俺の幼馴染み9
前半主人公視点、後半弘人視点です。
息が白くなる一月、冬休みが終わり、何故か弘人が小夜子さんに頼み込んでくれたおかげで、俺は誕生日プレゼントととして携帯を買ってもらった。
あまり機械類は得意ではないから、最新式のではなく使いやすい機種にし、GPS機能もついている。
携帯を買ってもらう説得をする際に、最終的に納得させた理由がGPS機能があった方が再び“もしも”のことがあっても、おおよその居場所の予想をする時に役に立つかもしれないからとそう言った途端、渋々と言った様子で小夜子さんは携帯を持つことを許してくれたのだ。
俺は別に携帯がなくても良かったのだが、弘人のトーク力で小夜子さんが納得してしまったため、持たないと言った方が文句を言われないからと諦めた。
ちなみに自分の母親を小夜子さんと呼ぶのは、彼女の教育方針だ。
もう少しで中学二年生になるんだから、今のうちに敬語や「さん」付けで呼ぶことで慣れておきなさいと言われた。中学三年生になる前までには面接に向けて、一人称を「僕」と言うことに慣れておくようにと言われる限りは、小夜子さんは教育に関してうるさくは言わない。あとは門限を破らない限りはね。
勉強をやれと言えば言うほどに、なかなか強気な性格をしている俺はやらなくなるとわかっているため、小夜子さんは宿題をやったのか? と言う確認をするだけであとは何もうるさく言わない。
俺と弘人が通う中学校は、この県内でも一番生徒が多いのだが、テストでも毎回五十番以内にはちゃんと入っている。最近は泉堂さんのおかげで、理数系の科目が着々とテストの成績が上がってきてるし、問題が解けるようになればなるほどに勉強するのが楽しくなった。
泉堂さんは、過呼吸になりかけた時に助けてくれた大学生の人。
ちなみにフルネームは、泉堂悠葉さんって今ではメル友になり、勉強を教えてもらうくらいに仲良くなった。弘人は何故か、何かと泉堂さんと仲良くすることを進めてくるのだ。
今もそう、放課後俺の部屋に居座るたびに泉堂さんの話ばかりしてくる。
「泉堂さんってカッコいいよねー、同性から見てもそう思わせちゃうくらい」
と、乙女ゲームをしながら言われても……、説得力がないよなと考えながら、分かりやすいと進められた参考書を開き、ノートに書き写して問題を解いていっていれば、俺の肩にべったりくっつくように座り、再びゲーム画面に視線を移してしまった。
やりづらさを感じながらも、問題を次々と解いていき、手応えを感じてきた頃弘人は独り言を言うような声で、ボソボソと小さな声で静かにこう言った。
「着々と頭良くなりやがって、伊吹と同じ高校に行けるか心配になってきた」
と、勉強しないだけで努力すれば、勉強だって出来るくせに何言ってんだと苦笑しながら考えながらも、小学校の頃とは違って運動が苦手になった俺と違って、何でもソツなくこなす弘人なら努力さえすれば大丈夫だと言う確信があったが、ソツなくこなすと言う言葉にプレッシャーを感じてしまう弘人だから、その言葉は言わない。
ただ、こう言ってやれば良いだけだ。
「……一緒にまた頑張れば良いだろ?」
「……そうだな」
◇◆◇◆◇◆
伊吹に部活が終わるまで図書室で待っていると言った以上、各科目を担当している教師にアドバイスを聞いてから、図書室に行き、一番苦手な科目である歴史と古典を中心に取り組んでみる。
が、苦手だと言う先入観のせいでどんなに勉強しても頭に入っていかない。
「どうしたら良いんだ、あまり勉強したことがないから勉強の仕方がわからない」
と、本当は叫んでしまいたかったが、ここは図書室。伊吹を待つためにはここの出入り禁止をなるのはマズイと考えながら、独り言よりも小さい声でそう呟いた後、先に進んではくれない勉強に頭を抱えた。
その瞬間だった。肩が叩かれ伊吹かと思い、勢い良く顔を上げれば目の前にはいつも貸し出しカウンターで静かに本を読んでいる女子生徒の顔があった。
――リボンの色が違うから、上級生かな? と考えていれば彼女は決心したような表情を浮かべた後、良く耳をすまさないと聞こえないような声の大きさは小さく、それでも澄んでいることが良くわかる綺麗な声で、こう言った。
「……良く、友人を待たれてる人ですよね……。お困りのようだったので、どうされたのかと思いましてお声をかけたのですが……、お邪魔でしたよね……」
と、彼女は髪が長く、みつあみにした髪をいじりながらそう言えば、年上なんだからある程度の勉強の仕方のアドバイスをくれるかもと思った俺は、失礼ながらも彼女の肩を掴み、視線を合わせてこう言った。
「勉強……、教えて頂けませんか!?」
と、図書室に放課後、良く居たとは言え、見知らぬ相手に頼まれたことを快く受けてくれるだろうかと考えつつも、真剣な表情で彼女を見つめていれば、段々何故か顔が朱に染まっていった。
何か、怒らせるようなことをしただろうか……? と不安になりつつも、めげずに真剣な表情でを見つめ続けていれば、俺から視線を反らすように顔を下に向けた後、彼女はこう言う。
「私でお役に立てるなら、手伝います……。お手伝いさせて頂きますから……、一旦私から離れて下さいませんか!? 少し距離が……ちっ、近いです」
と、そう言われ、やっと我に返った俺は謝りながら彼女から一メートルくらい距離をおいたのにも関わらず、視線を向ければ未だに顔が朱に染まったまま。
その時、初めて気がついた。彼女は怒っているのではなく、照れているんだと。




