35
クリックしていただきありがとうございます。
時間が経ち、試験が始まろうとしていた。
「えー、全員受付を済ましたみたいなので今から試験を始めたいと思います」
男が俺たちより少し高い位置にある朝礼台のような物の上で声を放つ。
「今まで同様、あなたたち自身が好きな試験を選んで、その試験を受けていただきます。そして私たちに実力を見せてください。期待しています。では好きな会場へ散らばってください」
好きな試験を受けていいのか。
さて何を受けようか。
考えに耽っているとラグナが提案してきた。
「何を受けるか決めたか?」
「いやまだ。何があるか把握してないからな」
「それなら一緒に魔法の試験を受けないか? 俺ら五人は初めからそのつもりだった」
「魔法かー。まあ、いいよ」
「決まりだな」
ラグナが笑いかけ肩を組んでくる。
俺はそれを取り払うことなくそのままにした。
周りが何故か可哀そうにと俺を見ている気がする。
理由は分からない。
隣にいる奴が貴族で俺が村人だからだろうか。
それともほかの何かか。
そんな疑問を抱きながらラグナに肩を組まれながら連れて行かれ、魔法の試験会場に到着した。
会場は大きかった。
外から見ても大きかったが中に入るとよくそれが分かる。
五メートルほどの壁で中心を円状に囲み、その壁の上には観覧できるようにベンチが並べてある。
それは話でしか聞いたことがなかった闘技場そのものだ。
そして俺ら受験者は全員見下ろされる人間だった。
「よく魔法の試験に来た! これから魔法の試験を開始する! ルールは簡単、二人一組になってもらい、魔法だけで戦ってもらう。勝敗は気にしなくていい。どちらとも実力があれば合格できる。またその反対にどちらも実力がなければ不合格だ。だが勝った方が実力があるように見えることは明白とだけ言っておこう。では二人一組になれ!」
男の試験官からの説明が終わった。
皆、人を探し始める。
俺も探そうとするが呼び止められた。
「俺と組もうぜ」
ラグナだった。
「なんで俺と?」
「それは初めに言ったじゃないか。六人なら融通が利くって。それにほら、残りの四人は二組に分かれて組を作ってるぞ」
ラグナは親指で後ろを指す。
確かにそこには先ほどまでの四人が二人組に分かれている感じがあった。
「そうみたいだな」
「だからあとは俺ら二人だけだ。別にいいだろう?」
「まあいいよ」
「決まりな!」
あっさりと相手が決まった。
周りはまだ組めていないものが多かった。
俺らはだいぶ早く組むことができたらしい。
徐々に動き回る人は減り、最後は誰一人動かなくなった。
「全員組めたようだな。よし誰でもいい、全員壁際まで移動しろ」
試験管の指示に従い壁際に移動する。
全員が壁際に移動しきったところで再び声がかかる。
「壁際に寄ったな。誰でもいい、初めにやりたい奴はいるか?」
「俺らがやります」
いち早く声を上げたのはラグナだった。
「ちょっと一番初めなんて!?」
「一番初めの方が受かりやすいぞ」
俺としては最後まで残って周りがどのようなレベルか知りたかった。
だがラグナはそうさせてくれなかった。
確かに初めにやれば受かる可能性が非常に高いものになるときもある。
それは高いレベルの戦闘を行い基準を底上げしたときに限ってだ。
だから俺は頭を悩ませていた。
どうすれば上手く実力を隠しつつ合格できるだろうか。
父さんとミラにお墨付きをもらっている俺なら全力を出せば余裕で受かるだろう。
だがそれでは意味がない。
考えるだけで疲れてきた。
「声を上げたなら早く中央まで移動しろ」
試験官が後戻りできない状況を作り出した。
ラグナはすみませんと声を出しながら走っていった。
もう腹を括るしかない。
俺も一歩と前に進み出た。
********************
俺ことラグナ・インテンスはこの試験貰ったと思っていた。
目の前にいる奴を見つけた時、田舎者の独特な雰囲気を醸し出し、物珍しそうに辺りを見ていた。
所詮田舎から出てきた実力が乏しい世間知らずだ。
推薦状をもらっている有名な俺とは違う。
まあ顔つきは男の俺からも優れている者と思わせるものではあるが、到底俺には及ばない。
それに田舎者に似つかわしくない黒いコートに二振りの刀。
無理やりにでも奪い取りたくなるほどよさそうな品だ。
まあ今は無理だがこの場でしっかりと実力を見せてもらって試験終了後いただくとしよう。
そんな企みを考えていた。
「二人とも位置に着いたな。では」
「すみません、質問良いですか?」
「なんだ?」
「この試験は魔法しか使えないんですよね? 俺の攻撃手段はこの刀と召喚魔法で呼び出した獣魔です。なので獣魔を先に呼び出して試験に臨みたいのですが」
試験官が俺を見てくる。
要するに試験の対戦相手である俺の返事一つで決まってくるらしい。
所詮田舎者。
どんな獣魔を従えているか分からないが俺の実力に到底及ばないだろう。
口角を上げ吊り上げ声を出す。
「俺は別にいいですよ。実力を出し切ることは大切ですしね」
「試験の対戦相手の許可も出た。いいぞ」
「ありがとうございます」
田舎者は俺の前で魔法陣を書き出し、光輝き、その光が収まるとそこには山吹色の艶やかで柔らかそうな毛並みを持つ一匹の狐。
俺は目を疑う。
なぜならその狐はほかの狐と何も変わらないものだったからだ。
尾が複数あるわけでもないしサイズも大きいわけでもない。
むしろ小さな体と見た目が可愛いそれだけだ。
恐ろしさなど微塵も感じられない。
「勝った」
とても小さな声で呟いた表情はとても明るいものだった。
俺としては獣魔を使うぐらいだからもっと大きくて強そうなのを持ってくるのかと思ったが良い意味で期待を裏切ってくれた。
笑いが止まらない。
「召喚も上手くいったようだな。では、始め!」
開始の合図がされて二、三分後俺はなぜか仰向けに倒れていた。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
評価や感想をいただけると励みになります。




