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三度目の正直を必ずこの手で  作者: 池春 藤斗


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クリックしていただきありがとうございます。

俺はオリオンさん親子と一緒に森の中を進んでいた。

時折聞こえるハイドラの怒声に父さんたちが生きていることを教えてくれる。


「この声が聞こえなくなったら、父さんたちはもう……」


俺は小声ながらも言葉を発していた。

誰にも聞こえないほどの声。

それでも身に纏っている雰囲気で分かる。

それが大人というものだ。


「君、私たちのことはもういいから早くお父さんたちのところに行きなさい」


思いがけない言葉に耳を疑った。

何を言っているんだ!?

これが俺の心情だ。

いくら見つけた時の状態より良くなったからと言ってもポーションを無理やり飲ませたのと母さんに教えてもらった回復魔法をかけていただけなのだ。

どちらも万能なものだが絶対ではないのだ。

治りきらないものは治りきらない。

証拠に外傷などは見当たらないが足元がおぼついていない。

ユリシアさんに終始寄り添ってもらっている。

一人ではうまく歩けない状態なのだ。

それなのに、意味が分からない。


「父さんは早く遠くに行くように言ったんです。遠くに行けば行くほど生き残れる可能性もあるんです。父さんたちのもとに行ってしまえば足を引っ張ってしまうだけです」


オリオンさんは驚いた顔をしていた。

それは娘と変わらないほどの俺が年齢にはふさわしくない言葉を発したからか、それとも父さんに言われたことを懸命に守ろうとしているからかは分からない。

だがそんな表情もすぐ消え失せた。


「それでも君はいくべきだ。そうでないと君はここで生き残ったとしても一生後悔しそうな顔をしている」


俺は悩まされる。

この提案は非常に魅力的だ。

だが父さんの望みを反故にして失望させたくもない。

板挟み。

選択することがつらい。

誰かに決めてもらえるならそうして欲しい。

俺の思考は停止し、立ち止まり、手も力なくぶら下がっている。


そんな俺の手を小さな手が引っ張った。

それはとてもやさしくて、暖かくて、柔らかかった。


「早く行こ! あなたのお父さんのところに!」

「ダメだよ! 戻ったら危ないよ!」

「大丈夫! だって守ってくれるんでしょ?」


ドキッとした。

空の様に何でも吸い込みそうで、森の様に落ち着きを与えてくれるそうな碧い瞳に俺は見入った。

もちろんこのときのユリシアさんが無邪気に笑っていたのもあるだろう。

それに初めてであった俺と同じぐらいの女の子。

意識しない方がおかしい。


「早く行くよ!」


ユリシアさんは俺の手を握ったまま歩いてきた道を走って戻っていく。

さっきまでオリオンさんに寄り添っていたのはうそだったかのようにオリオンさんをほったらかしにする。

俺は振り返りオリオンさんを見るが、手を振って自分は大丈夫と言うように表情も明るいものだった。

どんどん元居た場所に近づいていく。

ここで女の子に引き返そうと提案したとしてもユリシアは聞く耳を持たないだろう。

それほどまでにユリシアさんは俺を信じてくれている感じがする。

ならそれに応えなくてはいけない。

俺は腹を括った。


そして俺はまた戦場に舞い戻った。

だがそこには戦場特有の音が聞こえることはなく、王者が待ちに待ったと言わんばかりに俺を見ている。


「父さんとミランダは!?」


辺りを見回す。

父さんとミランダは仲良く木の側で力なく横たわっている。

敗戦した証拠だ。

すぐに駆け寄りたかったが駆け寄ることができない。

それに俺の心の内から湧き上がるこの気持ちを押さえつけることができなかった。


「ハイドラ、邪魔するんじゃねー!」


炎の槍を生成する。

魔力量の多さに物を言わせ、数も50本ほど一気にだ。

それにこの一年間で学んだこともしっかり実行し、炎の色も朱くなく蒼い。

高温度の証拠だ。


この圧倒的な光景を見たものはこんな小さな子が作り出したとは思わないだろう。

特に魔法を発動させた瞬間を見ていないものにとっては。

それに見ていた者でさえも信じたくはない光景なのだから。


「さっさとくらえ!」


蒼い炎の槍を一気に撃ち放つ。

一つも外すことなくすべてハイドラの体を突き刺さるなり穿つなりしてダメージを与えた。


「シャアァァァァァァァ! シャアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


ハイドラもたまらずに悲鳴を上げる。

体には穴が開いているが血は流れることはない。

それは高温で穿たれながら焼かれたからである。

失血死ができない。

これはある意味で拷問に近い所業なのだが、普通の魔物や魔獣などであればそうだろうが目の前にいるハイドラは違った。


「シャアァァァァァァァァァァ」


新たに現れた首が他の四本の首から出る声よりワントーン高い声が響く。

この声が聞こえたころには体に開いた穴はほとんど跡形もなく消え去っていた。

それは一戦目の時と比べ物にならない回復スピード。

五本目の首の魔法は回復。

それもただの回復ではなく、もともとのポテンシャルと掛け合わせた超回復。

不死身と言ってもおかしくないほどのレベル化け物だった。


最後まで読んでくださりありがとうございました。

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