しようとしている。
そんな中二つの瞳だけが俺の姿が見えなくなるまで動かずに見つめていた。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
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また以前言っていた複数投稿ですが、明後日にしようと考えています。




