15 身支度を整えて
袖を通してみれば「あら、ぴったり」と言いそうになるくらいに身体のシルエットを綺麗に表してくれた。姿見の前で自分の姿をうっとりと見つめてしまう。試しに腕を伸ばしてみても、布がツンと張ることはなく息苦しさは感じない。
「素敵ですよ、アメリア様。さあ、殿下の元に参りましょうね」
ミランダはヘアメイクも整えてくれた。髪も高い位置にひとまとめにしてくれており、結び目部分には青いリボンと白い花の髪飾りを添えている。
私はすっかり王国の色に染まってしまっていた。
「いいのかな……こんなに……私なんかが」
「何をおっしゃっているの! 殿下が選んだものに間違いはないわよ。自信を持ちなさいな」
その言葉に背中を押され、私は心の落ち着かなさを抱えながら外に出た。廊下にはマーカスが待機しており、彼と目がバッチリ合った。
「マ、マーカス、その……どうかしら」
「……よろしいのではないでしょうか。では、お連れします」
似合ってると思ってくれている?
そうであれと願いながら、マーカスの後をついて行った。
外では馬車が待機していた。王国の紋を掲げた馬車の脇には、紺のジャケットを羽織ったクロヴィスが立つ。今朝のようなくたびれた様子はない。私が合流すると、彼は目を少しばかり大きく開けて見つめてきた。
「クロヴィス様、お連れしました」
「……」
「クロヴィス様? どうかされましたか」
「あ、ああ。案内をありがとう、マーカス」
「あのクロヴィス様、お召し物をありがとうございます。こんな高そうな服……すぐ洗ってお返しします」
「高そうって、アメリア。これは元々君に贈るものだったんだ。俺に返さず、たまに着てやってくれ」
フッと彼が笑う。
なんてこった。こんなぴったりな服を用意出来るだなんて、恐らくスリーサイズは知られてしまってる。
マーカスが馬車の扉を開けた。すっと目の前に手が差し伸べられ、クロヴィスがにこやかに見詰めているのに気づく。
「さ、アメリア。行こうか」
ふわりと彼からバラの香りがした。トクリと鼓動が高鳴る。
「は、はい」
これから馬車の中では二人きり。別に初めてでもないのに、昨晩のことから変な緊張で体はがちがちだった。
彼の手を握りながらぎこちない足取りで馬車に乗り込むと、すぐに動き出した。城からはどんどん離れて行く。
出発してから暫くは無言だったが、窓の外が町の景色から森の景色に変わる頃、クロヴィスが先に口を開いた。
「……昨晩はすまなかった、アメリア」
「え、えっと、昨晩とは、なんでしょう」
彼に覆いかぶさられた時のことしかないのだが、あえて知らないフリをしてみる。
「君に無体を強いた」
「そ、そんなことないわ、クロヴィス様。私が慌てていて……て、覚えてるんですか!」
「ああ」
酔っぱらって覚えていないと思っていたのに!




