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三度目の正直を必ずこの手で  作者: 池春 藤斗


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クリックしていただきありがとうございます。

一か月後。

春の陽気に眠気が誘われる。

いつもと変わらない朝。

ただ違うのはこれからの日常だ。

今日から俺の大学校生活とカスミの学園生活が始まる。

慣れるまでは時間がかかるだろうが何とかなるだろう。

新しい日々の出発の門出は三人で踏み出した。

服装は俺とカスミが制服でミラは私服だった。

俺は白地に赤いラインや刺繍がされたものでカスミはその青版だ。

パッと見ただけではどっちが大学校生か学園生か分からないデザインだ。

そんな俺たちの制服姿をミラは羨ましがっていた。

俺も見てみたいものはあったが口には出さなかった。

ミラは濃い青のロングスカートに白いチュニックを着ており、とてもよく似合っていた。

大学校に向っている途中見慣れた人物が待っていた。


「マリアンさん、おはよう!」


カスミが走って近づいていく。


「あらあら、カスミちゃん。可愛らしい格好してどうしたんだい?」

「今から学園の入学式に行くの!」

「そうかい、そうかい。おばちゃんも一緒に行くからしっかりするんだよ」

「分かった!」


本当にカスミは祖母のように慕っているなと思っている。

それにカスミが入学式に出るということを聞いただけで参列を決意したマリアンもすごい。

いや初めから参列するつもりで待ち構えていたのかもしれない。

三人から四人に人数が増え、大学校に向かう。

到着すると人が大勢いた。

それだけだとよかったが何故か俺が注目が集まっている気がする。

ミラではなく俺だ。


「なあミラ。周りが俺を見ている気がするのだが」

「そうでもないと思うよ」

「いや集まっておると思うぞ。なんせあんたはあのインテンス家の子供のラグナ・インテンスを負かした。それもどこの馬の骨かも分からない者がじゃ。注目されて当然じゃろ」

「それよりもなんでおばちゃんが知ってるんだ?」

「不動産の会長兼出店の主人の情報網をなめたらダメさね」


俺の問いかけに答えたのはミラではなくマリアンだった。

どうやら俺はいきなり現れた強者として学生間で認識されているらしい。

そのためか大学校内の会場に近づくにつれ、人が多くなり距離も近くなり会話も聞こえる。


「おい、あいつって入学試験でラグナ・インテンスを破ったやつじゃないか?」

「そうだろうな。話に聞いた通りの黒髪黒目だな」

「けどどうせ油断していたところを上手く一発いれられただけだろう?」

「それが一瞬で終わらせたらしいぞ」

「さすがにそれはないだろう。こっちは苦戦していたと聞いてるのに」


色々な誤情報が飛び交っているようだ。

一瞬でもなければ苦労もしていない。

まあ全員が全員あの試験を見ていた訳じゃないだろうからしょうがないところではあるのだろう。

注目されるのを嫌いそそくさと会場の建物に入る。

本日の予定としては初めに学園の入学式。

それが終わり次第大学校の入学式という流れだ。

入学式は長ったらしいものではなくすぐ終わる内容らしい。

そのため大学校の生徒もこの時間にかかわらずよく見受けた。

受付を済ませ、カスミと俺ら三人は入学生席と保護者席に分かれる。

俺らは空いているスペースを探しそこに座る。

保護者席にもかかわらずなぜかものすごく緊張する。

そわそわしているとミラが声をかけてくる。


「レイ、もう少し落ち着いたらどうなの」

「いや、そうしたいのはやまやまなんだが身体が勝手に、な」

「まあいいわ。それよりもインテンス家の人間を相手に魔法試験を受けたって本当なの?」


ミラが真面目な顔をして問い掛けてくる。

その目には多少なりと不安の色が見えた気がした。


「そうらしいな。それがどうしたんだ?」

「インテンス家は私に求婚してきた複数あるうちの一つの家だから。相手はレイと戦った人とは違うだろうけど……」


俺は驚いていた。

まさかそのような関係があったとは知らなかった。

それよりも反応したのはマリアンだった。


「青い髪にインテンス家に求婚され、ミラと呼ばれる女。あんたもしやミランダ・アストルかい!?」

「そ、そうですが……」


ミラがマリアンの気迫に押され口ごもる。

マリアンはそんなことを気にせず話を続ける。


「やはりそうかい。見たことが無かったからもしかしたら程度しか思っていなかったが今の話で確信した。まさかこんな大物がこれほどまでに近いところにいたとは驚きしかないわい」

「マリアンさん、そんなにミラは有名なのか?」

「あんたはもう少し嫁のことを知りなさい! そんなんだから苦労させてしまうんじゃよ!」

「す、すみません」


怒られた。

しかも入学式の保護者席でだ。

みっともなさすぎる。


「それよりもなんでレイのそばに居るかというのが気になるが、いろいろとあったんじゃろう。まあそこまでは聞くつもりはないわい」


ミラが少し安堵したように思えた。

俺は理由を知っているがミラはあまり言いたそうではないので黙っている。

そんな会話をしているうちに入学式が始まった。

聞いていた通り本当に早いもので、開会の挨拶、校長の祝辞、本日のこの後の予定、閉会の挨拶、この流れだけだった。

二十分も経っていない気がする。

もう少し何かあってもいいような気はしたが。

この後すぐに今いる場所で大学校の入学式が始まる。

先程の話ではカスミは学園の教室に移動しそこで詳細な話がされるらしい。

まあカスミの場合、一年生からではなく三年生からの入学のため、説明を受ける生徒は少なくすぐ終わると予想される。

そのためミラとマリアンさんについていくようお願いした。

ミラはこっちに残りたそうにしていたが俺の言うことを聞いてくれた。


受付を済ませ、入学生席の真ん中通路側の右端の後方に座る。

当然知り合いなどいないので暇な時間が訪れる。

何もすることがないので目を瞑っているといつの間にか眠ってしまっていた。

パチパチパチと大きな拍手の音で目を覚ます。

どうやらすでに式は始まっていたらしい。

拍手が起きるということは何か壇上であったのだろうとそちらに目を向ける。

そこには容姿端麗で水が流れるように長く美しい金の髪。

首も胴も手足も細長く一つの芸術作品のようだ。

胸のふくらみもそこそこあるみたいだ。

様々な女の魅力がある中で俺が最も引き寄せられたもの。

それは彼女の燃え盛る紅葉のように紅い瞳だった。

この世界、特にクレイディアに来てから赤い瞳を持つ者はよく見かけた。

ほかにも青、緑、黄、茶と瞳の色だけで特徴を言えそうなほど色とりどりだった。

それでも俺は瞳に意識を取られることはなかった。

だがこの紅い瞳だけは違う。

どうしても視線を逸らせない。

彼女が壇上から降り、自分の席に向かって行く。

俺の視線もそれを追いかける。

真ん中の通路を歩む彼女が俺の隣を通過する。

今まで笑っていなかった彼女が俺の横を通過するときだけ少し笑う。

それも何か見透かした様な笑みだった。

その瞬間、俺の頭に激痛が走り、頭を押さえる。

うめき声は上げなかった。

必死に我慢した。

声を上げない代わりに俺は座ったまま自身を抱え込むように体勢を崩し意識を手放していった。


最後まで読んでくださりありがとうございました。

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