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三度目の正直を必ずこの手で  作者: 池春 藤斗


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クリックしていただきありがとうございます。

大学校内に建設されている闘技場。

そこで大学校の選択試験の一つが行われていた。

科目は魔法。

二人一組になり魔法の技能を争う。

勝敗はそこまで関係がなくどちらも優れていればどちらも合格。

そうでなければどちらも不合格となる。

だが勝つのと負けるのとでは印象が違いすぎるため、いくら勝敗は無関係と言っていても勝つことが必須条件みたいなものだ。

今俺の前にいるラグナ・インテンスの実力は全く知らない。

だが周りの者たちが騒いでいる。

どうやら周知されているだけの実力はあるらしい。


「おい、あれってラグナ・インテンスじゃないか」

「そうみたいだな。特待生じゃないんだな」

「聞いた情報だと特待生候補だったらしいな」

「そりゃそうだろ。俺が知っているくらいなんだから」

「推薦状をもらってきているのは間違いないだろうな」

「というかラグナ・インテンスですら特待生になれないってどれだけ特待生のレベルは高いんだよ」


目の前にいる試験相手は今回の受験者の中でも上位の実力を持つ人間らしい。

これなら相手のレべルに合わせれば合格できる可能性は高い。

それに実力のことだけでなく物騒なことも耳に入る。


「話が変わるがあいつもそうだがインテンス家は魔法戦闘が非常に得意な貴族だ。そのことを利用して色々と後ろめたいこともしているらしいぞ」

「それならほかの貴族が黙ってないだろう」

「そうしたくてもできないんだよ。ちょっかいを出せば自分たちがやけどすることくらい分かっているから」


貴族とは縁がない俺にとってはどうでもいい話だったが少しは警戒しておいた方がいいだろう。

腹いせで試験後にちょっかいを出される可能性もある。

それに出会ってから俺のコートや刀をよく見ている気がする。

実力がない田舎者と思われている節があるため狙っているとも考えられる。

そうさせないためにも俺の方が実力が上だと思わせないといけない。

だがそのことを簡単にばれては意味がない。

実力を隠しながら生きるのはしんどい。

早くも苦労が止まらない。


「二人とも位置に着いたな。では」

「すみません、質問良いですか?」

「なんだ?」

「この試験は魔法しか使えないんですよね? 俺の攻撃手段はこの刀と召喚魔法で呼び出した獣魔です。なので獣魔を先に呼び出して試験に臨みたいのですが」


試験官が相手を見ている。

相手の顔は口角を上げて微笑んでいるように見えた。


「俺は別にいいですよ。実力を出し切ることは大切ですしね」

「試験相手の許可も出た。いいぞ」

「ありがとうございます」


俺は召喚魔法の魔法陣を描き出し、魔力を流し込む。

魔法陣が光で明滅、そして安定し通常より長い時間発光し続ける。

既に山吹は召喚されていた。

だが本来の姿のままでは騒ぎが起きないことはまずない。

ゆえに無理やり発光させ続け山吹に指示を出す。


「山吹、今すぐに尾が一本の小さい姿になれ」

「どういうことでしょうか?」

「いいから今は俺の指示に従え」

「分かりました」


そうして山吹が尾が一本の小さい狐に化けたことを確認して魔力を注ぎ込むのをやめる。

魔法陣から光が失われその姿を晒す。


「山吹、これで今がどういう現状か分かったか?」


山吹が首を左右に振り周囲を確認、把握に努める。


「レイ様、この周りの者たちに本来の私の姿を見せたくなかったと?」

「そうだ。もしあの姿で登場していたら目立つのは当然、恐れおののいて攻撃してくる奴らも出かねない」

「見たところ未熟な奴らが多いですからね」


山吹は現状を理解し、それ以降は何も言わなかった。


「召喚も上手くいったようだな。では、始め!」


試験官が声を発し、戦闘が開始する。

相手が詠唱を始める。

何を言っているか聞き取れないがこちらはこちらでやるだけだ。


「山吹、お前ならあいつくらい瞬殺することぐらいできるだろうが、九尾だとバレないように魔力や攻撃威力を抑えて上手く立ち回ってくれ」

「レイ様、それではストレスが溜まってしまいます」

「今度思いっきり暴れられるような機会を作ってやるから辛抱してくれ」

「分かりました。お願いしますね」


山吹が攻撃を仕掛けに動き出す。

炎を己に纏って一直線に向かい体当たりを敢行するが簡単に避けられる。

だがそんなことは予想の範囲内なわけで纏っていた炎で弾丸を作り出し撃ち放つ。

弾丸は勢いよく相手に向かって行ったが相手の魔法に遮られる。


「ダメだよ、ダメ。その程度ではこの『水の城塞』を破ることはできないよ」


自分を中心として円形に水の膜が展開されている。

水越しに見える顔色は気持ち悪いほどニタッとと嗤っていた。


「それにね。この魔法は防御だけでなく攻撃もできるんだよ」


そう言って俺に向って水の膜が棘を出し俺を貫こうとする。

先端はものすごく鋭く、刺し貫いたものを逃さないために返しまでついていた。

本当に趣味が悪い。


それに生半可な攻撃じゃ効果はなさそうだ。

いくら力を抑えているとはいえ山吹の攻撃に耐えたのだ。

少しはやる気を出してやっていく必要性がある。


「俺も反撃するか」


重い腰を上げ相手の棘を避けつつ近付き魔法を放つ。

もちろん無詠唱だが、口パクでしているように見せる。

生半可な魔法は効かない。

ならどんな魔法を選択したのか。

それは相手が自身を水で覆うならこちらはその相手を土で覆えばいい。

そう俺は相手を中心とした土のドームを構築した。


大きさは水の膜より少し大きいぐらいで小さな穴を二つだけ開けている。

その理由は、


「山吹、穴が開いている二つのうち一つから炎を流し込め」


山吹は言われた通りに実行する。

例えるなら今のドーム内は竈状態だ。

当然抵抗はあり、抜け出そうと土のドームに攻撃の音が響く。

と思われたが何も聞こえない。

それも当然で俺は思っている以上に今現在も魔法の維持のため魔力を流していた。

そのため強固な壁となり攻撃を受けても傷がつかないほどのものになっていた。


「そろそろいいか、山吹もういいぞ」


山吹に声をかけると炎を流し込むのを止め、土のドームも中にいる奴を気遣いながら取っ払う。

そして中から現れたのは当然の如く仰向けに倒れ込んでいる相手、ラグナ・インテンスだった。

体色もやや鮮紅色になっていたが思っていたよりはダメージがなさそうだ。

ほぼ勝ちが決まり、合格もしただろうと思える瞬間だった。


最後まで読んでくださりありがとうございました。

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