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ここにきて今回の目的が教えられた。
言われなくても分かっていたことだが命中力の向上、つまり魔法の精度を上げることだ。
ミランダが言うには魔法の精度が高ければ高いほど弱点を狙うことが可能で、弱点さえつけばいつも以上に少ない魔力でも相手を屠ることができる。
魔力の節約もできるというわけだ。
だからこそ小さい時からこのような鍛錬を積むことが大事らしい。
しかし、このような考えは少数派らしく魔法はどでかく派手にというのが現在の多数派らしい。
また魔法の授業で科学を用いるのも少数中の少数らしい。
大多数は師匠などから実際に魔法を撃ってもらい、イメージを構築し、師匠と同じ詠唱を行うという魔法だけですべてを終わらす流れらしい。
俺が母さんに魔法を教えてもらっていたやり方がそうらしい。
かといって俺の場合ずっと無詠唱でっていたから少し違うのだが。
それよりもなぜミランダは少数派中の少数派にいるのか不思議でたまらなかった。
だから聞いてみた。
「ねぇ、なんでミランダって少数派の中でもさらに少数派の道を進んでるの?」
「それは師匠が少数派の人だったというのもあるけど、私自身がいろいろな方法を試してこれが一番いいと思ったからよ」
「どういう意味?」
「この世界にはね、魔法というものがある。今じゃその魔法が広まりすぎて魔法を使った生活が中心になっているわ。魔法は科学では成し得ないことを可能にすることができる。だから科学というものがどんどん目に入らないようになっていき、その根幹を成す自然の偉大さを忘れていったの」
「それは自然と魔法は別だからそうなったんじゃないの?」
「ううん、実は魔法と自然は基になったものが違うだけで他は同じなの」
「どういうこと?」
俺は理解できなかった。
年齢のせいもあるかもしれないが、魔法と自然が同じということが釈然としない。
「じゃあ家の中からコップを二つ持ってきて。そのうち一つはただの水を入れて来てね。わかりやすく教えてあげるわ」
そう指示され俺はコップを取りに戻る。
そしてコップを手にして蛇口をひねり水を入れる。
空のコップと水の入ったコップを持ってミランダの下へ向かう。
持ってきたコップを渡すとありがとうと言って、空のコップに魔法で作った水を入れる。
そしてそれらを地面に置き冷却魔法をコップの周りにかけ始めた。
「なにしてるの?」
「今はコップの周りの温度を下げてるのよ」
「それがどうしたの?」
「水を冷やすと何ができるか分かる?」
「氷ができる」
「そう、氷ができるの。もしこれでどちらとも水が氷になっていたらどう? どちらとも自然の影響を受けていることにならない?」
ミランダが問いかけてくるが、俺は首を傾げるだけで解答を導き出せなかった。
そんな様子を見てミランダはしょうがないかという感じで肩をすくめ口を開いた。
「分からないのも無理はないわ。もう少し大きくなったら教えてあげるね」
そう言うと冷却魔法を止め、水を凍らせることを中断した。
俺はあっと思った。
理解はできなかったが興味はあったのだ。
しかしミランダは俺にはまだ早いと感じ切り上げてしまった。
俺自身の知識の無さが裏目に出た瞬間だった。
もう少し知識があれば最後まで先程の実験を見届けることができたはずなのだ。
またしても悔しさがあふれ出る。
だが知的好奇心はくすぶられた。
今まで勉強はしたくないと思っていた俺が初めて自らの意思で勉強をしようと思った瞬間だった。
だから俺はミランダに声をかけた。
「あまりわかってないけど見るだけ見てみたい」
真剣な表情で言った。
しっかりとミランダの目を見据えてどこかに視線をずらすことなく、ただただミランダの瞳だけを見つめた。
このような態度を取っている俺にミランダ少し驚いているようだった。
その表情を見せたのもつかの間、俺の頭に手を伸ばし、母さんと同じように頭を撫でてながら語りかけてきた。
「そんな風に言ってくれるならもう一回やりましょう! しっかり見ててね」
「うん」
俺は力強く頷いた。
そして再開される実験。
結果が出たのは数分後でそこまで待つ必要はなかった。
どちらの水も氷に変わり果てていた。
「二つとも氷になってるでしょう? ここから分かることは魔法は魔力から生成されるっていうところだけが違うだけで、実は自然のものと何も変わらないのよ。なんとなくわかった?」
「たぶん……」
「まだ分からなくても当然だと思うから何度でも聞いてきてね。その度に教えてあげるから」
そう言うとまたミランダは俺の頭を撫でてきた。
その手つきは優しく気持ちよかった。
そのため振り払おうとは一切思い浮かぶこともなく、ただ成されるがままにこの時間を楽しんでいた。
そんな時間も終わりコップなどの後片付けを行った後、母さんに科学のことが書いてある本が欲しいと言ってみた。
魔法じゃなくて科学? と言われたが俺がそうだよ言い返す前に分かったわと一言だけ言ってあっさりと了承してくれた。
俺から何かをねだるということは記憶上したことがなかったため、もしかしたらその行為がうれしかったのかもしれない。
何故ならその時の母さんは聖女と謳われるのがふさわしいほどに可愛らしい笑みを浮かべていたのだから。
その後はいつもの如く父さんと剣の稽古を行った。
いつものように土にまみれ、楽しく木刀を振るった。
父さんとのこの時間は基本あまり会話がない。
それでも木刀で打ち合っているだけで木刀を通して会話ができているような感じがしていた。
だから俺も口を開くことはなかった。
打ち合っているだけで心を通わすことができるならわざわざ話すことはない。
そのため常時この時間は木刀同士がぶつかり合う音だけしか聞こえてこなかった。
時間となり稽古は終了し、夕食を食べ、ベットにもぐる。
次の日もミランダに魔法の指導を請い、父さんに剣の稽古をつけてもらう。
父さんがいない日は母さんに回復魔法を教えてもらっていた。
こんな充実した日々に俺は感謝しつつ一年近くを過ごしていった。
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