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俺の幼馴染み8

前半は弘人、後半は主人公です。

 伊吹が変わった。本人は気づいてないけど、長年しつこいくらいに側にいた俺の前でさえも笑う回数が圧倒的に少なくなったと言うのに、急に笑えるようになったとなると……、他にも信用出来る人が出来たか、好きな人が出来たかのこの二つしか考えられない。

 そうなると、他人の気持ちの変化には敏感だけど、自分の気持ちの変化には鈍感な伊吹に聞くよりも、そんな彼の母親である小夜子さんに聞いた方が早いかもと考えたんだ。

 朝陽と同じく、吹奏楽部に所属している伊吹とは違って俺は特に部活に入っている訳でもなく、今日は図書室へとは寄らずに小夜子さんに直接訪ねることにした訳よ。今日は確か、パートがあるって聞いてたから伊吹から合鍵を預かってあるんだよね〜……。

 と、考えながら鼻歌を口ずさみつつ歩いていれば、キョロキョロと誰かを探している白衣を着た、恐らく大学生が目の前にいた。


 特に人見知りではない俺は、ここの市の周辺では大学や専門学校が集まっているからなぁ、別の大学の交流で来たのか迷ったのか? と、そう考えながらその男の肩を叩いた。

「迷ったんですか?」

 そう拙い敬語でそう言えば、キリッとした目付きで二枚目な顔をしていると言うのに、期待を良い意味で裏切るような穏やかな声で、照れを含んだような笑みを見せた後、本当に照れているのか不自然な仕草を見せつつ、その男は親しげに話しかけてきた。

「あっ、違うよ。不審な風に見えたよね、ごめんね。人を探してたんだけど、ちょうど君と同じ制服を着た知らない学生だったから、ここに来れば会えるかなーって思ったんだよね」

 と、そう懐かしげに話すものだから、お人好しな俺は協力したくなってしまい、同じ中学校でここの道を通って帰る男子生徒と言えば俺と……。

 ……伊吹だけだったような気がする。

 ちらりと公園の時計を確認すれば、午後三時半くらい。伊吹は顧問から許可を得て他の人より早く帰るから、午後四時頃には中学校から下校するはず。で、ここまで約十五分くらいで来れるから……、もしその学生が伊吹だったなら。


 伊吹が前よりは良く微笑むきっかけを作ったのがこの人の可能性が高い。

 ……四十五分くらいなら、この人を引き止めることが出来るかも。この人がそうなのであれば、どうにかして引き止めておかなければならない。


「そうなんですか。俺と同じ中学校で、同級生でここら辺の道を通るのは俺と俺の幼馴染みくらいですよ。俺の幼馴染みが見知らぬ人と話すなんて考えられませんしね……。何せ、貴方のような年上の同性が苦手なものですから、酷い時は過呼吸で救急車で運ばれてしまいますし」

 と、そう言えば目の前にいる男は、驚いているのか少しだけ目を見開き、取り繕うように微笑んだ後に「また今度探してみようと思います」とそう言うその人の手首を掴み、俺は意味深に微笑みながら……、こう話しかけた。

「まあまあ、お兄さん? お急ぎではなさそうですし、俺と井戸端会議でも致しませんか? いつもこの時間帯は幼馴染みの部屋に入り浸るのですが、一人だと暇でして……」

 と、そう言えば戸惑ったような表情を浮かべながら、承諾してくれた。


◇◆◇◆◇◆


 いつもより早く帰らせてくれ、待たせているであろう弘人を心配させないように早足で帰路を急いでいれば、公園の前で見慣れた背中を見つけ、驚いた。てっきり部屋でゴロゴロしているであろう弘人が誰かと井戸端会議をしてたから。


「弘人? 合鍵渡しておいただろ? 井戸端会議をしてるのは良いけど、お前近所のおばちゃん並みに話が長いんだから、あまりその人を困らせるなよ……」


 と、そう言いながら弘人の隣へと並べば、井戸端会議をしていた相手はあの時助けてくれ、ぶつかったことを許してくれたあの大学生の姿があった。

 互いに予想外のことで戸惑っていると、一人弘人だけは計算通りと言ったようにニヤリと笑っていた。


「やっぱり、貴方が探していたのは伊吹のことだったんですね。年上の同性が苦手な伊吹が怖がらないのは珍しいですし……、仲良くしてやって下さい」



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