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グレイディア。
西大陸の中心よりやや西に位置する西大陸最大の都市。
西大陸にある物なら何でもあると言われる物流の中心地でもある。
そしてこの大陸唯一の大学校が存在する都市。
そのため試験日は大陸中から集まった試験受験者やその付き人、家族で都市が人であふれる。
つまりこの時期はグランディアにとって繁忙期となるのだ。
商人や店主にとっては稼ぎ時ではあるが、都市の警備隊にとっては悪夢の時期だ。
人が増えれば増えるほど犯罪の数も多くなる。
宿屋から試験会場の大学校までの道のりだけでも二・三回犯罪で叫ぶ声が聞こえてきた。
そのため厄介ごとの種になりそうな山吹には一旦召喚前の場所に里帰りしてもらっている。
「なあ、ミラ。この都市ってだいぶ物騒じゃないか?」
「そうね。今年は良く声が聞こえるわね。私が学生の時も犯罪はあったけどここまでじゃなかったと思うわ」
「それとも宿屋から会場が遠いからその分聞こえてきて来るとか?」
「それもあると思うけど……今年はそれを考慮しても多いと思うわ」
「そうか。カスミ、くれぐれもはぐれるんじゃないぞ」
そう言って俺の右側で歩いているカスミに注意を促す。
「じゃあ、はぐれないように手をつないで、兄さま!」
「甘えんぼさんだな」
右手を出し、カスミが左手で握ってくる。
俺は躊躇することなく手をつないだ。
いやつないでいたかった。
周りから色々と騒ぎの声が聞こえるのだ。
もしかすみカスミに何かあればと考えると居ても立っても居られない。
そんな様子をミランダがうらやましそうに見ているが、カスミに気が向いている俺は気付かない。
「ねえねえ、兄さま。いっぱいお店が出てるよ!」
「そうだな、いっぱい出てるな!」
会場の大学校に近づくにつれ出店の数が増えてきた。
雑貨屋などがあるが一番多いのは食べ物を売っている屋台だろう。
そこら中からいい匂いが漂って来ている。
「兄さま、寄ってみたい!」
「ミラ、寄ってもいいか?」
「ダメよ、レイ。そう時間が経たないうちに試験があるんだから」
「だってさ、カスミ。お店周りは俺の試験が終わった後な」
「約束だよ!」
「ああ、約束だ!」
つないでいた手を放し、小指を立てる。
カスミも同じようにやり、指切りげんまんとリズムを刻んで約束する。
傍から見ても仲のいい兄妹だった。
それからどんな店がありどこによってみたいか歩きながら話し合った。
その時間はとても楽しかったが、すぐ過ぎ去ってしまった。
大学校校門前。
そこは受験生が集まり次々と大学校の敷地内へ入っていく。
ここでしばしのお別れだ。
「じゃあ行ってくる。ミラ、カスミを頼むな。カスミはミラから離れるんじゃないぞ」
「任せて、レイ。頑張ってね」
「分かった、兄さま。頑張ってきてね」
「おう、頑張ってくる」
二人の声援を受けて大学校へ一歩を踏み出す。
中はとても広そうだ。それでも人で埋め尽くされていた。
「多いな。毎年これぐらいなのか?」
一人ごちる。
そして一人でいること数分、どこからともなく盛大な声が響き渡る。
「受験生諸君大変長らくお待たせした! 今から受付を開始する! 推薦状などがある場合は受付の時に提出してくれ! 受付時以外では一切受け付けないため注意するように!」
皆一様に受付へ向かい手続きを済ませていく。
人が多すぎて受付までに時間がかかったが何とか俺の番まで回ってきた。
「レイナルド・スミスディアです。推薦状などはありません」
そう俺は推薦状は持ってきていなかった。
ミラが推薦状を書くと言ったが断わった。
もし持ってきていれば目立つ原因になる。
それに学園に通っていなかったのだ。
余計に目立ってしまう。
それだけは避けたかった。
「推薦状なしと。……お前は4351番だ。これを胸元に着けるように。魔法が使えるなら魔力を流せばつけれる仕様になっているからそうしてくれ」
「ありがとうございます」
番号の入ったゼッケンをもらい、それをつける。
ゼッケンは魔力を流すだけで張り付いてくれる便利もので驚いた。
だがそれ以上に俺の貰った数字の大きさに心底驚く。
最低でもこの数字くらい受験者はいるということだろう。
さすがこの大陸唯一の大学校だ。
「さてこの数字ほどの人数からどれだけの合格者が出るのやら」
毎年一定の人数を合格させているわけでなくその年年でバラバラだ。
有望な人間が多ければ合格者も増え、逆に有望な人間が少なければ合格者も少ない。
ゆえに実力さえあれば受かる。
単純なシステムだ。
周りを見渡す。
多くの者は複数人で集まり、時間をつぶしている。
俺みたいに一人で辺りを見渡しているいる者は稀だった。
そのため俺はとても目立っていた。
「ねえねえ君、どこから来たんだい?」
突如俺の前に五人組の集団が現れ、そのリーダー格と思しき者に尋ねられる。
第一印象は背が高いだ。
俺自身もそこそこあるつもりだが俺よりも高い。
見た目は細いが日頃から何かしらの訓練を受けて良い肉付きをしていることが首元から察知できた。
残りの四人とは違う。
またどこか俺とは真逆の雰囲気を纏っていた。
「そういうことは人に聞く前に自分から名乗っていうものじゃないのか?」
「お前誰に向か……」
「これはこれは失礼した。俺はラグナ・インテンス。貴族だ」
口を開いた者を手で制止させ、形だけの謝罪をする。
どう見ても見下されている感じだ。
本来なら少しはむかつくところだろうが眼中にないためどうでもいい。
それに何か違うと感じた雰囲気は貴族特有の雰囲気なのだろう。
貴族など知らない世界で暮らしていた俺と違って当たり前だ。
「俺はレイナルド・スミスディア。ウィンディアから来た」
「ウィンディア? どこだそこ?」
「西大陸の西方、山と森に囲まれたところだよ」
「そうか、遠い田舎からわざわざご苦労さん」
「それはそれはどうも」
後頭部に右手を添え軽く頭を下げる。
その後にチッっと舌打ちが聞こえる。
それはラグナというやつじゃなくその取り巻きの誰かだろう。
どうやら俺の反応が気に食わなかったらしい。
非常にめんどくさい奴らだ。
「それで一体何の用ですか?」
「見ての通り俺らは今五人だ。半端な数だ。だから何かあった時のために六人だと色々と融通が利くから誰か探していたところで声をかけたっていう感じだ」
「それならなんで俺なんだ? 俺のほかにも一人はいただろう?」
「それは君が一番仲間になってくれると思ったからだな」
とても胡散臭い話だ。
どう考えても田舎者だから声をかけたという感じがある。
確かに今まで街中で暮らしたことがないため、田舎臭い雰囲気を漂わせている可能性も否定はできない。
だがここで断って後々めんどくさくなるのもごめんだ。
だから提案に乗ってみることにした。
「うーん、まあいいよ。よろしく」
「あぁ、こちらこそよろしく」
手を差し出してきたため、俺も差し出し握手する。
固く握られた手とは裏腹にラグナの表情は下劣な笑みが見え隠れするようなものだった。
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