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曇天とはかけ離れた雲一つない青い空。
その青は一つの色だけで染め上げているのではなく濃い青や薄い青など様々な青が空を埋め尽くしている。
その色合いは複雑ながらも一つの完成品としての美しさがあり、見ている者を飽きさせないものだった。
今の美しい空ならどんなものも分け隔てなく吸い込み飲み干してしまいそうだ。
実際その通りにこだまする絶望の叫喚も顔色一つ変えることなく、この美しい空は粛々と受け入れていた。
そんな中俺たちは今絶望の淵に立たされていた。
先ほどまで倒したと思っていた相手が死ぬどころか完全に回復していた。
しかも首を一本増やす進化というおまけ付きだ。
そんなレベルアップで更なる強者に成り遂げたハイドラを目の前にして前に進む一歩も後ろに下がる一歩も出ない。
気分的には蛇に睨まれた蛙のようだ、いや蛙そのものだ。
「レイ、そこにいる親子を連れて逃げるんだ! 早く! じゃないと誰も生き残れない!」
「父さん、何言ってるか分かってんの!? そんなのだめだよ! 母さんとカスミはどうするの!?」
「黙れ! さっさと早く行け! お前が一秒でも一歩でも遠くに行けば俺が助かる可能性も上がるんだ! 無駄口を叩く暇があるなら早くこの場から立ち去れ!」
父さんは激怒していた。
それも今までに見たことがないほどに。
体から溢れる気迫は荒々しく、近づくだけで裂傷ができそうだ。
到底反抗なんてできない。
だから従うしかなかった。
「わかったよ、父さん。なるべく早く遠くに逃げるから! だ、だから父さんも早く追いついてきてね……」
最後まで強く言うつもりだったが出来なかった。
言葉に詰まった。
父さんの返事を数秒だけ待つが返ってこなかった。
父さんに背中を向け、女の子の親子と一緒に森の中へ入っていった。
途中で振り返ってみるもこちらに振り返った感じは全くなく意識さえされていない感じだった。
だから俺は歩を進めた。
父さんに言われた通りのことを行えば父さんも生きて戻ってきてくれると信じて。
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「ミランダ、お前まで残らなくても良かったんだぞ」
レイたちがこの場を離れていったのを感じ、未だに残っているミランダに声をかける。
「旦那様、そう言われましても今の旦那様を置いて行けるわけがないじゃないですか」
ミランダは優しく返答し、さらに続ける。
「だってこんなにも辛そうで泣き出しそうな顔を見せられれば誰でもそうしますよ」
レオポルドは何か衝撃があれば簡単に決壊するような作り笑いをしていた。
それは誰でも力になってあげたいと思えるほどに儚いものであった。
「それに初めからそのような表情をしていれば何か変わったかもしれませんよ。あんな怒気を放っていたらいくらレイでもさっきみたいになりますよ。それに最後の会話になったかもしれないんですよ。良かったのですか?」
「よかったも何もない。もし最後になったとしても父親である俺が弱々しいところを見せてはだめだろう」
「しかしそれがかえってレイを傷つけることもあるのですよ」
「そんなことで傷つくようではレイもそこまでの人間ということだ」
レオポルドは言い切った。
俺の息子はそんなことで傷つくことなんてない。
そう信じ切っていた。
「なら早く倒して心配事を無くしましょう」そう言うつもり、いや言ったのだが目の前にいるハイドラにかき消された。
「シャアァァァァァァァァァァァァァァ」
レオポルドはミランダの声にではなく盛大な雄たけびに反応した。
「ミランダ、あちらさんはそろそろ堪忍袋のひもが切れるみたいだ。本当に後悔しないな?」
「はい、旦那様。自身の選択に後悔などありません。それに後悔しないように生き残ればいいだけのことです」
「それもそうだな。じゃあ二戦目といきますか!」
そう言ってレオポルドは地面を蹴ってハイドラに特攻した。
こうして二度目のハイドラ討伐の幕が切って落とされた。
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