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翌日、俺は父さんに言われた通りに庭にやって来たが父さんはいなかった。
代わりにミラがいた。
「ミラ、父さんは?」
「旦那様なら来ませんよ」
「なんで?」
「今からやることは私一人で十分だからです」
そう言って地面に何か書き出した。
俺はというと昨夜の話でミラが少しよそよそしくなるかなと予想を立てていたがそんなことはなかった。
もしかしたらある程度整理がついたのかもしれない。
数分後ミラが書き終わる。
そこには魔法陣が描かれていた。
「ミラ、これは何?」
「これは魔法陣よ、何の魔法陣か分かる?」
「うーん、分からない」
数秒考えてみたが分からない。
しかもなぜ今更魔法陣という疑問がある。
俺には今まで魔法陣は必要なかったため余計にそう思う。
「レイ、私がここに来た時の募集要項を覚えてますか?」
俺は首を傾ける。
なぜ募集要項となったがふとあることを思い出し口に出した。
「もしかして召喚魔法の魔法陣か?」
「その通り。これは召喚魔法の魔法陣よ」
「それにしてもなんで今なんだ? もっと前でも教えなくても良かったんじゃないか?」
「それは奥様の方針だから」
「母さん?」
「奥様はレイに魔獣などに頼らずとも自力で戦える術を手にして欲しかったの。だからそれが手に入れているであろう成人の年に召喚魔法を教えてレイにとってより良い従魔を見つけて欲しいと思われたからよ」
ここにきて募集要項で召喚魔法が使えることを必須にしていたのにもかかわらず、今まで教えてもらえなかったことについての疑問が解消された。
まあ解消といっても今の今まで忘れていたのだから疑問も何もないかもしれないが。
母さんはどこまでも俺を想っていてくれているみたいだ。
ならその期待に応えるまでだ。
「これはどうやって使うの?」
「ただ魔力を流すだけよ。あとはイメージすることね。レイにとってより良い従魔になる者のイメージをね」
この注文は簡単そうで難しい気がした。
召喚魔法とは召喚される側も多少は呼応しないと呼び出せないのだ。
何でも呼び出せるわけじゃない。
だから使える者と使えない者がいる。
俺はおのずと険しい顔をしていたのかミラが優しく声をかけてきた。
「大丈夫。レイならどんなものも召喚できるわ」
「ミラ、変なプレッシャーを与えないでくれ」
ミランダの信頼が重い。
信じてくれていることは嬉しいのだが、あまり欲しくなかった言葉だ。
「ま、まあとりあえず見本を見せるね」
そう言ってミラは魔法陣に魔力を流し始めた。
魔法陣は魔力に反応するように明滅する。
そしてその間隔は徐々に短くなり最後は輝き続けた。
色はミラの髪の色と同じ青。
そしてその青が発光して消えた瞬間魔法陣には小さな鳥が佇んでいた。
「チロル」
ミラが声を上げるとチロルと呼ばれた小鳥はミラの方に乗った。
「レイ、この子はチロル。私の従魔の一羽よ」
「一羽ということはほかにもいるの?」
「他にもいるけどここでは無理かな。一人一従魔ということはないの。魔力が豊富な人は一度に複数召喚したりするわ」
「そうなんだ」
こういう時にミランダは凄いなと実感させられる。
本で読んだ内容だと一人一従魔が主流で複数となると契約を結ぶのに従魔の数だけ従魔を認めさせなければならない。
それに欲張って従魔を増やそうとして失敗した場合、契約出来ていた従魔も呆れて契約を抹消される場合もある。
非常にリスクある行為なのだ。
だから複数の従魔が必須となる召喚士というのは羨望の目で見られることが多い。
「それじゃあ次はレイの番ね」
ミラに促され魔法陣の前に立つ。
魔力を流し込む。
それも大量に。
こんなところで手を抜いて変な奴が来ても困る。
だからできるだけ膨大に注ぎ込む。
魔法陣が激しく明滅する。
イメージするは炎を操りしもの。
それもただの炎ではなく劫火を容易く扱えるもの。
それだけだ。
魔法陣の光が明滅を止め、光り輝き発光する。
そして現れたのは毛並みは滑らかな山吹色の狐だった。
それもただの狐ではなく九つの尾を持つ九尾だ。
存在感はものすごく空気は悲鳴を上げているように振動している気がする。
「お前が私を呼び出したのか?」
九尾の狐が静かに問いかける。
それだけで圧倒されそうだったが俺にとっては願ったり叶ったりだった。
「そうだ。俺が呼び出した!」
「こんな若造が私を呼び出しただと? まあどうでもいい。どうせ私を服従させることなど無理だからね」
「それはどうかな」
「口の利き方が成ってないね。やれるものならやってみなさい。私の炎を食い止めるか避けるなりすれば契約者として認めてあげるわ」
「望むところだ」
俺は九尾の狐から距離を取る。
そして試練がなされようとしたときミラが割って入った。
「お前なに様のつもりだ」
「申し訳ありません。少々お時間をください」
ミラは俺の方を向き言葉を発した。
「レイ、あなたは今何をしようとしているのか分かっているのですか? 相手は九尾。魔獣の中でも最高位のものですよ。呼び出せただけでも奇跡なのに死ぬつもりですか!?」
ミラの口調が教師風に戻っていた。
それだけあの九尾はヤバイ相手何なんだろう。
だが、いやだからこそ俺はあいつを手に入れたかった。
「ミラ、俺は大丈夫だ。負けやしないし契約も必ず成し遂げる。それにミラは俺のことそんなに信頼してないのか?」
「それとこれとは別です!」
「いや一緒だ」
そう言って俺はミラの顎を上げ、額にキスをする。
昔は俺の方が小さかったが、今はもう俺の方が大きくなりミラの身長は俺の胸元ほどしかない。
だから簡単にすることができた。
「ほえ!?」
ミランダが可愛らしく叫び、顔をゆでタコの様に真っ赤に染め、ふらふらとおぼつかない足取りで離れていった。
ミラは外見と年齢の割には非常に初心で乙女だ。
だからこの場から立ち去らすにはもってこいの手段だと思い至ったのだが少々効きすぎたようだ。
「悪い、待たせたな」
「おかげで面白いものが見れてよかったわ。随分と仲がいいのね」
「まあ何年も一緒に暮らしたしな」
「そうなのね、まあいいわ。すぐに終わらせてあげる」
中断は終わり試練が再開される。
殺気が立ち込め、九本の尾が立ち上がり一つ一つの尾の先から焔が集約され、劫火となり俺に向けて撃ち放たれた。
この攻撃に手加減など一切ない。
全力で殺しにかかっている。
それでも俺は獰猛な笑みがこぼれてしまう。
油断も隙もないそんな無慈悲な九尾が欲しい。
勝利条件は防ぎきるか避けるかだ。
ただそれをやり切ったとしても心の底から服従はしないだろう。
なら力比べで勝つしかない。
ではどうするか。
そんなもの決まっている。
目には目を、歯には歯を、劫火には劫火を。
俺は魔法を発動する。
劫火の色は青ではなく青白い色。
さらに高温にすることができている証拠だ。
その青白い劫火を放ち、赤い劫火を燃やし尽くしていった。
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